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» 2009年03月19日 00時00分 公開

IT企業のための人事制度導入ノウハウ(5):「自発的に学ぶ社員」を「公平に評価」する等級制度 (1/2)

IT企業の人事担当者に読んでほしい、人事制度導入ノウハウ。導入プロジェクト開始の準備から設計、導入、実際の運用まで、ステップごとに詳細に解説する。

[クレイア・コンサルティング]

 前回「『こんな人材が欲しい』から始まる人事制度」では、人事制度設計の基本方針となる「求める人材像」の設定方法について説明しました。

 今回からはこの方針に基づき、等級制度・評価制度・報酬制度といった具体的な人事制度構築の進め方を見ていきます。

 トップバッターは等級制度。今回と次回の2回にわたって、IT企業における等級制度構築のポイントについて解説します。

等級制度の目的とは

 皆さんの会社には「1等級、2等級、……」「主事、主査、……」など、何らかの等級制度が存在していると思います。これらの等級制度という仕組みは、何のために存在しているのでしょうか。

 情報システムの構築と同様、人事制度においても、スタート時点で目的を明確にしておくことがプロジェクト成否の鍵です。まずは、等級制度の目的を確認することから始めましょう。

 等級制度の目的は、以下の2つです。

1.社員に期待する役割・能力の明確化により、評価・処遇を公平に行うこと

 等級制度の第一の目的は、社員に期待する役割・能力を明確にし、公平な評価・処遇を実現することです。

 ここに2人の社員がいます。毎日遅くまで頑張って、予定より1週間早く仕事を完成させた新人の鈴木さんと、クライアントからの度重なる要件変更を適切にさばきながら、1週間遅れでシステム稼働にこぎ着けたプロジェクトマネージャの田中さんです。

 もし等級制度がなく、2人を同列に評価しようとするならば、評価者は困惑することになるでしょう。仕事の難易度を考慮せずに、鈴木さんを田中さんより高く評価するのは不適切です。しかし、難易度の低い仕事に携わる社員が常に低評価しか得られないのであれば、鈴木さんはやる気を失ってしまいます。

 等級制度が正しく機能していれば、このような問題は回避できます。同じ等級に格付けられた社員を、「等級定義で提示された内容に見合った働きをしているか?」という観点で評価すればよいからです。

2.社員に期待する役割・能力の明確化により、社員の成長目標を明確にすること

 第二の目的は、社員に対して成長目標を明確に提示することです。

 前回述べたように、IT業界では人材は極めて重要な競争優位要因であり、社員の育成は最重要課題です。皆さんの会社でも、研修を中心に、人材育成に毎年かなりの投資を行っていると推測します。

 しかし、それだけでは不十分です。社員の成長には、社員自身が自らの成長目標をイメージし、自発的に学ぶことが欠かせません。

 その際、等級制度は大きな意味を持ちます。優秀な社員であれば、提示された等級定義の体系と昇格基準を目安に学ぶべきことを判断し、日々の仕事の中で(あるいは自宅学習で)必要なスキルを身に付けることができるからです。

 社員に将来のキャリア目標を提示することは、人材育成の観点だけでなく人材流出防止の観点からも重要です。将来の魅力的なイメージを提示できなければ、「もうこの会社で得るものはない」と感じた優秀な社員が他社へと流出してしまう危険が高まります。人事制度を通して、社員に「わが社で経験を積むことで、こんなに魅力的な人材に成長できる」というメッセージを送ることが必要なのです。

 手元に自社の等級定義書があるようでしたら、目を通してみてください。等級別に、社員に期待する役割・能力が明確になっているでしょうか?

コラム1 仕事への満足度が高いのに、人材流出が止まらない理由≫

 以前わたしがコンサルティングを行った、あるベンチャー企業でのことです。社員はフラットな組織の中で、自分の裁量で仕事を進められる理想的な環境に置かれ、従業員満足度調査でも良好な回答が集まっていました。ところが、なぜか人材流出が止まらないのです。社長は「なぜ辞めてしまうのか?」と頭を悩ませており、われわれが詳細な調査をすることになりました

 その結果明らかになったのは、「社員は会社からより高い成長目標を示され、場合によっては厳しい指導を受けることを望んでいた」ということです。

 社員は、自由な環境で仕事ができる半面、結果の良しあしを上司から指摘される機会がなく、等級制度がないため昇格を目標に頑張るということもありませんでした。その結果、ひと通りの仕事をこなせるようになると「自分は一人前」「この会社でやるべきことはやりつくした」という錯覚が生まれ、退職につながっていたのです。

 この会社に等級制度があり、社員の成長の方向性を明確にしていれば、人材流出はもう少し減らせたのではないかと考えています。


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