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» 2009年03月31日 00時00分 公開

心の健康を保つために(11):「変えられない自分」を知って受け入れよう (1/2)

ITエンジニアの周りにはストレスがいっぱい。そんな環境から心身を守るためのヒントを、IT業界出身のカウンセラーが分かりやすく伝えます。

[石川賀奈美,ピースマインド]

性格だから仕方ない?

 人の性格については、いろいろな研究がなされています。今回は、「変えられるものと変えられないもの」という視点から、性格について考えてみたいと思います。

 SEのMさん(男性、31歳)の悩みは「ミスが多いこと」。気を付けているつもりなのに、何かしらミスをしてしまいます。Mさんは、「性格だから仕方ないんでしょうか……」とあきらめモードです。

 性格とは、「変えられないもの」なのでしょうか?

 Mさんがミスをしてしまうときの状況や気持ちを詳しく聞いてみると、いくつかのポイントがあることが分かりました。

 「早く終わらせてしまいたい!」という気持ちが強く、そのため作業が大ざっぱになること、「何度も確認することが苦手」ということなどです。

子どものころのMさん

 「早く終わらせてしまいたいという気持ち」について話しているとき、Mさんは子どものころのことを教えてくれました。

 「幼稚園のころはのんびり屋で、朝の支度もゆっくりでした。せっかちな母親から、よく『おまえはぐずだ』としかられたものです」

 そんなときは、困ったような悲しいような感じがしたことを覚えているそうです。しかし母親からしかられたおかげか、大きくなるにつれて早く動けるようになり、困ったことにはならずにすんでいました。

 「でも、どこかに『早く、早く』と急かしている自分がいて、正確に仕上げることより早く仕上げることを優先してしまうのかもしれません」

 Mさんも仕事柄、正確さが必要なことは十分承知しています。それでもスピードが気になってしまうのだそうです。

 「何度も確認するのが苦手」という点については、「『粘り強く』というのは昔から弱いかなあ……」と分析しました。「子どものころから、遊びでも何でもちょっと飽きっぽく、難しいことを最後までやりとおすのは苦手でした」ということでした。

性格に影響する遺伝と環境

 アメリカのワシントン大学で生理心理学や生物学的精神医学を研究するクロニンジャー博士は、人間の性格(パーソナリティ)を「遺伝的な影響の強いもの」と「環境的な影響の強いもの」に分けています。

 クロニンジャー博士は、人間のパーソナリティを7つの軸(因子)で表現しました。この7つの因子は、4つの遺伝的な影響を受ける因子と3つの環境的な影響を受ける因子に分けられます。

 クロニンジャー博士の理論を治療に活用している精神科医の水島広子先生は、7つの因子を以下のように説明しています。

<遺伝的な影響を受ける4つの因子>
(『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』、p.53〜55)

  • 冒険好き……新しいものを追求しようとする性質
  • 心配性……損害を避けようとする性質
  • 人情家……人からほめられたり認められたりという「報酬」を求める気持ちが強いという意味
  • ねばり強さ……あることを一生懸命に辛抱強く続ける傾向

 これらの4つは、強いからいい、弱いから駄目、というものではありません。それぞれの因子の強さ弱さの組み合わせによって、いわばその人の生まれつきの個性が形作られるのです。

<環境的な影響を受ける3つの因子>
(『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』、p.56〜57)

  • 自尊心……自分という存在や自分のやり方に対する信頼感
  • 協調性……ほかの人の気持ちに敏感で思いやりの気持ちを持ちながら行動していくこと
  • 精神性……現実生活を超えた自然や宇宙への関心

 水島先生は、遺伝的な因子は性格の骨組みであり、それに肉付けをして長所にしたり短所にしたりするのが残りの環境的な3つの因子であると説明しています。

 その中でも、長所にするか短所にするかの重要なポイントの1つが「自尊心」であると述べています。

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