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» 2009年06月01日 00時00分 公開

IT企業 新卒採用の裏側(1):HP人事は語る。「理系が有利なのは最初の3年だけ」 (2/2)

[春日博文, 岑康貴,学習院大学/@IT自分戦略研究所]
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「自分のキャリアは自分で考える」

―― 新卒で入社した人は最初に研修をすることになると思いますが、どのくらいの期間、研修が続くのでしょうか。また、仕事を本格的に任されるのはいつごろからなのでしょうか。

学生記者の質問に答える山岸氏 学生記者の質問に答える山岸氏

山岸 年度によって変わるので一概にはいえませんが、基本的には3カ月から6カ月くらいですね。まず全体研修をし、その後、各部署の研修へと進みます。早い人は2年目くらいから協力会社のマネジメントを行ったり、後輩を指導したりするようになります。

―― 部署の変更はあるのでしょうか。

山岸 あります。HPには「キャリアセルフリライアンス」という考え方があります。これは「自分のキャリアは自分で考える」という意味です。この考え方を基に社内公募制度を設けています。しっかりと基準をクリアさえすれば誰でも異動は可能です。

―― HP本社など、海外に行くこともあるのでしょうか。

山岸 それもあります。社内公募制度によって海外へチャレンジすることも十分に可能です。新卒で入って、海外勤務に移った人もいますよ。

―― このような制度は、実際のところ、ほかの企業でも取り入れているものなのでしょうか。

山岸 ほかの企業でも制度自体はたくさんあると思います。ただ、本当に使われているのか、実態を確認しておく必要があると思います。例えば、社員が1万人いる中で1人にしか適用されない制度なら、それはないのと同じですよね。HPに関しては、毎年100人以上が社内公募制度を通じて異動しています。

「将来は起業したい」という人もウェルカム

―― 御社に新卒入社する魅力はどういったところにあると思いますか。

山岸 まず、若くして大きな仕事を任されるチャンスがある、ということ。2つ目は、世界の技術の標準を作れるということ。3つ目はグローバルな視点を持って仕事ができるということです。

―― 挑戦意識のある学生と、安定志向の学生、どちらが欲しいですか。

山岸 HPは「HP Way」という独自の理念を掲げています。「人間は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものだ」という信念に基づいた理念であり、行動規範ともいえます。HPはこの言葉に集約される企業文化を持っておりますので、「やりたいこと」を支援する会社でありたいと考えています。ですので、挑戦意識の高い学生にはぜひ、来てもらいたいです。

―― 挑戦意識が高過ぎて、起業志向が強い人はどうでしょうか。10年後には起業したい、と考えている人が受けに来たら、どうしますか。

山岸 独立志向を持った人も採用しています。いま独立しようと思っていたとしても、人間の考えは変わるもの。人生はどうなるか分からないですし、もしかしたらHPにずっといてくれるかもしれないですから。それに、それだけ自分のキャリアを真剣に考えている人なのですから、ぜひ入社してもらいたいですね。

―― 英語はできた方が良いですか。

山岸 正直なところ、顧客のほとんどが日本人なので、英語を使ってビジネスをするということはそこまで多くはないかも知れません。ただし、主要製品は海外で作られることが多いですし、最先端の技術情報は英語で発信されます。日本語に訳される前に、常に最新の情報をつかむためには、英語ができた方が良いでしょう。

 将来的には、英語が必要となる可能性が高いと思います。上司が外国人ということも当然ありますし、中国やインドなど海外のエンジニアとともに開発をすることが多くなってくることも予想されます。

会社名だけで選ぶような学生は来ないでほしい

―― 「こんな学生には来てほしい」、あるいは「こんな学生には来てほしくない」というのを教えてください。

山岸 最近の学生さんは、会社名で選ぶ方が多いように思います。あの会社にあこがれた、あの人にあこがれたといって入社する人が多い。会社名だけでは中身がないですし、あこがれの人がその会社を辞めたらどうするの? ということになってしまいます。

 どうしても「HPは大企業だから、外資だから、グローバルだから」となりがちですが、エンジニアとして「こういうことがやりたい」「お客さまにこういうことを提供したい」というしっかりとした意志があり、それを実現できるのがHPだった、というくらいが良いですね。

 面接などで、「どんな教育をしてくれますか」「どんな研修制度がありますか」と聞いてくる学生が非常に多い。でも、会社が提供してくれるものを気にするのではなく、自分自身はこういうことがしたい、と熱く語ってくれる人に入社してもらいたい。

 また、外資というと、働いている人は何でも1人でこなす一匹狼タイプが多いと思われがちですが、HPが手掛けるプロジェクトは大きい案件ばかりで、1人でできる案件なんてほとんどありません。どうしてもチームを組んで同じ方へ向かっていかないといけません。1人ひとりの力を合わせて、チームの力を利用して、ビジネスを成功へと導く。そういうことを楽しいと思える人の方が向いています。建築で例えると、小さい家を3〜4人で作るよりも、何百階建ての巨大なビルを何百人ものチームで作り上げる、ということに魅力を感じられる人の方が向いているでしょうね。

―― 最近あった「巨大なビル」にはどんなものがありますか。

山岸 最近だとカルビー様ですね。カルビー様は新鮮な材料にこだわったスナックフーズで親しまれている会社で、常に新鮮な商品が皆さんの元に届いていると思います。品質と安全性を追求する企業姿勢は、情報システムにも徹底されています。万が一、首都圏直下型地震などの災害が発生した場合にも、事業継続を実現するために沖縄にデータセンターを新設し、バックアップとして機能させることで災害の影響を最小限に抑えることができるようになりました。

 ほかにも例えば、航空機の運行システムやインターネットバンキングのシステムなどが「巨大なビル」に当たります。

学生は「1つのことに全力で」「狭いコミュニティに閉じこもるな」

―― HPを受ける学生には、どのようなタイプが多いでしょうか。

山岸 誰に教わったのかは分からないですが、「社会貢献がしたい」というのをよく聞きます。HPのサービスはパッと見、目に触れるものではありません。しかし、普段使っているサービスの根本を支えているのはITなんです。ITは電気、ガス、水道に続く社会インフラといわれています。電気、ガス、水道はもう整っている。じゃあ次はITだ、という考える人が多いのでしょう。

―― 学生に向けて、いまのうちにどんなことをやっておいてほしいか、メッセージをお願いします。

山岸 2つあります。1つ目は、大学生のうちに何か1つに全力で打ち込んでほしい、ということです。そして、そこで成功や失敗の経験を積んで欲しい。深くやるからこそ色々な経験ができると思います。広く浅い経験では、大きな成功や失敗はできません。

 2つ目は狭いコミュニティに閉じこもらないでほしい、ということ。これから社会に出ればいろいろな年齢、国、文化を持った人たちと仕事をしていくことになります。ですから、狭いコミュニティに依存するのではなく、いろいろなところでコミュニティをつくってほしい。他大学の学生と共同研究したり、今までと違うアルバイトをしたり、海外旅行に行ったりというのもいいかも知れませんね。そして、それを通じて自分の視野を広げていってほしいと思います。


 いかがだっただろうか。残念ながら「これを面接でいえば受かる!」などという直接的なアドバイスはもらえなかったが、日本HPという企業が新卒に何を求めているか、その一端が垣間見えたのではないだろうか。

 本連載では今後もさまざまなIT企業の新卒採用の裏側に迫ろうと考えている。自分も取材をしたいという学生の方は、jibun@atmarkit.co.jpまで連絡してほしい。編集部とともに、IT企業の新卒採用を丸裸にしよう。

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筆者紹介

春日博文(かすがひろふみ)

学習院大学経済学部3年生。

大学1年の冬、自分の今までの大学生活を見つめ直し、さまざまな活動を始める。大学2年時に日本最大級ビジネスコンテストTRIGGER2008の副代表、営業局長を務め、協賛金をほぼ1人で獲得。現在、TRIGGER2009の代表を務めている。そのほか複数企業の新規事業に参画しており、社会に出ても負けないスキルを身につけようと奔走中。

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