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» 2009年06月26日 00時00分 公開

Windows Insider用語解説:Atom(アトム)

ネットブック向けとして注目を集めているIntelの低消費電力プロセッサ「Atom」を取り上げる。Atomのラインアップとサポートする機能、登場の背景など。

[小林章彦,デジタルアドバンテージ]
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 Intelが開発・製造するマイクロプロセッサのブランドの1つ。主にネットブックでの採用が多い。

Atom Z500シリーズのパッケージ

 Atomは、低消費電力、小さいサイズ(トランジスタ数が少ない)、低価格であるという特徴が挙げられる。これまでのPC向けプロセッサでは、ノートPC向けでも消費電力は10W〜35W程度であったが、Atomでは1W未満〜4Wという圧倒的な低消費電力を実現している。このような低消費電力という特徴を生かし、AtomはノートPCやデスクトップ向けだけでなく、携帯電話(スマートフォン)や組み込み機器向けとしても提供されている。

 また現在のノートPCで主流のCore 2 Duoのトランジスタ数が2億9100万個、ダイ・サイズ(半導体チップの面積)が143平方mmなのに対し、Atomでは4700万個で25平方mmと、トランジスタ数とダイ・サイズが約1/6となっている。ダイ・サイズが小さいと、それだけ1枚のウエハから製造できる個数が増え、歩留まりも上がることから、結果として製造コストを低くできる。すなわち、低価格になるということだ。

製品ラインアップ

 Atomには、主にネットブック向けのN200シリーズ、ネットトップ(ネットブックのデスクトップ版)の200/300シリーズ、携帯機器向けのZ500シリーズの3シリーズがある。ネットブックではN270(1.6GHz)とN280(1.66GHz)、薄型のネットブックでは、より消費電力が小さなZ520(1.33GHz)、ネットトップではシングルコアの230とデュアルコアの330が搭載されている。

 原稿執筆時点の製品ラインアップと各モデルの機能は、下表のとおり。

プロセッサ・ナンバ 組み込み向け 2次キャッシュ・メモリ容量 動作クロック FSB コア数 最大TDP Intel VT Intel HT Intel 64 XDビット
Z550 512Kbytes 2GHz 533MHz 1 2.4W
Z540 512Kbytes 1.86GHz 533MHz 1 2.4W
Z530P 512Kbytes 1.6GHz 533MHz 1 2.2W
Z530 512Kbytes 1.6GHz 533MHz 1 2W
Z520PT 512Kbytes 1.33GHz 533MHz 1 2.2W
Z520 512Kbytes 1.33GHz 533MHz 1 2W
Z515 512Kbytes 1.2GHz 400MHz 1 1.4W
Z510PT 512Kbytes 1.1GHz 400MHz 1 2.2W
Z510P 512Kbytes 1.1GHz 400MHz 1 2.2W
Z510 512Kbytes 1.1GHz 400MHz 1 2W
Z500 512Kbytes 800MHz 400MHz 1 0.65W
N270 512Kbytes 1.6GHz 533MHz 1 2.5W
N280 512Kbytes 1.66GHz 667MHz 1 2.5W
230 512Kbytes 1.6GHz 533MHz 1 4W
330 512Kbytes×2 1.6GHz 533MHz 2 8W
Atomのラインアップ
TDP(Thermal Design Power):熱設計電力のこと。消費電力とほぼ同じとみなせる。
Intel VT:仮想化支援機能のサポート
Intel HT:1つのコアを2つのコアに見せ、2つのスレッドを実行可能とするハイパースレッディング機能のサポート
Intel 64:64bit機能のサポート
XDビット:バッファ・オーバーフローなどの攻撃を検出可能にする「eXecute Disable bit」のサポート

 このようにAtomといっても、Z500の一部はIntel VT(仮想化支援機能)をサポートしていたり、ネットトップ向けの230/330ではIntel 64(64bit)に対応していたりと、サポートしている機能は異なっている。ネットブックにおいても、Z520を搭載した機種ならばWindows 7の互換機能「Windows XP Mode(Intel VTが必須)」の利用が可能になることが分かる。

Atom登場の背景

 これまでのPC向けのプロセッサは、さまざまな機能を採用して性能向上を実現してきた。プロセッサの性能向上とは、単位時間当たりに実行する命令数を増やすことであり、それには動作クロックを向上させたり、同じ時間に実行できる命令数(並列実行可能な命令数)を増やしたりする必要がある。

 動作クロックについては、例えばPentium 4の場合、リリース当初(2000年11月)の1.4GHz/1.5GHzから最終的には3.8GHzまで向上している。しかし動作クロックを向上させると、消費電力が上昇してしまうというデメリットもある。

 一方、並列実行可能な命令数を向上させるために、Pentium Pro以降、プログラムの命令順に関係なく、実行できる順番に並べ替えて、複数の命令を並列に実行可能にするアウト・オブ・オーダー実行といった技術が導入されてきた。しかしアウト・オブ・オーダー実行では、命令を並べ替える必要性から、命令の間の依存関係をチェックしたり、命令で利用するレジスタよりも多くの物理レジスタを用意してレジスタの競合を避けたりするなど、複雑なロジックが必要となる。その結果、こうした機能を実装するためのトランジスタ数が増え、消費電力が増える傾向にあった。

 Atomでは、こうした消費電力が高くなる性能向上手法について再検討を行い、低消費電力でかつ実用に耐える性能を実現することを目的に開発が行われた。そのため、Atomのマイクロアーキテクチャは、Pentiumと同様のシンプルなイン・オーダー実行(プログラムの命令順に実行)を採用している。Atomの登場により、PCと同様のアプリケーションが実行可能な携帯電話(スマートフォン)が実現するなど、x86プロセッサの活用範囲が広がっている。

今後のAtomの予定

 各調査会社によれば、2008年末の時点でAtomを搭載するネットブックのシェアは、全ノートPCの25%を超えているということだ。2009年にはさらにシェアを伸ばし、30%を大きく超えることが予想されている。Atomは、Intel製プロセッサの中でも主要な位置付けを占めつつあることが分かる。

 2010年には、開発コード名「Moorestown(ムーアズタウン)」と呼ばれるAtom Z500シリーズの次世代版のリリースが予定されている。Moorestownでは、さらなる低消費電力化を実現するとしており、ネットブック以外の用途への広がりを見せるものと思われる。また2011年には、開発コード名「Medfield(メドフィールド)」と呼ばれる、製造プロセスを現在の45nmから32nmに縮小し、周辺チップなども統合した「SoC(System on a Chip)」型のAtomが提供されることを明らかにしている。Medfieldでは、スマートフォンなどへの採用が期待される。

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