元現役高校生サーバ管理者「isidai」の秘密ライバルに学べ! 学生スターエンジニアに聞く(1)(2/2 ページ)

» 2009年07月22日 00時00分 公開
[塚田朗弘日本電子専門学校]
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石森大貴は普通の高校生か?

―― そういえば、CNETのブログに関して、石森さんにいいたいことがあるんですよ。第1回で、自己紹介を書かれていますよね。そこで「このブログでは、『僕と同じごくごく普通の高校生』でもサーバの構築ができるように、分かりやすく解説をしつつ、僕自身のスキルアップを狙っている」という趣旨のことを書かれているわけですが……編注:「高校生」はブログ開設当時)

石森 はい。

―― 控えめに見ても、石森さんは「ごくごく普通の高校生」じゃないだろう、と思うんですが(笑)。実際、そこまで活発に活動している高校生は決して多くはないと思うんですよ。

石森 うーん、確かにそうかもしれないですね(笑)。

―― 「自分はこんなに普通だ」というアピールをしてくれませんか?

石森 ええと、高校のときはあんまり授業の予習をしなかったので、古典の先生にめちゃくちゃ怒られたりとか……。

―― おおー、高校生っぽい。

石森 よく授業で当てられて、「分かりません!」って答えて怒られて、みたいな。でも優しい先生だったので、どうにか赤点を取らないようにいつも助けてくれてました。

―― うーん、確かに石森さんは今日いろいろ聞いたお話の中には「普通じゃない」部分がたくさんあると思うんですが、それ以外はみんなと一緒なんですね。なんというか、話していても、外見も「よくいるお兄さん」という感じで。

石森 そうですよ。普通です(笑)。

―― 正直いって、お会いするまではもう少しオタクっぽいのかなあ、と思っていました。サーバをバリバリにやってらっしゃるので、PCの自作とかも好きなのかなと。僕の周りはそういう人が多いので……。

石森 自作は、もちろんできるんですけど、あんまりしたくない。1個1個パーツを集めて、保証もバラバラで、というのがどうにも面倒なんで。いま使っているのがMacなんですよ、全部。左手にサーバ用のPCがあって、Mac miniがあって、PowerBookがあって、MacBookがあって、そしてもう1個サーバがある。サーバ環境はLinux(Debian)なんですけど。

―― あ、なるほど。じゃあ自作という感じにはならないですね。

石森 はい。もうMacしか使わないので。

―― でも、最初はWindowsから入ったってことだから、どこかでMacにスイッチしたってことですね。

石森 スイッチしたのは高校1年生のときですね。それまではWindows 2000が好きで使っていました。

atcorp vs isidai 石森さんの話に食い付く筆者(左)

元は文系だった

―― 「IT業界就職ラボ」というコーナーなので、就職活動関係についてもお聞きします。いまはまだ大学1年生だから、就職活動が始まるのはもう少し後だと思うのですが、将来的には、やはり職業としてエンジニアになりたいと考えているのでしょうか?

石森 そうですね……セキュリティ関連の技術が好きなので、そういった技術を扱う仕事をしたいなあ、と思っています。でも、一口に「セキュリティ」といってもいっぱいあるし。もしそれがダメだったとしても、ほかにもいろいろできるかな、と思っています。

―― 例えば、エレクトーンとか?

石森 そう、エレクトーンとか。

―― そんなに1つだけの道に固執するというわけではないんですね。

 いまIT業界に就職するとなると、人数的にSIer(システムインテグレータ)に行く学生が多くなると思うんですよ。SIerの採用って、多くの企業が「文理、経験不問」とうたっていますよね。石森さんは理系の学生として、何か思うところはありますか?

石森 文理不問は、別にそれはそれでいいと思うんですよ。興味があれば勉強できると思うので、学部は関係ないかなと思います。

 僕もいまは理系の学部にいますが、元は文系なんですよね。高校も文系で、大学も、筑波大学ではなく、私立大学の文系学部に行く気だったんです。

 そのつもりでずっと文系の受験勉強をしていたんですけど、ある日突然「筑波大学の情報科学類、受けようかなー」と思って。

―― いきなりどうしたんですか(笑)。何か衝動的なものがあったんですか?

石森 衝動的な何かがあったんです。

―― じゃあ、ベースは文系なんですね。

石森 そうです。それで、記事を書くのが好きで、よく書いています。

―― なるほど。よくITエンジニアに必要なのはコミュニケーション能力、というのはよくいわれるところですけど、話す力や読む力、聞く力って必要ですよね。

石森 ああ、それはとても必要だと思います。それに、PCとばかり話しているんじゃなくて、人間とも話せないと、ってよく思います。実際にIT業界に身を置いてみると、「人とのつながり」がものすごく多いですよね。

 そういえば、僕は人見知りなんですけど、「人見知りだ」って自分でいうと、周りの人に「えっ、どこが!?」って反応されちゃって……。

―― えっ、どこが!?

石森 人見知りなんですよ(笑)! 中学生のころは、なかなか友達ができなかったり、クラスで1人で過ごしたりしていました。

―― でも、街中の外国人に英語で話し掛けていたんですよね?

石森 手当たり次第に話し掛けてたわけじゃないですよ(笑)。困っている人がいたら話し掛けてあげて、という感じです。

―― やっぱり人見知りには見えない……。

セキュリティキャンプは「人生が変わる」

―― セキュリティキャンプについても聞かせてください。最初にキャンプに参加したのは2007年ですよね。おいくつのときですか?

石森 高校2年生のときです。アメリカに遊びに行く直前にキャンプの採用通知を受け取って、交通費の申請だけしてアメリカに行ったので、音信不通になっちゃって(笑)。帰国して5日後にはキャンプ、という強行スケジュールでした。

―― 初めて参加したとき、どうでしたか? 感想などあれば。

石森 「すごい人がいっぱいいる!」と思いましたね。人生が変わるんですよ、キャンプに参加すると。

―― 石森さんから見て「すごい人」がいっぱいいるんですか? 人生が変わるというと……世界が広がるんですかね。いろんな人がいる、という感じですか?

石森 そうなんですよ。びっくりしました。あれは人生が変わる。みんな応募してほしいですね。

―― この記事が掲載されるころには、とっくに今年の申し込みは終わってますが、来年以降はぜひ、ということで。

 いろんな人がいる、とのことですが、石森さんは以前にブログで「中にはコンソール画面を触るのが初めての人もいた」と書いていらっしゃいましたよね。そういう初心者でも、キャンプのカリキュラムには付いていけるんですか?

石森 そうですね、参加者同士で助け合ったり、チューターがしっかりサポートしたりしていたので、その人もちゃんと付いていけていました。

―― 逆に、中には「すごくスキルの高い人」もいるわけですよね。

石森 そうそう、「なんで来たの?」みたいな。

―― いやいや、「なんで来たの?」って思われてる側ですよね、石森さん(笑)。

チューターは大変!

―― 2008年からはチューターとして参加していらっしゃるわけですが、チューターはどんなことをするんですか?

石森 実習の補佐や、参加者のサポートをします。ついていけない人が出ないように、しっかりと。

―― チューターも応募制ですよね。ぜひやりたい、という人が応募して、審査される流れですか?

石森 そうですね、そこは一般参加者と同じです。

 ちょっと面白い話があるんですよ。今年、応募したとき、応募受領通知に「CC092」って書いてあったんです。「え、92番目!? そんなに多いの?」と思ったら、「09」年の「2」番目だった、という。

―― 92人もいないでしょう(笑)。チューターとして参加するのと、一般参加とで、違う部分はありましたか?

石森 チューターは大変ですよ。本当に。

―― 運営にもかかわるんでしょうか。

石森 かなりかかわりますね。参加者の選考にはノータッチですが、前日から現地に入って、参加者の使うPCをセットアップしたり、ネットワークを組んだりします。

―― 作業も大変だし、責任もあるわけですね。今年も頑張ってください。

石森 ありがとうございます。

AbelProjectとセキュリティキャンプ

―― AbelProjectも、セキュリティキャンプで知り合った人と運営されているんですよね。

石森 はい。「lizan」という人で、いま東京大学の1年生です。

―― 正式にAbelProjectとしてスタートしたのはいつだったんですか?

石森 2007年1月4日かな。その日にドメインを取って、2007年4月3日、自分の誕生日に正式公開しました。

―― 実際にそうやって外に公開して、得たものや変わったことなどありましたか?

石森 ユーザーのサポートを経験して、やっぱり人に使ってもらうというのはいろいろと大変なんだということが分かりました。ユーザー層がすごく広くて、小学生から60代の方まで使ってくれているんですよ。

―― いま何人くらいユーザーがいるんですか?

石森 300人くらいですね。

―― AbelProjectは石森さんの自宅にあるサーバで運営されてるんですか?

石森 そうです。

―― 確か、ネームサーバはアメリカにありますよね。どういう構成になっているんでしょうか。

石森 ネームサーバは3つあって、1つはアメリカのVPSですね。あと、つくばに1つと、神奈川に1つあります。

―― なるほど。ユーザーの方が利用する管理システムは、石森さんの自宅にあるサーバで動いているということですね。

若手世代の活躍

―― 石森さんが高校生のころから活躍されていたのもすごいんですけど、最近、中学生たちがコミュニティに出て来ていますよね。

石森 AbelProjectでも、来月(2009年8月)から「ALIVE」というサポートを行うユーザー団体が動き始めるんですけど、そこに中学生が参加してくれているんですよ。これからはユーザーからの問い合わせはALIVEが受け取って、質問などに答えてくれます。

―― それはまた活発な中学生ですね。彼らと知り合ったのは、やはりセキュリティキャンプですか?

石森 いや、多分彼らは全員、今年からキャンプに応募し始めたんじゃないかな。もともと1人は以前から知り合いだったんですよね。ほかの人はみんなAbelのユーザー。「ユーザー団体を作りますよ」って募集したとき、最初は誰も応募してくれなかったんですけど、そこを「来なよ」ってちょっと誘ってみたら、どんどん集まってきて。

―― すごいですね。何がすごいって、彼らにとって石森さんは間違いなく「ハッカーへの入り口」となる存在だと思うんですよ。しかも、積極的にそういう世界に引っ張り込んでくれる。すごい吸引力。

石森 そうですかね(笑)。

―― 素晴らしい存在だと思います。このインタビューでも最初の方にダイヤルアップ時代の話が出ましたけど、そのころは学生がこれだけ活動することって、ほとんどなかったと思うんですよね。それに比べて、いまのインターネット環境とか、オープンソースの普及とか、ALIVEの若い人たちにとっては石森さんの存在とか、そういう環境が身の回りにできてきた、というのはすごいことだと思いますよ。

石森 それは確かに。今年のキャンプも、彼らに応募用紙を渡して、「ほら、とにかく書いときな」って(笑)。でも、内容を添削していくと、いつの間にか全部変わっちゃって、僕が書いたものに……。

―― それは、親切……なのかなあ?

石森 「Linuxの経験はありますか」っていう質問の答えを書くときは、「取りあえずいま、VMWareにLinuxインストールしちゃえ!」とか。

―― すごく手厚いフォローですね(笑)。いい兄貴、という感じ。いいですねえ。

お友達になりましょう

―― では、記事を読んでいる同年代の学生に向けて、何かひとことメッセージをお願いします。

石森 ええ!? ええと……。

―― じゃあ、僕に向けてお願いします(笑)。

石森 Skypeとかmixiとかで、お友達になってください。できるだけいろいろな人と友達になって、何かの入り口や窓口になれればいいなあと思うので! 皆さんも、気になる人がいたら、Twitterでフォローするだけでもいいし、メール送ってみるのでもいいから、とにかくコンタクトを積極的に取ることが大事だと思います。

―― それは、こちらこそぜひ、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。

石森 ありがとうございました。

取材を終えて

 「ライバルに学べ!学生スターエンジニアに聞く」第1回、お楽しみいただけたでしょうか。

 石森さんは、想像していた以上の経歴のすごさ、話の面白さ、そしてさわやかさでした。インタビューしながら思ったのは、石森さんは自分の意見や自信をはっきりと持ちつつ、それでいて人の話を聞き入れるキャパシティを広く持っている、ということでした。だから、とても話しやすいんですね。何がいいたいのかが分かりやすいし、こちらのいうこともすぐにその意図を理解してしまう。わたしもこんなさわやかさを身につけて、さっそうと仕事がしたいなあ、と思うのでした。

 石森さん、最後までお読みいただいた皆さん、どうもありがとうございました。次回をお楽しみに。

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著者プロフィール

塚田朗弘(つかだあきひろ)

日本電子専門学校 高度情報処理科 3年生。

大学卒業後、紆余(うよ)曲折を経て日本電子専門学校に入学し、2010年3月に卒業予定。

学校ではチューターとしてオープンソースシステム科やITスペシャリスト科といった他科の実習室管理、実習補佐を担当する傍ら、非公式部活動「電設部」でIT勉強会プロジェクトのリーダーを務める。

IT勉強会プロジェクトでは、学生によるIT勉強会の普及と、IT勉強会への学生の参加を促進すべく奮戦中。

所有資格はテクニカルエンジニア(データベース)、テクニカルエンジニア(ネットワーク)、ソフトウェア開発技術者、ORACLE MASTER Gold Oracle Database 10g、UMLモデリング技能検定L3など。

ブログ:学内IT勉強会のススメ



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