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» 2009年07月28日 00時00分 公開

「匠塾 これからのエンジニアとIT企業のあり方」レポート:「エンジニアはまず行動すべし」――職人気質のエンジニアが語る仕事論

[金武明日香,@IT]

 匠グループは7月22日、大手町サンケイホールで「第4回匠塾 これからのエンジニアとIT企業のあり方」を開催した。

匠BusinessPlace 萩本順三氏

 「匠塾」は、IT業界で活躍するエンジニアを招き、彼らの方法論や考え方について学ぶ講座だ。2009年4月から開始し、今回で4回目となる。「現場のモチベーション向上」をテーマとした基調講演、「匠BusinessPlace」設立記念講演の後、「匠」と呼ばれるエンジニアたちによるパネルディスカッションが行われた。

 パネリストは、チェンジビジョン代表取締役社長の平鍋健児氏、浅海智晴事務所代表の浅海智晴氏、マイクロソフトでソフトウェアアーキテクトとして働く萩原正義氏、アーキテクタス代表取締役の細川努氏、シンプルアーキテクト代表の牛尾剛氏。匠BusinessPlace代表取締役の萩本順三氏がモデレータを務めた。

「まずは自分で行動する」

浅海智晴事務所 浅海智晴氏

 萩本氏は「エンジニアたちに元気がない。サラリーマン気質になって、クリエイティブな仕事ができていないのでは」と、エンジニアやIT業界の活気のなさについて問題提起をした。

 「この現状の中でどう行動するか」と質問に、牛尾氏は「今はチャンスだと思う」とポジティブな姿勢を見せた。「不況の中で良いアイデアが生まれることは、これまでにもあった。まずは自分で考えてアイデアを出していくことによって、変化をもたらすべきだ」と、行動の重要性について述べた。

 浅海氏は「運・鈍・根」をキーワードに、地道に自分のスキルを積み上げていると語った。目先のことに流される人は、ボールばかり追いかけてしまう下手なサッカー選手に似ている。大事なのは、自分のポジションを自覚し、地道に自分のスキルを上げてチームの力を出せるようにすることだという。

チェンジビジョン 平鍋健児氏

 平鍋氏は「日本のSIerは全部なくなればいいと思っている」と発言し、会場を沸かせた。「しかしこれは自分でできることではないので、言うのは反則だ」と切り替えた後、海外を相手にできる製品の制作を目指していると語った。日本にはプロダクトで勝負できる会社が少ない、と平鍋氏は指摘する。「パソコンには、海外の製品がたくさん入っている。しかし、日本の企業はいつまでも1つの製品を1社に納品している。日本国内だけの需要だけで食べていくのでは、状況は変わらない。海外を相手にしなくては」と主張した。

 「レベルが高く、技術力があると思うエンジニア像」とはどのようなものだろうか。パネリストたちからは「発想の転換ができる人」「全体を俯瞰でき、その中での自らの役割を知っている人」「ある技術に特化した人」などの意見が出た。

シンプルアーキテクト 牛尾剛氏

 牛尾氏は「皆、自分のことをいまいちだと思っていないだろうか」と会場に問いかけた。日本のエンジニアは、十分な技術を身に付けているにも関わらず、自分のことを未熟と考えがちだという。「あまり臆病にならずに、自分の考えを発信していくべきだ」と呼びかけた。

 萩原氏は「発想の転換の重要性」について、暗号鍵の思考法を例にとって説明した。公開鍵は「どうしても秘密が漏れるなら、いっそのこと公開してしまおう」という発想の転換から生まれた。このような「できないなら別の方向に向かおう」という発想を持つことが大事だと述べた。

 平鍋氏にとって「すごい人」とは、「“How”ではなく“Why”と考えることができる人」だという。「どのようにやろうか」と下に向かって考えることのできる人は大勢いる。そうではなく「なぜこういうことが起きたのか」と上方向に思考の枝を張っていける人になりたいと思う、と語った。

会場から飛び入り参加も

アーキテクタス 細川努氏

 萩本氏が会場に呼びかけると、飛び入り参加のパネリストが加わり、会場は盛り上がりを見せた。レベルが高いと思うのはどんなエンジニアか、という質問に「どんな手を使っても壁を乗り越えようとする人」だと答えた。

 テーマは「旧態依然とした会社の中での行動」に移った。新しい技術を追いかけない会社、業界の中で目立たない会社に在籍していたらどうするか、という質問については、これまでの議論と同様に「自ら積極的に動くことが大事」「自分ができることをするべき」という意見が目立った。

マイクロソフト 萩原正義氏

 実際に自分から動いている人はいるか、と会場の声を募ると、社内で勉強会を立ち上げているという男性がマイクを取った。男性は、会社の上層部から勉強会の開催を依頼されたという。しかし、実は声をかけられる前から、自分に声がかかるように下準備をしていたと打ち明けた。「いつかやる状況がきたら、すぐに動けるようにしていた。だから今もやもやしている人も、いざ動けるようにしておく努力をしていけばいいのでは」と提言した。萩本氏はうなずいて「思いたったらすぐ動いてみる方がいい。悪かったら修正すればいいだけのこと。脳内でアジャイル開発をする方が、溜めておくよりも良い」と語った。

「匠」になるためには

 最後にパネリストたちは、「匠」になるヒントを語った。パネリストの発言に共通していたのは「自主的な行動」「自分のスタイルの確立」「仲間を大事にする」という意識だった。

 牛尾氏と細川氏は「自分から行動することの意識」を強調した。牛尾氏は「小さい変化は意外に簡単。ちょっと変えられることを探してみる 」と述べた。細川氏も「自分がこうしたいという意思を持つことが大事。さらに楽しい仲間がいるといい」と語った。

 萩原氏と浅海氏は、ワークスタイルの確立について、自分の経験談を披露した。萩原氏は、アメリカの時間に合わせて、火曜から土曜日に働いている。アメリカから技術が出てくる瞬間を押さえるため、向こうの時間に合わせて仕事をしているそうだ。浅海氏は「自分の活動時間と合わないので、会社を辞めた」と告白。「午前中は頭が働くが、午後はあまり働かない。人にはこうした自分のリズムや生活習慣があるので、自分でチューニングすることが必要だ」と述べた。

 平鍋氏は「やってみて考える」ことの重要性と「仲間の大事さ」について語った。「人間のモチベーションは仲間に左右される。一緒に喜び合える人を作るためには、たとえうまくいかない人がいると思っても、褒めてみるといいのでは。エンジニアは人を褒めるのが苦手だが、もっと人を褒めてみると新しい発見があるかもしれない」とアドバイスした。

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