連載
» 2009年10月15日 00時00分 公開

独断と偏見のCMS比較(3):CMS選定の9のポイントと、いま話題の3つのCMS (1/3)

CMSは「数多くの製品があり、とてもじゃないが選べない」のが普通だ。選定のポイントと代表的なSOY CMS、Drupal、Concrete5を紹介しよう

[清水亮,株式会社ユビキタスエンターテインメント]

「情報発信サイト」のためのCMSとは

 連載も第3回になって、いよいよお待ちかねのWebサイトを管理するためのCMSのお話です。現代では「Webサイト」という言葉が指す範囲が広過ぎるので、ここでは企業や製品のWebサイトやイベントの告知サイトなど、何らかの情報を発信するためのサイト全般を「情報発信サイト」と呼ぶことにします。

 連載第1回の「いまさら聞けない「CMS」超入門」の定義に従えば、編集者より読者の方が圧倒的に多いタイプのWebサイトです。これはCMSの王道ともいえる分野ですから、「数多くの製品があり、とてもじゃないが選べない」というのが普通の感想だと思います。

 そこで今回は、まず情報発信サイトのCMSに求められる機能について紹介し、最後に代表的な製品をいくつかご紹介します。

そもそも、なぜWebサイトの管理にCMSが必要なのか?

 情報を発信するサイトをCMSで管理するとはどういうことでしょうか?

 極端な話、情報を発信するだけならCMSは不必要です。Webサイト制作(オーサリング)ソフトでHTML画像を制作し、WebサーバにFTPでアップロードすればWebサイトは出来上がります。

 しかし、それだけでは不十分なことや不便なことが出てきます。例えば、企業の会社案内のWebサイトを想定してみましょう。CMSを用いない場合、企業が何らかのプレスリリースを発表するとして、それを配信するときにいちいちすべての目次ページを手作業で変更しなくてはなりません。

 また、特定の日付けに解禁になる業務提携などの情報はその日まで決して開示できません。従って、その日、担当者は情報が解禁になるまでPCの前で待機して、時間ぴったりにアップロードしなければなりません。製品を扱うような会社なら、製品紹介のページは日常的に更新し、規模の大きい会社であれば人事異動のたびに関連するページを編集しなければなりません。

 また会社によっては、すべての対外的な告知情報を広報部や法務部の承認を要する場合もあります。規模が大きくなれば、各部署ごとに独立してページを更新したいこともあるでしょう。複雑化する一方です。

 こうしたことをすべて手作業で行っていた時代も確かにありました。しかし、Webが普及し、企業が自社のWebサイトを持つのが当たり前になった現在、Webで扱うべき情報が飛躍的に増えた結果、効率的な管理システムが必要になりました。これこそがCMSの起源です。

 もちろん人力でも可能ですが、結果的にそれでかなりの時間をムダにしてしまうことも少なくありません。この場合の時間的な「ムダ」というのは経済的な損失に直結します。

 さらに、数年前からRSSなどで情報配信をすることが重要性を増してきました。また、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで上位に表示されるためにすべてのページに適切なメタ情報を埋め込む検索エンジン最適化SEO対策を見込んだ仕組みも、製品や会社の存在を広く知ってほしい場合には重要です。

 また、会社によっては製品情報などを検索させたり、Web上に問い合わせフォームを設置したり、掲示板などを設置して顧客とのコミュニケーションに活用したいという要望もあるでしょう。広告やアフィリエイトと連携したり、広告効果を確かめるためにはアクセス解析も必要です。

 ここまで来ると、人間が手作業でできる範囲をとうに超えています。だからこそ、CMSが必要なのです。

情報発信サイト用CMSを選ぶ際の10のポイント

 では、具体的に情報発信サイトの管理にはどんな機能が求められるのでしょうか。

 実際にCMSを選ぶ時に参考にすべきポイントは、「そのCMSが必要な機能を備えているか」ということです。不必要に機能の多いCMSは、ボタンが多過ぎたり、メニューが深過ぎたりしてかえって混乱します。必要な機能を見極めて選ぶことが大切です。

  1. 記事の管理機能
  2. 記事のWYSIWYG編集とHTML直接編集
  3. 画像のアップロードと埋め込み
  4. SEO対策の機能
  5. サーバの安定性
  6. セキュリティ対策
  7. ソフトウェアの鮮度と練度
  8. バックアップとエクスポート
  9. 使いやすさ・サポートの有無

【1】記事の管理機能

 過去に公開した記事、現在公開されている記事、これから公開する記事などを管理する機能です。アップロードした画像などを一括で管理する機能も含まれます。

【2】記事のWYSIWYG編集とHTML直接編集

 記事をワープロのように実際に見える形に近い状態でアイコンなどを使って手軽に編集できる機能を「WYSIWYG(ウィジウィグ:What You See Is What You Get)」と呼びます。最近のCMSには大抵搭載されている機能です。

 WYSIWYG編集は便利なのですが、小回りが利かないことがあります。例えば、製品の動画をYouTubeにアップロードしたものを埋め込もうとWYSIWYG編集画面でタグを埋め込んでも、そのままでは動作してくれません。

 ほかにも、携帯電話でしか読めない絵文字を使ったり、特殊なタグを利用したりするためには、素のHTMLを扱えた方が便利な場合があります。

図1 後述するSOY CMSの記事編集画面 図1 後述するSOY CMSの記事編集画面

 特にWYSIWYGでは表示されないHTMLタグを内部的に扱っているため、表示がおかしくなった場合に問題が見つけにくい場合があります。そんなとき、HTMLが読める人を呼べばHTML編集に対応しているCMSでは一発で問題が解決します。いざというときにHTML編集がないと途方に暮れてしまいます。

【3】画像のアップロードと埋め込み

 いまや、画像がないWebサイトなんて寂しいですよね。でも、HTMLとテキストエディタだと、画像をアップロードしたり、画像のURLをHTMLに埋め込んだりというのがとても面倒で、ミスも起きやすいところです。画像のアップロードと埋め込みをしてくれるのが、CMSを使った時に一番「良かった」と思えるところです。

 しかし、CMSによっては複数の画像を同時にアップロードできない場合があります。これだと大量の画像をアップロードしたいときに、いちいちファイルを選ばなくてはならないため非効率的です。

【4】SEO対策の機能

 企業サイトの場合、SEO対策はいまや不可欠です。どの程度までSEO対策をしてくれるCMSなのか考える必要があります。優秀なCMSは、URLにページ内のキーワードを混ぜたり、さまざまなメタタグを自動的に埋めたりしてくれます。

 ただし、本当にどの程度のSEOが必要なのかを考えた上で導入する必要があります。いたずらに長いだけのURLは、かえってユーザーの利便性を下げてしまいます。

 また、検索エンジン対策として有効なサイトマップファイルの作成をサポートしているCMSかどうかもSEOの観点から非常に重要なポイントであるといえます。

図2 後述するConcrete5のダッシュボード 図2 後述するConcrete5のダッシュボード

【5】サーバの安定性

 最近流行のASP/SaaSモデルは、価格が安いことが特徴です。そのうえ、サーバを自社で運営するより初期のセットアップもずっと楽です。しかし、値段だけで判断して導入すると、実はサーバがかなり非力で、本当に必要な時に動いていなかったりとか、急に多くのユーザーが訪れたときにサーバがあっさりダウン(機能停止)してしまう場合も少なくありません。

 実際、筆者も多くのASP/SaaSソリューションをユーザーとして使ってきましたが、価格が安いものは本当に「いざ」というときには、まったく役に立ちません。しかも、サーバが停止しているにもかかわらず、サポートに電話してもつながらなかったり、つながったとしても「復旧に3日以上かかる」といわれて卒倒しそうになったことがあります。

 結局、サーバを提供する側としても対価に見合った分しかサービスできないので、安価なサービスを利用する場合は割り切って付き合うしかありません。大手が経営しているASPサービスと安心して使っていても値段が安いものは同様の対応をされてしまうことがあるので注意してください。

 筆者が得た教訓としては、万全を期すには自社で技術者とサーバを抱えるしかなく、ASP/SaaSでの運用を外部に委託するなら、ダウンタイム(サーバ停止時間)の保証を含めた契約をしっかり結ばないと大切なサイトは怖くて運営できないということでした。

【6】セキュリティ対策

 情報発信サイトのCMSはセキュリティ対策が必須です。インターネットにある以上、どうしても外部から侵入されたり、いたずらされたりする可能性があります。

 また、ASP/SaaSモデルや、レンタルサーバにCMSを設置する場合、更新そのものもインターネット経由ということがよくあると思いますが、ログインや更新などの処理に最低でもSSLが利用可能であることは必須です。SSLで守られていないパスワードは非常に簡単に盗まれてしまいます。

 「うちのサイトを攻撃する暇人なんかいないだろう」と安心していても、サイトのセキュリティに問題がある場合、そのサイトを踏み台にして、ほかのサイトやサービスに迷惑を掛けてしまうことがあります。そういう事件を起こしてしまうと各種の公的セキュリティ機関から警告を受けたり、最悪の場合は個人情報の流出など大変な事件に発展してしまう可能性があります。

 ただし、完ぺきなセキュリティ対策というのはあり得ないのですが、セキュリティの問題が発見されるたびに細めにパッチ(更新プログラム)を配信しているCMSは比較的安全性が高いといえます。

【7】ソフトウェアの鮮度と練度

 まったくソフトがバージョンアップされていないCMSは、新しいセキュリティの問題に十分対応ができていない可能性があり、企業が使用するのは極めて危険だといえます。オープンソースのソフトなどに多いのですが、開発者が趣味で開発しているために、忙しくなったり飽きてしまったりしたら放置されてセキュリティ対策が十分取られていないものもあります。

 また、逆にあまりにユーザーが少ないため、十分テストがされておらず、ちゃんと使えないソフトというのもあります。Webの世界では、WebサーバやOS、言語そのものもセキュリティ問題に対応して日々バージョンアップしているので、そうしたバージョンアップの過程で古いままのソフトは動作しなくなってしまう危険性があります。

 実際、よくあるのは、昔のサーバでは動作したけれども、PHPなどのバージョンが古くて最新のサーバでは、うまく動かないソフトのケースです。しかも、開発が停止していて移行もできないなんてことがあります。古いバージョンのOSは古いハードウェアでしか動作しない場合も多く、古いハードは製造そのものがされなくなっていることも少なくありません。

 こうすると、せっかくいままで作ってきたCMS上のデータを丸ごと捨てて新規に構築する必要がでてくるため、2度手間、3度手間になってしまいます。CMSは一度決めたらそう簡単に変えることができるものではないので、できるだけ長く使えるものを選ぶべきでしょう。

 バージョンアップが細かく繰り返されているソフトは、それだけで信用できます。使い続けている人がいるからこそバージョンアップされているわけで、それだけ新しいOSやハードウェアへのサポートが期待できるというわけです。

【8】バックアップとエクスポート

 よくある誤解が、「コンピュータは半導体だから壊れない」というものです。これは完全に間違いで、よく壊れます。例えば、サーバの主要部品であるHDDの故障率は5年間で18〜49.1%という調査結果(米カーネギーメロン大学調べ)もあります。また、メモリ(RAM)も故障しやすいものです。

 つまり、Webサーバのように常時稼働のサーバは基本的には「使い捨ての消耗品である」と考えなければならないのです。この考えにおいては、ASP/SaaSは有利です。常にサーバが稼働する状態にメンテナンスしてくれるからです。

 ただ、どんな場合でも、「コンピュータは故障する」という考えの基、CMSの扱うデータをバックアップしておく必要があります。そういう意味ではCMS自体がバックアップをサポートしているのかというのも1つの選ぶポイントになります。

 また、たとえバックアップを明示的にサポートしていなくても、データのエクスポート(外部出力)とインポート(取り込み)に対応していれば、手動でバックアップができます。データのエクスポートができるCMSの方が、将来的に新しいCMSを導入するとき、移行に便利です。できればXML形式のエクスポートに対応していると安心です。

【9】使いやすさ・サポートの有無

 当然ながら、上記のすべての機能が入っていても、使い方が分からなければ、その機能は存在しないのと同じです。また、使い方が分かりやすくても、使いにくかったり、かえって非効率的だったりすることがあります。できれば実際に、少しデモを体験してから選ぶのがいいでしょう。例えば、後述するSOY CMSでは下記のようなデモサイトがあります。

 また、たとえ使い方が分からなくても、誰かが身近な環境で同じものを使っていれば、教えてもらうことができますし、商用ソフトウェアの場合は、サポートを受けられることがあります。これも意外と重要なポイントです。

 次ページからは、以下の比較的知名度があり、なおかつ新し目のCMSを3つ紹介しましょう。

  • 国産で低価格なサポートもある「SOY CMS」
  • 機能テンコ盛りの会員制サイト向け万能CMS「Drupal」
  • デザインフルなページを簡単に管理できる「Concrete5」
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