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» 2009年11月02日 00時00分 公開

心の健康を保つために(15):仕事が面白く感じる心理状態〜フローな状態について (2/2)

[石川賀奈美,ピースマインド]
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フロー体験の構成要素

  1. 明確な目的
  2. 専念と集中
  3. 自己に対する意識の感覚の低下、活動と意識の融合(その活動にはまりきる)
  4. 時間間隔のゆがみ(時間がたつのを忘れる)
  5. 直接的で即座な反応(活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
  6. 能力の水準と難易度のバランス(活動が易しすぎず、難しすぎない)
  7. 状況や活動を自分で制御している感覚
  8. 活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない
※( )内は筆者注。

 チクセントミハイは、とくに6.自分の能力と課題の難易度のバランスが大事だと述べています。さらにチクセントミハイは、集団で行動することの作用として、1人ひとりが「フロー」の状態に達することについても触れています。

 Mさんの、高校生のときに仲間と一緒に作業した思い出は、まさに「フロー」の状態だったのかもしれません。

「日常のぼーっとする時間」=「マイクロフロー」が大切

 しかし、Mさんは「そんなこといっても、『フロー』の状態になれるなんて、なかなかないんじゃないですかねえ」とけげんそうな顔です。

 実は、上記のような深い「フロー」ではない、浅い「フロー」の状態があるとされています。それは、テレビを見る、散歩をする、たばこを吸う、意味のない対話などの何げない行為の中にあり、チクセントミハイは「マイクロフロー」と名付けています。

 「マイクロフロー」は一見ぼーっとしているため、時間の浪費のように見えます。しかし、これは人間にとって活発さやくつろぎの源になっているようです。

 一般に外発的報酬を目指した活動は有効な時間であり、それ以外は無駄な時間と考えがちです。しかし、たとえぼーっとしている時間であっても、内発的報酬に基づいた「フロー」または「マイクロフロー」の状態であれば、精神的な満足感が得られ、次の活動のアイデアの源になるのではないでしょうか。こうした時間を「さぼっている」と罪の意識を感じながら過ごすよりは、積極的に楽しんだ方が良いということですね。

外部刺激に反応するだけではなく、内部の声に耳をすませる

Mさん 「ふーん……。結局、外側から何かを得ようとあくせくするばかりでは枯渇してしまう、ということかなあ」

カウンセラー 「そうですね。内側から湧いてくるエネルギーの力は、不思議に強いものがあるのではないでしょうか」

 外発的報酬を求めていると、常に自分の外側に注意を払わなければなりません。外側の刺激に反応することが続いていれば、自律性は失われていきます。

 はじめは小さなことでいいのです。「自分からしかける」ことが大切です。例えば、いつも誘われたら飲みに行く人なら、たまには自分から声をかけてみるとか、「手伝って」といわれる前に手を貸す、などです。

 わたしたちは、多くの人が競争しながらお金や地位、家や車を手にすることを目標にするような教育をされてきています。こうした動機が社会を動かしてきたことも事実ですし、個人が“それなりに”成功することができているのもこの外発的報酬のおかげかもしれません。

 しかし、もしMさんのように、なにか心が沸き立つような生き方や仕事人生を望むとしたら、「内発的報酬に素直に従うこと」がそのヒントとなりそうです。「自分の心の声」に耳を傾け、“いま、こうしたいからこれをやろう”と行動を起こすと、何かが違ってくるのではないでしょうか。

 そして、こうした心の声を聞く人がだんだんと増えていって、「フローなチーム」を作れれば、肉体的・精神的にきつい状況があってさえも心の満足度が高くなり、不思議と良い結果を生むことができるでしょう。その経験は、まさに「技術者として心沸き立つとき」となるのではないでしょうか。

※事例は普段の相談活動をアレンジしたものです。個人のプライバシーに配慮し、設定や状況は実際とは変えてあります。


参考文献

天外伺朗『運命の法則―「好運の女神」と付き合うための15章』飛鳥新社、2004年。

 Wikipedia 「フロー」


著者紹介

ピースマインド 石川賀奈美

臨床心理士、産業カウンセラー。米国フォーカシング・インスティチュート認定フォーカシング・トレーナー。現在、ピースマインドで成人を対象に幅広い相談に応じるとともに、定期的に企業に赴き、社員のカウンセリングを行う。高齢者虐待防止に関連し、在宅介護者のカウンセリングにもかかわっている。著書に『SEのためのうつ回避マニュアル 壊れていくSE』(翔泳社刊、分担執筆)がある。

「出口のないトンネルはない。しばし、一緒に光を目指して歩いていきましょう」



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