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» 2009年11月13日 00時00分 公開

転職活動、本当にあったこんなこと(29):「あのとき転職していれば」――転職しないリスク (1/2)

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。

[藤田孝弘,アデコ]

 転職をする場合、スキルアップや年収アップなどのメリットがあります。一方、新天地で仕事を始めるわけですから、リスクが伴うことを忘れてはいけません。では、転職をしないことがリスク回避になるのでしょうか? 答えは“否”です。転職をしない場合にもリスクが存在するということを忘れてはいけません。

 今回は「転職すること」のリスクと「転職しないこと」のリスク、そして「転職すること」「転職しないこと」がそれぞれ与える影響について、事例を交えてご紹介します。

 今回は、転職活動におけるさまざまな「タイミング」についてのお話です。

転職を成功させたあいつがうらやましい!

 渡辺さん(仮名)は35歳のシステムエンジニアです。大学卒業後、新卒で特定派遣型のSIer(システムインテグレータ)に入社。今年で12年目になるベテランエンジニアです。これまで、複数のプロジェクトでシステムの開発から運用・サポート・監視に至るまで、幅広い経験を積んできました。現在は契約先の大手SIerのメンバーとして金融機関のシステム部門に常駐し、システム運用に従事しています。

 これまで数々のプロジェクトに参画し、幅広い技術を習得してきましたが、主に詳細設計以降の実装や運用フェイズのサポート、追加開発が中心でした。派遣型で常駐することが多いため、上流工程での経験や、リーダーとしての経験はほとんどありませんでした。


 ある日、渡辺さんは、以前同じ常駐先で勤務していた後輩の田中さん(仮名)と話す機会があり、それぞれの近況について話をしました。田中さんは「念願の大手SIerに転職した」と告げました。当時、転職市場は活性化しており、キャリアアップの絶好のタイミングだったのです。田中さんの話を聞いて、渡辺さんは急にうらやましくなってしまいました。

 渡辺さんの転職への思いは募り、やがて本気で転職を考えるようになりました。ちょうど、5年近く運用のメンバーとして参画してきたプロジェクトの終焉(しゅうえん)が迫っていたのです。このタイミングを逃してはと、急いで転職活動を始めました。

「給与が落ちては転職する意味がない」

 渡辺さんが転職を考えたのはこれで2回目です。実は数年前、ITバブルの時期に転職活動を行ったことがありました。ITバブルはエンジニアにとって絶好のキャリアアップのチャンスでした。渡辺さんはプロジェクト終了に合わせて、大手SIerへ応募し、1社から内定の返事をもらうことができました。しかし、内定時の給与は、現職から50万円もダウン。

 「給与を下げてまで転職する意味があるのか?」

 「転職しても成功する保証はない」

 気持ちが揺らぐ中で、現職の上司や同僚から強く引き留められ、転職を断念したのでした。

市場価値はあるのか?

 渡辺さんはいまになって、「あのとき内定を辞退しなければよかった」と後悔し始めました。そして、かつてかなえられなかったキャリアアップを、今度は何とか実現したいと考えたのです。

 「年齢が高くなっている分、企業の要望も厳しくなっているはず」

 そう思った彼は、当時よりも多くの企業に応募しました。しかし、応募の結果は彼の期待に反し、不採用の知らせばかり。まだ転職市場が活発だったにもかかわらず、転職活動はうまくいきません。思い悩み、人材紹介会社に相談することにしました。

 複数のコンサルタントに相談したところ、誰からも似たようなことをいわれました。「リーダーとしての経験がない」ことと、「上流工程での経験が少ない」ことがネックになっている、という指摘です。具体的な求人を紹介されても、どの会社も彼の意向には合致しませんでした。

あのとき転職していれば……

 「あのとき、リスクを承知で転職をしていれば、こんなことにはならなかったかもしれない」

 渡辺さんは、ここにきて初めて「転職市場で評価されない自分」を自覚しました。

 その後の渡辺さんはどうなったのでしょうか。コンサルタントの勧めで、会社規模や給与条件を気にせず、キャリアパスを意識した転職活動を続けたのです。しかし、良い成果は得られませんでした。渡辺さんは現在も転職活動を続けています。

 転職市場が冷え込んでいる現在、応募できる企業が減少しているにもかかわらず、なぜ渡辺さんは転職活動を続けるのでしょうか。それには理由がありました。実は、5年近く続いたプロジェクトの打ち切りが決まったのです。次のプロジェクトが決まらず、渡辺さんは待機の状態が続いています。

 「このまま、待機が続くとどうなるのだろう」

 気が付けば、そんな不安を感じるようになっていたのでした。

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