アジア最大の求人サイトCEOが語る「優秀な人材」論海外から見た! ニッポン人エンジニア(3)(2/2 ページ)

» 2010年03月19日 00時00分 公開
[小平達也@IT]
前のページへ 1|2       

ニッポン人エンジニアの強みと弱み??優秀な外国人と共存する道

チャン氏 「優秀な海外人材を受け入れるべきかどうか」という「べき論」の議論自体はシンガポールのみならず、先進国ではすでに終わっているものです。むしろ、どこから、どうやって、という具体論が論点になっているのです。日本においても、産業をけん引していく優秀人材を1億2000万人の中から見いだすのか、世界60億人の中から見いだすのかによって可能性の広がりがまったく異なるものになるのではないでしょうか。


小平 わが国では、総合的な外国人受け入れ政策が未確立です。日本への海外人材受け入れを企業の人材マネジメントに例えると採用戦略、すなわちビザなどの出入国管理政策はあるのですが、活用戦略、すなわち「どう受け入れ、社会で活用していくのか」という社会統合政策がないという指摘があり、総合的な受け入れ政策に欠けている状態であるといえます。日本の産業を担う人材を1億人??しかも人口減少が始まっている中で一から輩出するのか、60億人の中から輩出するのかという点は大切な着眼点ですが、日本社会や日本企業における「外国人受け入れリテラシー」はまだまだ足りないのかもしれませんね。


チャン氏 そうですね。特に英語能力が課題ではないでしょうか。ジョブストリートのWebサイトをご覧いただければ分かりますが、アジア各国のホワイトカラー転職サイトの共通言語は英語です。英語は、ビジネス以前の最低限乗り越えるべき壁です。

 「海外」の視点から日本人エンジニアを見ると、高品質のモノづくりという部分は突出した強みとして認知されています。しかし、これはいわば会社としての団体戦であり、各エンジニアの顔は見えにくくなっています。一方、ITの分野では発想とスピードが要求され、個人の能力に多く依存します。グローバルで通用する日本人エンジニアが1人でも多く出てきて、アジア各国のエンジニアと一緒になって新しい産業をつくっていければ素晴らしいのではないかと思います。わたしの尊敬する松下幸之助氏という卓越した経営者を輩出した日本に、この点を期待しているのです。

●対談後記●

ITバブル崩壊後、世界中で多くのITベンチャーが脱落していきましたが、「ドットコムサバイバ?」との異名を持つチャン氏が経営をするうえで見習っているのが松下幸之助氏であるということに新鮮な驚きを持ちました。日本国内では「水道哲学」は高度経済成長が終焉(しゅうえん)を迎え、社会も成熟化した現在の日本に当てはまるのか、という議論もあるようです。しかし、利便性が高く、コストの安いサービスを提供することにより、すべての人に就業の機会を提供し、それが人々と社会の幸福につながるという考え方は新興国のサービス産業においても十分通用していることがよく分かりました。ある意味で、ニッポン人エンジニアがグローバルに競争力を持つためには海外の動向を適切に把握しつつも自分の足元をしっかりと見つめ、そこにある自らの強みを把握することも大切ではないかと思いました。


筆者プロフィール

小平達也(こだいらたつや)

ジェイエーエス(Japan Active Solutions)代表取締役社長

  • 厚生労働省 企業における高度外国人材活用促進事業 調査検討委員会委員
  • 国立大学法人東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター 養成プログラム アドバイザー
  • 早稲田大学商学部学術研究院 日中ビジネス推進フォーラム 特別講師
  • 武蔵野大学大学院ビジネス日本語専攻 非常勤講師
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会委(2007年度)

 大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。グローバルに特化した組織・人事コンサルティングを行うジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。



前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。