塚田朗弘「第一志望はいくらでもある」「勉強会に行け」ライバルに学べ! 学生スターエンジニアに聞く(6)(2/2 ページ)

» 2010年03月31日 00時00分 公開
[岑康貴@IT]
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SIerにもかっこいいエンジニアはたくさんいる

塚田 就職活動では、最初はSIerではなくパッケージソフトのメーカーに興味を持って、何社か受けていました。でも、あるソフトウェア企業の面接で気付いたことがあったんです。

 「受託開発だと、基本的に発注元の人だけに使ってもらうことが多くなっちゃうけど、自社の製品があると、多くの人に使ってもらえていいなあ」というくらいの気持ちで受けたのですが、面接で「なぜ?」を何度も聞かれて撃沈(笑)。「なぜ自社製品の企業がいいと思ったの?」「多くの人に使ってもらえるからです」「受託開発だって、多くのエンドユーザーに使ってもらえるよ? なぜ?」という具合で。

―― 「なぜ?」の連発に応えるだけの「軸」がなかったということでしょうか。

塚田 そうです。そこで、本気で「自分は何がしたいのだろう」と考えました。すると、次第に「お客さんの要求を聞いて、解決策を提示する仕事」という答えが出てきました。お客さんから直接、レスポンスやフィードバックがある仕事をしたいんだな、という結論が出てからは、SIerを中心に受けるようになりました。

―― SEの仕事に魅力を感じたのですね。

塚田 プログラミングが好きな学生の間では「ハッカーがかっこいい」「Web企業がかっこいい」というイメージがあると思うんです。逆に、SIerはちょっとイメージが良くない。僕はこの抵抗をなくしたいですね。いわゆるギークっぽいプログラマや、そういう人が集まる企業がかっこよくて、SIerがかっこよくない、と決め付けてしまうのはナンセンスですよ。SIerにだって、かっこいいエンジニアはたくさんいるじゃないですか。例えば、ひがやすをさんとか。gothedistanceさん(ブログ「GoTheDistance」を執筆するブロガー)も、もともとはSIerだし。

 それに、かっこいいエンジニアって、コードを書くだけじゃないと思います。もちろんコードも重要だけど。『入門Git』という本を書かれた濱野純さんが、「小飼弾のアルファギークに逢いたい」で、リーナス・トーバルズ氏(Linuxカーネルの開発者。Gitを開発したのもリーナス氏)は“コミュニティマネージャ”として人を使うのがうまいということをいっています。マネジメントも重要ですよね。

―― 確かに、SIerで頑張っているかっこいいエンジニアはたくさんいますね。ちなみに、就職活動はどれくらいの期間、続けましたか。

塚田 11月から12月くらいは、いわゆるセミナーに出席していました。年が明けて、2月中旬ごろから本格的に会社説明会に出席し始めました。最終的に36社受けて、4月始めごろには4社から内定をいただき、そのうちの1社を選びました。1日に3〜4社回るのはざらでしたね。

塚田さんの「2つの軸」

―― さて、4月からエンジニアとして働き始めるわけですが、どのようなエンジニアになりたいですか? この連載で登場していただいた5人は、皆さん自分自身の「軸」を持っていました。塚田さんの「軸」は何になるのでしょう。

塚田 しばらくはPHPをより深く勉強していこうと思っています。卒業制作でこの1年間よく触ったCakePHPというPHPフレームワークについても、もっと理解を深めていきたいですし、いま参加している「EC-China」や「SetucoCMS」というプロジェクトでも、PHPを使って開発しています。

 いま考えているのは、2つの軸でやっていきたい、ということです。SEとしては、「どんな案件でも先入観なく、好きになってしっかり取り組む」エンジニアになりたいなと考えています。いま読んでいる『情熱プログラマー ソフトウェア開発者の幸せな生き方』にも、「いまの職務を全力で」という言葉があるんですが、まさにそれです。

―― 例えば、技術的にはあまり面白くない案件でも……。

塚田 それでお客さんがハッピーになるのであれば良い。同時に、同僚もハッピーになれば良いと思います。

 もう1つの軸は「勉強会」です。学生にIT勉強会の面白さを伝える活動をしてきましたが、会社に入ってからも、そうした社外活動は続けたいと思っています。

―― それについて、会社はなんといっていますか?

塚田 ウェルカムみたいです。自分が勉強会に参加したり、主催したりするだけでなく、会社の会議室を勉強会の会場として貸すなどの支援もやっていきたいですね。

塚田さん 「SEとして働きながら、勉強会の活動も続けていきたい」

学生に勉強会を!

―― 勉強会の話が出たので、そろそろその話をしましょうか(笑)。塚田さんといえば勉強会、というくらい、学生に対する勉強会の啓蒙活動が有名な塚田さんですが、いつごろから勉強会にかかわるようになったのでしょうか。

塚田 最初は専門学校で2年生のころ、2008年ですね。学校の課題で.NETについて調べる必要があって、検索したら、やけに「わんくま同盟」のWebサイトがヒットしたんですよ。なるほど、勉強会というものがあるのかと思って、参加するようになりました。

―― 最初から積極的にかかわっていったんですか。

塚田 そんなことないですよ。最初は3カ月に1回くらい、それもただ話を聞きに行くだけ、という感じでした。懇親会にも一切、出ませんでしたし。周りは大人ばかりでしたしね。

―― 塚田さんにもそんな時代が(笑)。いつ、どんなきっかけで変わったのですか。

塚田 2009年4月に、電設部という学校非公式のサークルのようなものに入ったのがきっかけです。僕が入る前はまだ人数も少なくて、自分たちでサーバを立ててみたりとか、そういう活動をしていました。僕が入ったあと、先生と「勉強会ブームだし、絶対有意義だから、電設部としてどんどんかかわっていこう」ということになって、僕がその担当になったんです。勉強会に参加して、さらに自分たちでも開催する、というのが活動内容でした。

 当時、わんくま同盟の勉強会に出ていて、「みんな楽しそうだけど、僕ももっと楽しみたいなあ。もっと積極的に参加したいなあ」と思っていたので、いい機会だとばかりに勉強会への参加を増やしました。IT勉強会カレンダーを見て、「DEBUG HACKS NIGHT!」や「カーネル読書会」に参加したり、もじら組のパーティーに足を運んだり。「DEBUG HACKS NIGHT!」でKwappaさん(東京Basic Technology勉強会の主催者)と出会って、Kwappaさん自身も登壇する「勉強会カンファレンス」に誘っていただきました。その懇親会会場で、岑さんに声を掛けたわけです(笑)。

―― つながりましたね(笑)。現在は電設部主催の勉強会も開催していますよね。

塚田 学内では24回、学外に公開するものも先日、第3回を開催しました。僕は主催の中心となって活動しました。

 コンセプトは「学生に勉強会を」です。電設部はけっこう人が増えたのですが、後輩に「勉強会の良さ」を言葉で伝えるのが大変でした。実際に参加してもらうのが一番なんです。自分たちで主催してしまうのが一番の近道でした。

勉強会は「現役エンジニアの忌憚のない言葉が聞ける」

―― 言葉で伝えるのは難しい、というのはわたしも同意しますが、あえてお聞きします。技術系学生として、勉強会に参加したり、勉強会を主催したことで、どんな変化や影響がありましたか。

塚田 それはもう、岑さんとお会いしたことが……(笑)。

―― いえいえ、そういうのはいらないです(笑)。

塚田 僕自身は就職活動が終わったあとで勉強会に参加するようになったのですが、これから就職活動をする人や、就職活動中で悩んでいる人も、もっと勉強会に参加すると良いと思います。それはなぜかというと、「現役エンジニアの忌憚のない言葉が聞ける」からです。

 確かに、学校でも産学連携でプロジェクトを体験するなどの授業はあるでしょう。でも、やっぱりリアリティが全然違います。実際の現場で働いているエンジニアの方々の言葉を聞くだけで、授業で学ぶことの吸収度も段違いになると思うんですよ。

 それに、将来とか、就職活動で悩みがあったら、自分でちまちま考えるより、実際に働いているエンジニアの方に話してしまうのが一番良い。みんなもっと勉強会に行くべきです。

 ただし、勉強会での出会いから就職が決まる、というケースはほとんどないと思いますので、その点はご注意を……。たまにありますけど、ほとんどありません。

―― それを期待して参加するのは間違い、ということですね。

第一志望はいくらでもある

―― それでは最後に、就職活動中の技術系学生に向けてメッセージをお願いします。

塚田 まず前提として、就職活動は本気でやってみてください、ということですね。周囲の学生と話をしていると、どうも本気に見えない人がいるんです。全部で10社とか、1日1〜2社とか、全然少ない。本気なら、もっといけるでしょ、と。

 それから、「落ち込んだら負け」です。第一志望に落ちたら、落ち込むかもしれませんが、落ち込んだら負けです。第一志望に落ちても、すぐに「次の第一志望」が見つかります。第一志望はいくらでもあるんです。僕自身、4月から働く会社は「5個目の第一志望」ですから。

 あとは、繰り返しになりますが「勉強会に行こう」ですね。


 塚田さんによる連載はこれで終了となりますが、連載「ライバルに学べ! 学生スターエンジニアに聞く」自体はこれからも続けていきたいと思います。技術が好きで、同年代の学生スターエンジニアにどんどん突撃取材をしてくれる行動力のある学生記者を募集していますので、興味のある方はご連絡ください。


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