【転職市場動向】あふれるPGとSEはどこへ行くのか?特集:岐路に立つIT技術者たち(2)(2/2 ページ)

» 2010年05月11日 00時00分 公開
[金武明日香@IT自分戦略研究所]
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SI技術者がWeb系企業へ転職することは可能か?

 そんな中、「SI業界で動きがないなら、動きがあるところへ」と、SI企業からWeb系企業への転職を選択する人が増えてきた。2010年になってから、すでに何人もの転職成功者が出てきているという。

 面接では、どのようなポイントが見られるのだろうか。鈴木氏によれば、Web系企業の採用担当は「開発手法と考え方の違い」を最も気にするという。特に大きいのが「Webサービス開発のスピード力についてこられるかどうか」。多くのWeb系企業では、SI企業のようなウォーターフォール式を採用していない。そのため、「『設計書がないと開発ができない』という人は、Web系企業では通用しづらい」と、鈴木氏は語る。技術や言語の違いよりも、この「考え方」の違いがネックとなるらしい。

 そしてもう1つのポイントが、前述した「Webサービスそのものへの強い思い」だ。Webサービス企業であれば、会社のWebサービスを使い倒していることは当たり前で、「どういうものが作りたいか」という意欲を求められる。また、もし内定した場合、すぐに現場で働くことになるため、常に独学してキャッチアップするための学習能力と根気が必要とされる。

 SI企業で働いてきたエンジニアがWeb系企業に転職するのは決して簡単な道のりではないが、若手であれば十分チャンスがあるという。「Webサイト構築経験」があったり、「BtoCサービスにかかわった経験」があれば、なおよい。

 もちろん、志望動機がしっかりしていることは必須である。「SI出身の技術者であれば、『火を噴いた案件をスピード解決した』『新しい技術を独学で習得した』というアピールは効果的ではないでしょうか」と、江川氏はアドバイスする。

転職市場が回復するのは早くても2012年以降

 転職市場に動きは出てきているが、まだ「回復」という状況ではない。それでは、転職市場が「本当に回復した」といえるのは、いつごろになるのだろうか?

 江川氏は、「現在、メーカー企業の業績が徐々に回復しつつあります。メーカーの回復を受けてIT投資が回復し、そこから半年後ぐらいに転職市場が回復する。この流れでいけば、転職市場が回復するのはどんなに早くても2012年ぐらいでしょう」と予測している。

 一方で「景気が回復しても、転職バブルは二度と来ない」と、2人のコンサルタントはそろって語る。

  理由はさまざまあるが、SI業界に限っていえば「一からシステムを手で組む」ことが少なくなってきたことが挙げられる。新規開発案件はこれからも一定数出てくるだろうが、これまでのように「人数を雇って大規模開発を行う」という流れは戻ってこないだろう、と、江川氏は見ている。

 案件数が減れば必要な人数は減る。これは当然だ。しかも同時に、エンジニアは国際競争にさらされている。鈴木氏によれば、中国やインドのエンジニアの技術力が数年前に比べて向上したことと、コスト削減の要求を受けて、企業はもう一度オフショアへの期待を高めているという。

 「数年前にオフショアが流行した際は、コミュニケーションがうまくいかず、結局は日本人エンジニアに戻るという流れがありました。しかし、いま再びオフショア開発への期待が高まっているように思います」(鈴木氏)


 「転職市場が回復するのは2012年以降。しかし、転職市場が完全回復したとしてもこれまでのような状況は期待できない」という。では、すでに別の道を模索している人は、どのように動いているのだろうか? 次回は、DeNAでマネージャと技術者採用を務める能登信晴氏に、「SI業界からWeb業界へ転職」する際に求められる考え方やスキルを聞く。


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