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» 2010年08月23日 00時00分 公開

IT業界 転職市場最前線(16):【転職市場】LAMP人気続く。SIerにも回復の兆し

不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。

[ワークポート]

 ソーシャルメディアやソーシャルアプリの隆盛によって、転職マーケットでも関連求人がにぎわいを見せている。iPhoneやiPadといった新デバイスの登場も、市場に活況を呼び込んでいる。

 ただし、こうした求人の多くは、募集開始から採用決定、募集終了までの期間が短いため、いかに素早く情報をキャッチできるかが、転職の可能性を広げるための大切な要素といえる。

 一方、応募条件を引き下げたり、若手のポテンシャル採用枠や大量採用枠を設ける企業が現れるなど、求職者にとっては好材料が見られるようになった。

 一部のスキル・経験保有者にニーズが集中しているものの、これまでは低迷が続いてきた分野でも少しずつ回復の兆しが見え始めている。今後の動向に注目したい。

Web業界

 Web業界の転職市場はにぎわいを見せている。WebエンジニアやWebデザイナー、Webディレクターの採用が活発なほか、Webアナリスト、マーケットリサーチ、サイト運用スタッフなど、幅広いポジションで新たなニーズが発生している。

 また、中小ベンチャー企業の積極的な採用が目立つ。中小規模の企業では、大手企業よりも選考スピードが早い。いかに素早く新規の求人情報をキャッチアップし、迅速に応募につなげるかが、転職成功の鍵を握っている。

エンジニア:LAMP人気が続く。SIerからWeb企業への転職事例も

 LAMP(特にPHP)経験者の人気が非常に高い。経験年数によって差異はあるものの、20代では40〜50%、30代でも30%以上の書類通過が見込める(ワークポート調べ)。これは、平均的な書類通過率のおよそ1.5〜2倍の数値だ。

 ソーシャルアプリが勢いを増す中、PHP、Perl、Java、Objective-C、Flash(ActionScript 2.0、3.0、Flash Lite)などでの開発経験を持ち、「よりエンターテインメント性の高いコンテンツ開発に携わりたい」という人にとっては、転職の好機といえる。これらのスキルを生かして、システムインテグレータ(SIer)からWeb企業へ転職を果たすケースが増えている。

クリエイター:微増ながら上向き傾向。デザイナーのポテンシャル採用も

 Webデザイナーの求人は、微増ながらも回復傾向が続いている。ただし、デザイン経験だけでなく「Flash経験」や「ディレクション経験」などを複合的に求める企業が多い。ソーシャルアプリの隆盛が続く中、Flash(ActionScript)のスキルは重要な要素の1つである。iPhoneやiPad向けのUI(ユーザーインターフェイス)デザイナーなども、今後の注目ポジションといえるだろう。また、7月以降、ポテンシャル採用枠での募集が見られるようになった。

 ディレクター職でも、ニーズは上向き傾向が続いている。業種・業態・企業規模などによるニーズの偏りはなく、EC系サイト、エンタメ系サイト、情報サイト、コーポレートサイトなど、幅広い分野でニーズが見られた。

モバイル業界

 これまでの主流であった、公式サイト関連での新規求人は減少傾向にある。各社が新しいプラットフォームへの参入に力を入れ始めたことにより、求人の傾向も徐々にシフトしている。

 また、一部のソーシャルアプリケーションプロバイダからは「英語力」をプラス評価とする求人が発生している。海外(主にアメリカ)との連携を図るために、英語力が重要な要素となっているようだ。評価対象となる英語力は各社によって異なるが、おおむね「TOEIC 600点前後」が目安。技術力や経験が十分でなくとも、英語力が助けとなって書類選考を通過するケースが見られる。

エンジニア:LAMP経験者の獲得競争が激化。応募条件の緩和が広がる

 LAMP開発経験者を中心としたエンジニアの採用が活発であり、7月以降は「応募条件の緩和」が見られるようになった。モバイルコンテンツ事業者、スマートフォン向け開発事業者、ソーシャルアプリケーションプロバイダの採用意欲は衰えることがなく、各社の求める人材像が非常に近いことから、採用競争が激化している。

 時勢の変化が早いモバイル/ソーシャルアプリ業界において、「作り手」の採用は急務だ。確実に人材を確保するため、応募条件の緩和や採用手法の多様化が今後も広がるだろう。

クリエイター:Flash経験者は年収アップのチャンス

 リッチコンテンツの開発を目的に、応募条件を「Flash Lite経験者」とする求人が続々と現れている。しかし、Flash経験者は市場にさほど多くはなく、採用に難航するケースが見られる。

 このため、LAMP経験者の採用動向と同様に、Flash経験者の採用においても今後は応募条件が緩和に向かう可能性がある。Flash経験者にとっては転職成功の可能性が非常に高まっており、不況下においても年収アップが望めるポジションといえる。

プランナー/ディレクター:ソーシャル分野は転職の好機

 プランナーやディレクター職においても、「ソーシャルゲームプロデューサー/ディレクター」一色といえる。企業側は特に、同業他社からの転職人材を採用したい意向のようだが、そうした人材の流出は少ない。ソーシャル分野へのチャレンジを考えている求職者にとっては、転職の好機といえる。

システム業界

 システム業界の採用ニーズは回復基調にあり、ハードウェア業界、SIerからのニーズが上向いてきた。求められる開発言語はJavaや.NETが主流であり、C、C++、VBなどの求人は低迷が続いている。また、本格的な回復には遠いが、これまではほとんど見られなかった組み込み系人材の募集を開始する企業が現れた。

自社プロダクト系:ハードウェアメーカー、モバイル系組み込み分野でニーズ回復の兆し

 低調が続いていたハードウェア業界に、ようやく回復の兆しが見え始めた。ハードウェアメーカー各社が黒字に転換したことにより、採用活動に取り組む動きが見られたのである。募集職種は「エンジニア系」「営業系」が大半を占める。同じ「エンジニア系」「営業系」の中でも、商材や経験業界(自治体向け・海外向け・医療向けなど)によって細かく求人内容(ポジションなど)が分かれているのが特徴といえる。ただし、求められる経験・スキル要件は高く、内定を得るのは容易ではない。

 ソフトウェア業界では、前月比で10%の求人数増加が見られた。ソフトウェア業界における求人の主流となっている「セキュリティソフト」や「ERPパッケージソフト」関連求人に大きな変化はないものの、新たに「組み込み開発経験者」を求める求人が増え始めている。スマートフォンなど、モバイル分野で組み込み開発のニーズが回復しつつあるようだ。

SIer:特定分野のPL/PM経験者はニーズが回復傾向。プログラマは苦境

 SIerについては、前月に引き続いての求人増となった。Web系エンジニアの求人ニーズが堅調に伸びていることに加え、組み込み系エンジニアの求人が増加している。C、C++などによる携帯電話向けの開発エンジニア職のほか、COBOLエンジニアの求人もわずかながら発生した。

 大手SIerでは特定の業界知識・経験が求められる傾向が強く、特に金融・医療・通信・公共分野の求人増加が目立つ。これらの業界向けプロジェクトにシステムエンジニアやプロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャとして携わった経験者は、大手SIerに転職できる可能性が高まっている。ただし、マネジメント経験を求める求人が大半を占めるため、プログラマ経験しか持たない求職者はいまだ厳しい状況を脱していない。

インフラエンジニア:求人数は微増。若手には苦境が続くも、チャンスは広がりつつある

 求人数は微増傾向が続く。自社サービスを運営する事業会社が、インフラ強化のためのエンジニア採用に力を入れている。また、大手メーカーとつながりのある2次請けネットワークインテグレータ(NIer)からの求人がわずかに回復した。経験の浅い若年層にはいまだ苦境が続いているものの、一部では「若手であれば、運用のみの経験でも応募可能」という求人も登場している。設計・構築へのキャリアを描いている20代のエンジニアには、少しずつチャンスが広がっている。

ゲーム業界

 ソーシャルアプリによるゲームマーケットの活性化により、ベンチャー企業からの採用ニーズが高まっている。ソーシャルアプリは少人数で制作が可能であり、参入障壁が低い。また、ある程度のユーザーを確保することでビジネスとして成り立つだけでなく、ヒット作ともなれば大きな利益が期待できる。このため、多くのベンチャー企業がソーシャルアプリへの参入を開始しており、採用ニーズが拡大している。

ソーシャルゲーム:Objective-Cのニーズ高まる。独学も評価対象に

 ソーシャルアプリマーケットの勢いは衰えることなく、求人数は増え続けている。特に多いのはエンジニア職であり、LAMP開発経験のあるWebエンジニアやモバイルエンジニアのニーズが非常に高い。

 また、最近ではiPhoneアプリ関連の開発求人が目立つようになった。Objective-Cによる開発経験者が非常に少ない中、「入社後に育てていこう」という企業からの求人が増え始めている。Objective-Cは実務経験者の絶対数が少ないため、プライベートでの開発経験なども選考時の評価対象となることが多い。

 ディレクターやプロデューサー職においては、これまで「ソーシャルゲーム未経験でも可」とする求人が多かったが、ソーシャルゲームの経験者が増えつつある昨今では、経験者に絞った募集へと切り替わる可能性が高まっている。コンシューマゲーム業界からソーシャルゲーム業界への転職は、早めの決断が必要だ。

コンシューマゲーム:採用ニーズは停滞。求人があっても選考ハードルは高い

 ソーシャルアプリに比べ、コンシューマゲームの採用は勢いに欠ける。求人数においても、ほとんど増減がない状況だ。採用停止には至らないまでも、いわゆる通年の採用を続けるにとどまっており、募集はあるものの選考ハードルは高いのが実情だ。

営業:積極的な採用に向けた取り組みが目立つ

 営業関連求人は増加傾向が続いている。これまではWeb広告企業やWebマーケティング企業からの求人が転職マーケットをけん引する格好だったが、7月は多岐にわたる企業・業種から新規の募集が開始された。欠員補充のための募集は少なく、業績好調を受けた計画的な増員であるケースが多い。

 また、中途採用マーケットの回復に伴い、応募条件を緩和する動きが見られた。業界や商材を限定せず、幅広く優秀な人材を募る企業も現れている。求職者にとっては、応募しやすい環境になりつつあり、新たな業種・業態へチャレンジできる可能性が広がっている。

 前月までと比較し、企業向けサービスを提供する企業からの求人や、ソーシャルメディアなどへの参入を視野に入れた新規事業立ち上げ要員としての募集が目立つようになった。

 より多くの人材を確保するため、5〜10人程度の転職希望者を集め、1次面接を兼ねた説明会を実施する企業が増え始めている。こうした説明会の増加は、同一ポジションで複数名採用を行う企業が増えた証しであり、転職市場の回復を示すものといえる。


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