連載
» 2011年03月23日 00時00分 公開

仕事を楽しめ! エンジニアの不死身力(11):未曾有の災害を前に、いまエンジニアができること (1/2)

あなたはエンジニアの仕事を楽しんでいますか? この連載では、仕事を「つらいもの」から「楽しいもの」に変えるためのヒントを考えていきます。

[竹内義晴,特定非営利活動法人しごとのみらい]

 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生しました。多くの方の尊い命が失われたことに、深い哀悼の意を捧げます。また、被災された皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。一刻も早い復興を願ってやみません。

“1人の生活者として”から、“1人のエンジニアとして”できることへ

 日本最大規模の揺れ、予想をはるかに超えた津波、次々に襲い掛かるさまざまな課題――被災地では、道路や水道、電気にガス、通信手段など、さまざまなインフラが寸断されました。報道ではあまり大きく取り上げられませんが、多くのITエンジニアの皆さんも、きっと奔走されていることと思います。

 「いま、1人ひとりがやれることをやろう」……震災発生直後から、1人ひとりができることが問われました。募金やヤシマ作戦(節電)、ウエシマ作戦(買い物は必要最小限にとどめて譲り合う)など、人々はそれぞれの立場で「いま、できること」をやっています。このような非常事態でも、心を1つにして励まし合って冷静に対処する姿勢が、海外のメディアでも大きく取り上げられていることは皆さんもご存じのとおりです。

 震災発生からいままで、私たちは“1人の生活者”として、未曾有の災害を乗り越えようとしてきました。さらに、意思あるエンジニアの中には、“1人のエンジニア”としてできることを模索している人もいらっしゃることでしょう。

そこで今回は、未曾有の災害における「ITエンジニアとしていま、やるべきこと」をテーマとして取り上げます。

協力したい! でも、どうしたらいいか分からないという人は多い

 連日、メディアから報道される被災地の状況を見て、「自分にも何かできることがあれば協力したい」と思っているエンジニアはたくさんいらっしゃると思います。

 ボランティアといえば、「被災地に出向いて、被災者のために行動をすること」というイメージがあります。「被災地でサーバを立ち上げて、被災者情報を検索できるようにできないか」「けれども、被災地に直接出向くことはできないし、大体、サーバもない」――「1人のITエンジニアにできることはあるのか」を考えたとき、何も協力できない自分に、無力感やいら立ちを覚えているという方もたくさんいると思います。

 被災地の前線で社会的なインフラを復興させるためには、さまざまな物資と大量の資金が必要です。そのインフラが整わなければ、被災地でITエンジニアができることは限られます。

 けれど、被災地の前線で行動することだけが、ボランティアではありません。いま、こうしてインターネットを見ている場所なら、コンピュータはあるし通信環境もすでにあります。現在では、ストレージも必要なシステムも、大抵のものはクラウド上にあります。

 ITエンジニアが活動をするインフラはすでに整っています。あと、必要なのは、「一歩踏み出す勇気」なのかもしれません。

さまざまな問題を解決する、意思あるエンジニアたち

 エンジニアが自ら立ち上がり、「いま、できること」でさまざまな難局を切り開いている事例をご紹介しましょう。

 私の知人に、相羽大輔さんというエンジニアがいます。相羽さんは、Amazonのクラウドサービス「Amazon Web Services(以下AWS)」の中にある、「AWS Japan User Group(通称 JAWS-UG)」というユーザー会に参加しているエンジニアです。

 JAWS-UGでは、AWS側からの呼び掛けで震災直後から復興支援を行っています。地方公共団体や企業など、被災による直接的な被害を受けたサーバ、報道で紹介されたことによってアクセスが困難になってしまったサーバを、クラウドの基盤を利用して復旧させたり、被災地からの情報発信に使うCMS(コンテンツマネジメントシステム)をインフラ付きで無償提供したり、CMSを使って被災地の対策本部からの情報を集約したりしています。

 クラウドやWebのユーザー会は横のつながりも強く、相羽さんたちの取り組みに賛同した各企業が支援の名乗りを上げて、現在、協力しながら活動しているそうです。メディアでも取り上げられているので、活動をご存じの方もいらっしゃるでしょう。この取り組みに対して、政府からも公式情報の拡散依頼が入るようになったそうです。

JAWS-UGの相羽さんに聞いてみた

 JAWS-UGのメンバー構成をお伺いしたところ、会社が法人として活動にコミットし、社員がオンタイムで活動しているところもあるそうですが、個人が業務後の夜や週末を使って参加している人もいて、多くの人が通常業務の合間で作業しているそうです。実際、相羽さんもオフタイムの活動なのだそうです。

 つまり、「1人ひとりが自分の持つスキルを持ち寄り、自分ができることをしている」のです。  

 相羽さんに、プロジェクトに関わっている感想をお伺いしました。

 「プロジェクトでつくったサービスが利用されて、実際に被災者支援につながっているのを見ると、大きな達成感を感じます。他のメンバーとのつながりを持てているのがうれしいですね。そして、AWSをはじめとしてクラウドコンピューティングの技術の可能性を近くで実感できたり、いろいろなサービスを活用して、離れたスタッフとの共同作業を効率的に行うためのノウハウが分かることが収穫になっています」

 また、続いてこんなことをおっしゃっていました。

 「優秀なリーダーの仕事ぶりが素晴らしく、ボランタリースタッフへの気遣い、緊急時のプロジェクトマネジメントの模範例など、学ぶことがたくさんあります。いつか、プロジェクトマネジメントの側面から、この活動が取り上げられるといいなと願っています」

 相羽さんの言葉を聞いて、「ボランティアの域を超えて、活動がやりがいに変わっている」と感じました。

 いま、JAWS-UGでは、キャッシュサーバの設置やアクセスが集中しているサーバをクラウド上に移転させるなどの負荷対策を行っているようです。興味がある方は、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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