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» 2011年04月08日 00時00分 公開

ストレージ仮想化の体系的理解(3):スケールアウト型ブロックストレージの基礎 (2/2)

[桂島航,デル株式会社]
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4. ストレージプールの先進的な管理機能

 スケールアウト型ストレージを使うことの利点は、論理的なストレージプールを作れるだけでなく、そこに組み込まれた先進的な自律管理機能が使えることにある。仮想化によりユーザーから物理構成を隠蔽しているため、ユーザーに影響を与えずにシステムが内部で最適化処理を行うことが可能になるのである。本節では、そういった自律管理機能のうち代表的なものをいくつか説明しよう。

 なお、本節では、ところどころで技術を詳しく説明するために、デルの製品であるEqualLogicの動きを例に取り上げている。機能に関しては実際の動きをベースに説明した方が理解しやすいところもあると考え、このような構成とさせていただいた。スケールアウト型ブロックストレージは市場にいくつか製品があり、それらのアーキテクチャには差異があるが、機能には多くの共通点がある。今回の解説に基づいた基礎知識があれば、他のスケールアウト型ストレージを理解するうえでも役立つはずだ。

自律的な容量バランシング

 代表的な自律管理機能の1つは、ストレージプールを構成しているノードの空き容量をシステムが自律的にバランスさせる容量バランシング機能である。この機能により、ノード間で自動的に空き容量がバランスされるので、物理的なノードの空き容量ではなく、“論理的なプールとしての空き容量”のみを管理者は監視すればよい。管理者は、システムをより効率的に監視することができるようになる。

 EqualLogicを例に、少し具体的な動きを説明しよう。ユーザーがボリュームを作るときには、ストレージプールを選択するとともに、データに求められる信頼性のレベルを指定する。EqualLogicではRAIDタイプを指定する。システムは、ユーザーから指定された信頼性レベル(RAIDレベル)に合致したページをストレージプール内から探し、各ノードの空き容量がうまくバランスするように、ボリュームにページを割り当てる。

図5 容量バランシングの動き (ボリューム作成時) 図5 容量バランシングの動き (ボリューム作成時)

 もちろん、ボリュームの削除・移動などで空き容量の不均衡が発生した場合には、システムはデータの再分散を行って不均衡を解消する。シンプロビジョニングでの追加割り当てや、スナップショット・レプリケーションでの容量消費などで不均衡が発生した場合も、同様にデータの再分散が行われる。このように、システムは絶えず各ノードの空き容量を監視しており、ストレージプールを構成しているノードの容量をうまく使いきるように、自律的な容量バランシングを行う。

ポリシーベースのリソース管理

 自律管理機能でもう1つの重要な機能は、ユーザーが与えたポリシーをベースにシステム側が自律的な管理を行う、ポリシーベースのリソース管理機能である。決まりきった形でリソースの管理を行うのではなく、ポリシーという自由度の高い形でシステムに指示を与えることで、システム側での最適化の余地を大きくとることができる。

 ポリシーベース管理にはいろいろな機能があるが、ここでは具体的な例として、EqualLogicの「RAID Preference」という機能について解説しよう。

 EqualLogicのRAID Preferenceでは、ボリューム作成時に「preference(希望)」という形でRAIDタイプをシステム側に伝える。システム側はその「ポリシー」をベースに、どのRAIDグループからページを割り当てるかを自身で判断する。

 具体的には、希望が受け入れられる場合(つまり、システム内に希望のRAIDタイプの空き容量が用意できる場合)には、そこからページを切り出してボリュームを生成する。しかし、該当するRAIDグループに空き容量がない場合には、異なるRAIDグループの空き容量を使ってボリュームを生成する。もちろん、RAIDタイプを決めうちで設定することも可能だが、このようにポリシーという形でシステム側に指示を伝えることで、システム側が状況に合った適切なアクションを自律的に採るような動きをとらせることができる。

図6 ポリシーベース管理の例―EqualLogicのRAID Preference設定 図6 ポリシーベース管理の例―EqualLogicのRAID Preference設定

ノード追加・削除の自動化

 ノード追加作業の自動化は、ストレージプールの自律管理機能でも基本的な機能の1つである。新規ノードのセットアップが終わると、新規ノードは自動的にストレージプールに組み込まれる。そして、上記で説明した容量バランシングが作動し、既存ノードにあるデータが新規ノードに自動的に移動される。これらの一連の作業はサービス無停止で行うことができる。従来、サービスを停止して、手動でデータを移動させていたころに比べると、ノード追加作業は格段に容易になる。

 ノードの削除も同様に簡単である。ノードの削除をGUIから指示すると、そのノードのデータをシステムが自動的に他ノードに移動し、その後にそのノードを削除する。もしノードを異なるハードウェアに置換したい場合には、この削除機能を使って容易に置換が可能である。

図7 ノード追加時の動作 図7 ノード追加時の動作

 また、ノード追加に関しては、新規ノードのセットアップを容易にするツールが製品とともに配布されている場合も少なくない。このツールと自律管理機能を組み合わせることで、ストレージプールの拡張が簡単かつ迅速に行えるようになっている。

 どれぐらいノード追加が簡単なのか、EqualLogicのケースを例に説明しよう。EqualLogicでは、Remote Setup Wizardというツールが付属しており、このツールを使うことで同一サブネット上にある電源の入った新しいノードを自動検出することができる。従来だと、ストレージ装置をセットアップする際には、シリアルケーブルなどを介してコンソールからログインし、IPアドレスなどの基本的な設定を行う必要があるケースが多かったが、EqualLogicではこういったコンソールからの作業は必要なく、ネットワーク越しにツールからボタン一発で認識を行うことができる。

 IPアドレスの設定などは全てウィザード形式で行われるので、その指示に従って情報を入力するだけでよい。ウィザードの最後で、その新規ノードを組み込みたいグループを指定すれば、それで設定は終了である。その新しいノードは自動的にグループに組み込まれ、GUIからシステムの一部として管理できるようになる。そしてGUI上でRAIDタイプを指定すれば、新しいノードへのデータの移動が自動的に始まる。

マルチテナント管理

 いままでストレージプールの利点を挙げてきたが、単一の論理的なストレージプールを作り出せば全ての要件にフィットするかというと、そうとも限らない。組織が複数あったりすると、セキュリティ管理者やポリシーが組織間で異なるため、単一のストレージプールでは対応がしにくくなってしまうことがある。

 そういった場合、従来では複数のストレージ装置を用意し、セキュリティ管理を分離していた。ただ、スケールアウト型ストレージでこのような使い方をするとその利点をそいでしまうことになる。

 そのため、多くのスケールアウト型ストレージでは、こういった要求を満たすために、システム内に複数のストレージプールを作ることができる機能を持っている。こうすることで、組織ごとに異なるストレージプールを割り当て、それぞれにおいて異なる管理者が異なるポリシーでストレージシステムを運用することを可能にしている。プール間でのボリュームの移動はオンラインでできるので、もし組織の変更があっても対応は可能である。

 ストレージプールだけではなく、ボリューム単位でも管理者を別途設定することができる製品もある。こうすることで、組織の中でさらに細かく管理権限を委譲できるようになる。スケールアウト型ストレージは拡張性に優れる分、多数のホストから共有される場合が多いので、このようなマルチテナント管理を実現するための機能が重要になる場合が少なくない。

図8 ストレージプールによるマルチテナント管理 図8 ストレージプールによるマルチテナント管理

4. 次回以降の予定

 今回の記事では、スケールアウト型ブロックストレージのコンセプトと、ストレージプールに関連する機能と技術について主に解説した。次回以降は引き続き、ホストからストレージプールへの接続の最適化など、スケールアウト型ブロックストレージについてより詳しく解説していくとともに、自動階層化などの機能を取り上げていく予定だ。


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