技術や製品の調査報告書では特に結論を簡潔に文章コミュニケーション・リファクタリング!(5)(3/3 ページ)

» 2011年07月06日 00時00分 公開
[谷口功@IT]
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調査結果は簡潔に記述する

 「調査結果」の項目には、細かいことは書かずに、調査を依頼した人の疑問に答える形で簡潔に記述します。

以下に、調査項目ごとの結果を記述します。
●調査区分1
 ・調査項目A <調査結果の記述>
 ・調査項目B <調査結果の記述>
      :
●調査区分2
 ・調査項目M <調査結果の記述>
 ・調査項目N <調査結果の記述>
    :
<以下、すべての調査区分の調査項目すべてについて、1つ1つ調査結果を記述>


 上記の例では、調査項目ごとに、詳細に結果を並べています。しかし、顧客、特に上級管理職や経営陣が知りたいのは、総合的な調査結果です。言い換えれば、顧客の期待通りであったかどうかということです。1つ1つの調査項目の結果や、それぞれの詳細な結果には興味がないでしょう。そこで、すべての調査結果を総合的にとらえるとどのような結果になるのかを記述します。1つ1つの調査項目の結果や、詳細な結果内容は、参考資料として別紙で添付すればよいでしょう。

上記の調査による検証の結果、以下のことを確認しました。
・対象となるソフトウェアが開発システム上で問題なく動作すること
・業務に問題なく使用できること
・業務での使用で期待する機能、性能を発揮すること
なお、詳細な調査結果は別紙に参考資料として添付いたします。


結論は明確に断定的に

 調査報告書は意見を述べたり提案を出すための文書ではありません。「結論」の項目では、調査の結果に基づいて出した結論を明確に記述しなければなりません。

 今回検証した範囲ではおおむね満足できる結果が得られたと考えられます。ただし、あくまで疑似環境での検証であり、実際に業務を遂行する環境とは異なる点には留意してください。このように留保すべき条件はありますが、これは開発に大きな影響を与えない程度のものだと考えられます。対象となるソフトウェア製品は、今回開発するシステムで利用することは問題ないと考えられます。


 上記の例では、結論を明確に断定していません。また、読み手から見ると、文章中のあちこちに自信のなさが現れています。「おおむね満足」、「考えられます」、「疑似環境であり〜実際の環境とは異なる〜留意してほしい」、「条件はあるが」、「与えない程度」、「問題はないと考えられます」など、書き手が主体になって結論付けようとする意思が感じられません。

 報告書では、書き手(=報告者)が主体的な意思を持って、結論を明確に断定するように表現しなければなりません。「利用できる」のか「利用できない」のかの判断だけを明確に記述すればよいのです。

 上記の調査結果から総合的に判断して、調査対象のソフトウェアは、開発するシステムで利用できます。
 対象ソフトウェアの高い性能、多様な機能を生かすことができ、システムに大きなメリットをもたらします。


 なお、調査報告書は1ページまたは2ページ以内に収まるように記述します。調査方法や調査結果の記述が多少長くなっても2ページでまとめましょう。ただし、2ページにわたる場合は、「結論」を「調査目的」の項目のすぐ後に配置するようにします。顧客の上級管理職や経営陣は、一目で結論が分かるようにしてほしいと考えるはずです。調査方法や調査結果に目を通した後で、ページをめくって結論が登場するというのでは煩わしく感じるだけでしょう。

著者プロフィール

谷口 功 (たにぐち いさお)

フリーランスのライター、翻訳家。企業にて、ファクシミリ通信網を使ったデータ通信システム、人工知能、日本語処理関連のソフトウェア開発、マニュアルの執筆などに関わる。退職後、コンピュータ、情報処理、通信関連の書籍の執筆、翻訳、各種マニュアルや各種教材の執筆に携わる。また、通信、コンピュータ関連のメールマガジンの記事、各種雑誌においてインターネット、パソコン関連の記事やコラムなども執筆。コンピュータや通信に関連する漫画の原作を執筆することもある。

主な著作は、『SEのための 図解の技術、文章の技術』(技術評論社)、『ソフト契約と見積りの基本がよ?くわかる本』『よくわかる最新 通信の基本と仕組み』(秀和システム)、『図解 通信プロトコルのことがわかる本』『入門ビジュアルテクノロジー 通信プロトコルのしくみ』(日本実業出版社)、『図解 ネットワークセキュリティ』『マスタリングTCP/IP IPsec編』[共著](オーム社)など。



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