困った“ダメPM”3パターンとその対処法新任PMがついやってしまうNG集(5)(2/2 ページ)

» 2011年07月12日 00時00分 公開
[水口和彦ビズアーク]
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都合の悪いことはデリートします。「忘却型PM」

 「困ったPM」の2つ目のタイプは、仕事をすぐに忘却の彼方に追いやる「忘却型」です。部下からの相談事や頼まれ事をすぐに忘れ、何も行動してくれないタイプです。こういうPMも、部下にとっては困りものです。

 このタイプは、一言で言えば「無責任」ということになるのでしょうが、こういうタイプに限って、追及された時にごまかすことだけはなぜかうまく、本人はなかなか反省や改善をしません。

 こういうPMには、しっかりタスク管理タイムマネジメントをしてもらえればいいのですが、メンバーからそう言っても聞く耳はなかなか持たないでしょう。タスク管理やタイムマネジメントは「仕事のやり方」に関わること。それを部下や後輩から言われて、素直に従える人はそういません。

「忘却型PM」への対処法

 この「忘却型PM」にうまく動いてもらうためには、頼んだことをやってくれるようにさりげない催促をすることが役立ちます。

 連載第2回で、PM側の立場から、メンバーの仕事の進捗を確認する方法を解説しました。それを逆に、メンバーからPMに行うのです。PMに頼み事をしたら、忘れないうちにそれを確認する日を決め、自分のスケジュールのその日付に「○○の進捗を確認する」というタスクを記入しておきます。

 「○○の件はどうでしょうか?」と催促することで、その案件を思い出させ、少しずつプレッシャーを掛けていくことができるわけです。こうすると、そのまま放置しておくよりも、実行してもらえる確率が高まります。

 「なんでPMの仕事の進捗にまで気を使わなきゃいけないの?」と思うかもしれません。しかし、相手も人間ですから、忘れることだってあります。また、マネージャは毎日さまざまな情報をやりとりしていて、頼まれ事などは忘れてしまいやすいものです。ちょっと気遣いをしてあげる(気遣うふりをしてプレッシャーを掛ける)ことをやってみてください。その方がチーム全体のためだと考えて。

マルチタスクすぎて処理速度がガタ落ちな「テンパリ型PM」

 3つ目の「困ったPM」は「テンパリ型」のPMです。自分自身の仕事でテンパってしまって、チーム全体、あるいは各メンバーのことが見えなくなってしまうタイプです。

 そもそもPMの多くは「プレイングマネージャ」、つまり、自分の仕事(プレイヤーの仕事)とマネージャの仕事の両方を行う立場にあります。この立場は、やってみると分かりますが意外に難しいものです。

 プレイヤーとしての仕事の締め切りが迫っていて必死な状況では、時間の余裕、気持ちの余裕などありません。いわゆる「テンパリ」状態です。そんなときに、チーム全体に目を配ることは難しく、メンバーからの相談事に対応する余裕を失ってしまいます(だからこそ、PMには「タスク管理」や「タイムマネジメント」を行うことをお勧めするわけです)。

 この「テンパリ型PM」は、いつもテンパっているとは限りません。普段はメンバー思いのPMでも、自分の仕事(プレイヤーとしての仕事)の期限に追われたときにだけ、このような状態になることもあります。

「テンパリ型PM」への対処法

 こうした「テンパリ型PM」は、メンバーからの報告や相談を受けた際に「考えておくよ」「後で見ておくから置いといて」と、後回しにしてしまいがちです。しかし、そのせいでチーム全体の仕事が遅れるのであれば、それはチームにとっての損失です。メンバーにとってもPMにとってもハッピーではありません。

 この「テンパリ型PM」に「考えておくよ」「置いといて」と言わせないためには、下記の方法が有効です。

×「どうしましょうか?」

「こうしたいんですが、構いませんか?」「A案とB案、どちらにしましょうか?」

 具体的な選択肢を持ち出し、その場で回答してもらうのです。

 この対応策は「PMの処理能力の低下」に基づいています。普段は優秀なPMでも、テンパっているときは、自分の仕事以外に対する思考力や判断力、集中力が低下しています。

 そんなときに「どうしましょうか?」と判断を丸投げすれば、判断し切れなくて後回しにしたくなるのも、当然といえば当然。逆に、こちら側で選択肢を絞れば、処理速度が落ちたPMも判断しやすくなります。

 「どうしましょうか?」ではなく「こうしたいんですが」あるいは「どちらにしましょうか?」と聞くことは相談の基本ですが、「テンパリ型PM」には特に必要なことなのです。


 今回紹介した3つの「困ったPM」は、どの職場でも普通に見掛けるものです。また、これらのタイプの複合型もあります。「困った人だ」と諦めずに、お互いの欠点を補い合えるように、少し歩み寄ってみてはいかがでしょうか?

著者紹介

水口和彦

(有)ビズアーク取締役社長。タイムマネジメントの研修講師・コンサルタント。

石川県金沢市出身。大阪大学大学院理学研究科修士課程修了後、住友電気工業株式会社を経て現職。

製品開発や品質管理のエンジニアとして「仕事に追われるバタ男状態」を経験。それをタイムマネジメントの研究により克服したことをきっかけに、現職に至る。

新刊『世界で一番ゆるい 王様の時間術』(ダイヤモンド社)など著書多数。

Webサイト:時間管理術研究所


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