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» 2011年08月02日 00時00分 公開

仕事を楽しめ! エンジニアの不死身力(15):相談相手、理想は「上司」――現実はできない人多数 (1/2)

あなたはエンジニアの仕事を楽しんでいますか? この連載では、仕事を「つらいもの」から「楽しいもの」に変えるためのヒントを考えていきます。

[竹内義晴,特定非営利活動法人しごとのみらい]

仕事へのやる気を失ったエンジニアの物語

 あるところに、仕事が大好きな30代前半のエンジニアがいました。顧客と打ち合わせてシステムを設計し、プログラムを作って納品する――自分で考えたシステムが形になっていくことに喜びを感じ、ずっとシステム開発の仕事を続けたいと思っていました。

 しかし、年を重ねるにつれてマネジメントの仕事が増えてきます。エンジニアとして現役でいたかった彼は、転職を決意します。転職先では、これまでの実績を生かそうと、仕事に取り組みました。

 しかし、彼のエンジニア人生はここから一変します。開発現場は明るい雰囲気とは程遠く、あるのは納期や品質のプレッシャーばかり。不具合を出せば「それはあなたのスキルがないせいだ」という叱咤(しった)と責任追及の嵐。職場には「自分に関係ないところは、できるだけ関わらないようにしよう」という雰囲気がまん延していて、彼の胃はキリキリと痛みだします。

 ストレスフルな環境で働いていた彼は、次第に仕事へのやりがいを失っていきます。「もう、エンジニアの仕事なんてどうでもいいや」と、気分を紛らわすために酒をあおり、空を自由に飛びまわる鳥や、飼い主と散歩する犬をうらやましく思うほどに心がすさんでいきました。

 「僕は、心が病んでしまったのかもしれない。エンジニアの仕事があれほど大好きだったのに、どうでもよくなってしまうなんて……」

鳥や犬がうらやましくなるほど、やる気を失ってしまう前に

 上記は、私がエンジニアだったころの体験談です。

 ここ数年来、メンタルヘルスは社会的な課題として長く注目を集めています。ファイザーが2008年に発表した「一般生活者における潜在的うつ病の実態調査」は、一般生活者の8人に1人がうつ病・うつ状態の可能性があると発表しました。

 ITエンジニアは、その中でもメンタルヘルスの問題を抱える可能性が高いといわれています。記事「ITエンジニアを襲う「新しいうつ」の正体とは?」では、「ITエンジニアにおけるうつの発生率は、一般企業の会社員の2〜3倍に上る」とあります。

 先ほどの事例は、ストレスフルな環境としてはある意味、分かりやすいものです。ここまで極端でなくとも、「仕事の将来に不安がある」「前向きになれない」「不安な気持ちを話せる相手がいない」など、何からの不安や悩みを抱えているエンジニアはたくさんいるのではないでしょうか。

 今回は、労働者のメンタルヘルスに関する実態と、エンジニアのメンタルケアがテーマです。

仕事へのやる気とメンタルヘルスの実態

 2011年1月から2月にかけて、NPO法人しごとのみらいでは、「仕事のやる気とメンタルヘルスの実態調査」を行いました(回答数は206件、IT業界からの回答は全回答数の約3割)。

 同調査は、労働者が抱えるやる気の問題や、職場環境、メンタルヘルスの実態を調べることにより、1人1人がやりがいを持って働ける環境を作るためには何が必要かを見いだすことを目的としています。全結果は、「仕事のやる気とメンタルヘルスに関する実態調査」をご覧ください。

◎調査結果の概要

  1. メンタルヘルスの不安を抱いた経験がある人は9割
  2. 多くの人が「職場の人間関係」でやる気を失っている
    「目標」「給与」は、仕事のやりがい・やる気に与える影響は少ない
  3. 職場で悩みを抱えている人は8割
    職場の「将来性」「人間関係」に多くの人が悩んでいる
  4. 「悩みを気軽に相談できる人がいない」人は4割 人は4割
  5. 本当は「上司」「専門家」に仕事の悩みを相談したい
    実際は上司には相談せず、選ぶのは「友人」「同僚」「誰にも相談しない」

 今回は特に、仕事のやる気を失う原因と、それを解決するための「相談相手」にフォーカスして解説します。

やる気を失う理由のトップは「職場の人間関係」

 仕事へのやる気を失う理由や悩みの原因は、「目標」や「給与」よりも、「職場の人間関係」――すなわち職場でのコミュニケーションがうまくいっていないことにあります。コミュニケーションがうまくいっていれば仕事のやる気につながるし、コミュニケーション不全であればやる気を失うという結果が出ています。

 人は誰でも「あなたが必要だ」と言ってほしいし、頑張りを認めてほしいという欲求を持っています。しかし多くの場合、やる気は「個人の資質の問題」だと認識されていて、「自分が周囲に認められている」と感じる大切さについてはあまり注目されていないのではないでしょうか。

 先日、知人の心理カウンセラーに、仕事のやりがいについて話を聞いたところ、次のように教えてくれました。

 「『自分の存在は必要ない。役に立てることがない』と感じているとき、人は仕事を楽しく感じられません。つまり、自分が『認められていない』と感じているとき、モチベーションは下がるのです」

「本当は上司に相談したいのにできない」という現実

 今回のアンケートで最も興味深かったのが、「仕事の悩みを相談する相手の有無/相談したい相手」に関する結果です。

 「今、仕事の悩みを相談するとしたら、誰に相談しますか」という問いについて最も多かった結果は、「友人」「同僚」「誰にも相談しない」でした。

 しかし、本当に相談したいのは誰か――。この問いには、「上司」「専門家」と答えた人が多かったのです。しかし、図を見ればお分かりのように、実際に上司に相談できている人は4分の1以下。

 本当は上司に相談したい。しかし、実際には相談していない――あるいは、できない。これが、働く人々の実態のようです。

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