連載
» 2011年10月27日 00時00分 公開

World IPv6 Day当日のアクセス状況を把握せよ!Yahoo! JAPANのIPv6対応大作戦(最終回)(1/2 ページ)

とうとうIPv4アドレス在庫が枯渇しましたが、Yahoo! JAPANではそれに先立つ2009年ごろから、IPv6対応に向けた準備を進めてきました。この連載では、サービスプロバイダとしての視点から、どういった対応を進めてきたかを紹介します。(編集部)

[中谷武史,ヤフー株式会社]

 前回までは、Yahoo! JAPANのIPv6に対する取り組みという観点で、事前の準備から当日観測したデータまでを紹介しました。

 今回は、World IPv6 Dayの結果についてより深く紹介するとともに、お客さまの動向やアンケートの結果にも触れます。さらに、一連の結果に対する考察と、Yahoo! JAPANで検討している今後のIPv6対応について述べ、まとめとしたいと思います。

 World IPv6 Dayはわずか1日のイベントでしたが、たくさんの有意義な結果を得ることができました。事前調査から予想していた結果とは異なるデータや、事前告知の特集ページから誘導したお客さまのアンケート結果など、今後のIPv6対応に役立つ情報を得ることができました。

出番のなかった障害対応

 第2回でも紹介したように、Yahoo! JAPANでは予期せぬ障害の発生に備え、何かあった場合には即座にDNSを切り替え、World IPv6 Day以前と同じ状態に切り戻す準備をしていました。

 幸いなことに、当日は予期せぬ障害は発生せず、準備した仕組みを使う必要はありませんでした。このことから、「日本においてIPv6でのアクセスで大きな障害は発生しない」という実績を作ることができたと考えています。これはYahoo! JAPANだけでなく、インターネットサービスプロバイダーや通信事業者各社の事前準備があってこその成功だといえます。

事前調査結果と当日のアクセス結果の比較

 では、第1回で紹介した事前調査の結果と、当日のYahoo! JAPANトップページのアクセス結果を見比べてみましょう。

 「障害が発生し、Yahoo! JAPANトップページが閲覧できなかったインプレッション数」と「ユニークユーザー数」については、そもそもトップページへのアクセスができないため、実測できません。従って計測はできていませんが、事前に閲覧できないお客さまに周知していた、IPv4にのみ対応したトップページのミラーサイト「v4.www.yahoo.co.jp」へのアクセス数を代用できます。なおこの数値は、確実に障害が発生したことを示しているわけではないため、あくまで参考数値としてみてください。

 最初に、当日のインプレッション数とユニークユーザー数の割合から結果を考察していきます。

トップページへのインプレッション数の割合

 当日、Yahoo! JAPANトップページへIPv4/IPv6でアクセスしたインプレッション数の割合は、以下のとおりでした。v4.www.yahoo.co.jpへのインプレッションも参考に記載しています。

アクセスパターン アクセス成否 割合(%)
IPv4でアクセスしたケース 成功 99.46%
IPv6でアクセスしたケース 成功 0.54%
回避用Y!トップページ 失敗 0.003%
表1 当日のインプレッション数の割合

トップページへのユニークユーザー数の割合

 当日、Yahoo! JAPANトップページへIPv4/IPv6でアクセスしたユニークユーザー数の割合は、以下のとおりでした。インプレッション数と同じく、v4.www.yahoo.co.jpへのユニークユーザー数も参考までに記載しています。

アクセスパターン アクセス成否 割合(%)
IPv4でアクセスしたケース 成功 99.73%
IPv6でアクセスしたケース 成功 0.26%
回避用Y!トップページ 失敗 0.0017%
表2 当日のユニークユーザー数の割合

 事前調査では、IPv6でのアクセスはインプレッション数ベースで0.05%と予測していましたが、当日は0.54%と、何と約10倍になっていました。ユニークユーザー数で見ると、IPv6アクセスの割合は0.26%ですから、IPv6でアクセスしたお客さまの方が、より多くのページにアクセスしたという結果です。

 ここで注目すべきポイントは、「インプレッション数は事前調査結果の10倍となっていること」です。インプレッション数とユニークユーザー数の比率を加味しても、事前予想の5倍以上のお客さまが、IPv6でページにアクセスしたことになります。

 これは、参加各社の事前告知や新聞などの各種メディアで取り上げられたこともあり、World IPv6 Dayというイベントの知名度が高まり、IPv6アクセスが可能な環境を持つお客さまがここぞとばかりに張り切ってアクセスした結果と考えられます。そして同時に、障害を発生させることなく、多くのお客さまが何事もなくアクセスできたことを示すデータであるとも判断できます。

 一方、当日IPv4およびIPv6でサービスにアクセスできないお客さまのため、事前告知により周知していたv4.www.yahoo.co.jpサイトへのアクセス比率は、インプレッション数で0.003%、ユニークユーザー数で0.0017%となりました。この数値には、「実際にアクセス障害が発生したケース」「障害発生を回避したいため、当日だけv4側にアクセスしていたケース」が含まれると考えられます。

 結論からいうと、この数値は予想以上に少ないものでした。事前に、「v4.www.yahoo.co.jpへのアクセスすべてが、障害の発生したアクセスとは限らないないこと」「障害が発生し得る環境にありながら、事前告知に気付かなかったお客さまはアクセスしないこと」は想定していましたが、それでも少ない数字です。これは、障害が発生したケースが少なかったことを示す根拠としては不十分ですが、少なくとも事前調査を行った時点に比べ、障害の発生する環境は少なくなっていたと思われます。

事前調査と当日のアクセス内訳の比較

 次に、World IPv6 Day当日に行ったビーコン調査のデータについても、事前調査と比較してみましょう。

 事前調査の時点とWorld IPv6 Day当日、インプレッション数で見たアクセス比率を以下に記載します。

事前調査時点 当日
IPv6に未対応(IPv4でアクセスし、問題なし) 94.90% 95.59%
IPv6に未対応(問題が発生する) 0.18% 0.11%
IPv6に対応(IPv4を優先) 4.87% 3.80%
IPv6に対応(IPv6を優先) 0.05% 0.50%
表3 ビーコン調査のデータ比較

 各項目において、わずかですが、事前調査と当日とで変化があることが分かります。

 まず、「IPv6に未対応(IPv4でアクセスし問題なし)」のクライアントからのアクセスが増加しています。これは主に、当日インターネットプロバイダなどが提供した「AAAAフィルタ」(DNSサーバによりAAAAアドレスを引き当てしなくする方式)の影響だと判断しています。

 「IPv6に対応(IPv6を優先)」は約10倍に増加しましたこれは、ユーザー自身の設定変更などにより、IPv4優先だった環境がIPv6優先に変化した結果ではないかと思われます。

 逆に「IPv6に対応(IPv4を優先)」は減少しました。これはAAAAフィルタやIPv6優先への設定変更によるものと思われます。結果的には、これらの影響もあり「IPv6に未対応(問題が発生する)」が0.07%も減少しました。

 World IPv6 Dayでの調査により、事前調査結果に比べ、「IPv6でのアクセス数の増加」と「障害発生割合の低減」が実現できたことが分かりました。このイベントをきっかけとしてIPv6対応が推進され、イベントとしては成功したといえるでしょう。

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