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» 2012年01月05日 00時00分 公開

クラウドHot Topics(6):企業ITへの取り組みを強化するAmazon Web Services (2/2)

[三木泉,@IT]
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AWSは陳腐化を防ぐことができるか

―― しかし、どんな製品カテゴリでも、時間とともにコモディティ化するものだ。「仮想マシンを動作させるサービス」も、多くのサービス事業者が同様なサービスを低コストで提供し、多くの顧客が、このような仮想マシンを動かせるサービスで十分だと感じるようになれば、コモディティ化してしまうのではないか。

 それはいい質問だ。しかし、これは簡単なビジネスではない。顧客がミッションクリティカルなアプリケーションでヘビーに使うようなクラウドサービスを提供するなら、3つの点で、優れていなければならない。

 まず、革新的なソフトウェアを走らせることに秀でていなければならない。次に、データセンターの運用に長けていなければならない。さらに、(低コスト実現のため)ハードウェアを管理することに優れていなければならない。これら3つの点すべてに卓越している企業は世界中にもあまりない。信頼性、革新性、低コストのうちどれが足りなくても、おそらく失敗するだろう。

 Amazonは創立以来、この3点すべてにおいて卓越した技術を築いており、これらすべてを市場に提供できる数少ない企業の1社だと考えている。われわれは顧客に対して、真の価値を提供できると思う。

 これを踏まえたうえで、AWSによるクラウドサービスは、顧客にとって低価格を意味すると考えている。従来型テクノロジ企業が享受してきた50%とか70%、90%といった高いマージンは、長続きはしない。こうしたマージンを顧客に押し付けるのは、フェアとはいえない。AWSでは、すべてが可能な限り低コストに構築されている。これはわれわれのDNAだ。そして当社は、利益を低価格という形で顧客に還元することを戦略としている。

―― 世界中で、多くのサービス事業者が「AWSより低価格」を打ち出してきていると思うが、AWSとしてはどう対応していくのか。

 一般的にいって、われわれは顧客に対して非常に低い価格を提供することに力を注いでいる。実際、過去4年間に15回も価格を引き下げた。多くの場合は、競合上のプレッシャーから行ったものではない。コストを引き下げ、価格を引き下げることは当社の戦略だ。世界中で、顧客はAWSが非常に低価格だと言っている。今後もわれわれは、低価格を提供していくことに力を注ぐ。

 たしかに多くの企業が、(AWSとの)相対的な価格についてさまざまな主張をしている。顧客がクラウドサービス間や、その他のソリューションと比較する際に、正当な評価を行うことは非常に難しい。一部のコストを見落としがちだからだ。例えば、サーバ機の購入コストを見るのは簡単だが、(アプリケーション用のサーバ以外の)バックアップなどのサーバや、サーバ機用に調達するネットワーク機器、ハードウェアを見定める人のコストなどを忘れがちだ。ITの管理には、多くのコストが掛かる。

 (競合他社の)さまざまな主張については、その内実をよく調べてほしいと顧客には伝えている。

 価格も大事だが、結局のところ顧客はさまざまな可能性を求めている。こちらのほうが、クラウドコンピューティングに求められるものとして低価格より重要だ。当社の戦略は、顧客が利用するOSを選択でき、あらゆる開発言語を使ってプログラミングでき、当社のサービスのうち1つでも全部でも使え、世界中のどの地域で動かすかを決められるようにすることだ。

 このようにして、柔軟性やビジネス上の俊敏性を顧客に提供できることは、クラウドコンピューティングのもっとも強力な属性だ。

企業をどう安心させていくか

―― しかし、次の社内アプリケーションをクラウド的に再構築したがらない一般的な企業に対して、AWSは何を提供できるのだろうか?

 世界中で、一般企業に(AWSが)使われている例はたくさんある。米国政府や欧州のある国の財務省などでも使われている。日本では三井がSAPのアプリケーション開発に使っているし、ERPベンダのワークスアプリケーションズも、(AWSを使うことで)ERPの導入に要する時間を大幅に短縮した。

 その一方で、一般企業における導入に関しては、まだ早い段階にいると考えている。そこで、認識を高めてもらうためにいくつかのことを実行している。その一部を紹介したい。

 まず、ほとんどの企業は、自社のミッションクリティカルなアプリケーションを運用するベンダと、緊密な関係を築きたいと考えている。このため、われわれはさまざまな地域における現場のチームを通じて、顧客を支援しようとしている。

 第2に、特に日本の顧客は大小のSI業者などのパートナーを通じて利用したいと考えている。当社はSI業者およびISV(独立系ソフトウェアベンダ)と非常に素晴らしいパートナーシップを構築してきた。

 SI業者とのパートナーシップには、電通国際情報サービス(ISID)やSCSKなどがある。当社はより強力なパートナーとの関係を構築していくことに力を注いでおり、これによって顧客が最も安心できる運用モデルで、クラウドへのデプロイメントができるように図っていく。

 第3はAWSが提供するサポートの奥の深さだ。日本にはテクニカルサポート機能を置いており、24時間年中無休の日本語サポートを提供している。サポートには数段階あり、これについても柔軟性の観点から、サポートレベルを顧客が選べるようにしている。最高レベルでは、専任のテクニカル・アカウント・マネージャがつき、携帯電話での連絡もできる。

 この問題に単一の答えはない。一般企業における新アプリケーションの構築、既存アプリケーションの移行を助けるべく、現在、そして将来の課題を克服していくことだ。

 (企業向けに)多くの技術的機能を構築してきたし、これからも構築していく。重要な例の1つはAmazon VPCだ。これは簡単にいえば、企業がAWSクラウド上に、プライベートネットワークを構築できるというものだ。企業は、AWSを自社のデータセンターの1つであるかのように扱える。企業にとって、クラウドへの移行ははるかに容易になるはずだ。

―― 東京リージョンでもAmazon VPCは使えるようになっている。

 そうだ。8月に東京でもVPCを提供開始しており、ワークスアプリケーションズなど、多くの企業に使ってもらっている。

―― 既存アプリケーションのクラウドへの移行に関して、どんな新機能を提供していくのか。

 移行支援のための機能は、すでにいくつか提供している。もちろんもっと多くのことをしなければならないと考えている。

 1つの例はAmazon EC2で提供しているVM Importだ。既存のVMwareイメージを直接、Amazon EC2に移動できる。変換などに関して考えなければならないことは何もない。VM Export機能も提供の予定で、これによりAmazon EC2のイメージをVMwareイメージにエキスポートできる。

 もう1つの課題は、クラウドへの大量データの移行だ。これについては複数の解決策を用意している。

 1つは「AWS Import/Export」と呼んでいるもので、ハードディスクドライブにデータを入れてユーザーからAWSへ、あるいはAWSからユーザーへ郵送することができる。

 もう1つは「Direct Connect」。これは特定のAWSリージョンへの専用線接続を実現するものだ。これまでUS West、US Eastの2リージョンで提供してきた。今後数カ月のうちに、東京リージョンを含む他のリージョンでも提供の予定だ。アプリケーション移行は非常に重要な分野であり、今後何年にもわたってわれわれは関連する課題の解決に努めていく。

―― サービスのダウンに関して、AWSを含む一般的なクラウドサービス事業者のSLA(Service Level Agreement:サービス保証契約)は、広範なダウンが発生していた時間分のクレジット(払い戻し)しか提供していない。これ以上の補償をSLAで提供するつもりはないのか。

 大規模なダウンが発生した場合、(顧客の)ビジネス上の損害を真に補償できるSLAは存在しない。多くの顧客は、自社が痛みを感じるとき、クラウド事業者も痛みを感じることを望んでいる。結局、これがSLAの真の目的であり、補償金額の重要性ははるかに小さい。大多数の顧客は、予想に基づく約束であるSLAよりも、実際の運用実績に関心を持っている。将来何をやるかについて語ることは簡単だが、実際にそれが反映されるとは限らない、一方、過去の結果からは、逃げることはできない。

 われわれはこれまで、自社の運用実績について非常にオープンであり、透明性を確保してきた。Service Health Dashboardを通じ、当社の個々のサービスについて、青・黄・赤で状況を知らせてきた。顧客でなくても、誰でもが当社のWebサイトに行き、トップページから1クリックで実績を見ることができる。過去30日の推移の確認も可能だ。顧客にとって、一番安心感を得られる方法は、この実績を見てもらうことだと思う。一般的にいって、われわれはサービス提供開始以来、非常に良好な結果を残してきたと考えている。


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