連載
» 2012年02月09日 00時00分 公開

次世代 新Windows「Windows 8」プレビュー:第3回 クライアントHyper-V (1/2)

Windows 8では、従来のWindows Virtual PCに代わって新しくHyper-V 3.0がクライアント向けにも導入される。その概要を解説。

[打越浩幸,デジタルアドバンテージ]
[Windows 8プレビュー] Windows 8 Developer Preview ―― 再構築された次世代Windows ―― 
Windows Server Insider

 

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連載目次

本連載では、2012年中にリリースが予定されているWindows 8(開発コード名)について、その機能の概要を紹介します。なお本稿では2011年9月に配布が開始されたDeveloper Preview版(ビルド8102)に基づいて執筆しているため、最終的な製品版とは内容が異なることがあることをあらかじめご了承ください。
【2012/08/23】Windows 8は2012年8月にRTM版(製品版)が完成し、すでに正式リリースされています。製品版をベースにした記事は新連載「Windows 8レボリューション」をご覧ください。クライアントHyper-Vについてはこちらで解説しています。


Windows Server Insider関連記事,Windows Server 2008 R2の真価「第4回 Windows Server 2008 R2の目玉機能『Hyper-V 2.0テクノロジ』とは

 前回は、Windows 8 Developer Preview(以下、Windows 8 DP)の新機能の概要について解説した。今回はその中から、クライアント向けHyper-V機能について取り上げ、解説する。サーバ版のHyper-V機能については次回解説する。

 Windows 8 DPでは、仮想実行環境として新しくHyper-V 3.0が搭載されることになっている。これは従来のWindows Server 2008 R2で提供されていたHyper-V 2.0の後継となる製品だ。Hyper-V 1.0から2.0へのバージョンアップでは、ライブ・マイグレーションやクラスタ共有ボリューム、ストレージ・ホットプラグ、ダイナミック・メモリ、RemoteFXなど、特徴的な新機能が多く導入された。これに対してHyper-V 3.0ではまったく新しい機能を追加するというよりは、既存の機能や操作性を洗練・強化させたものが多い。例えば、クラスタ共有ボリュームが不要なライブ・マイグレーションやクライアントでのHyper-Vサポート、PowerShellによる管理、新仮想ディスク形式のサポート、帯域制御や拡張機能(Extensions)の追加に対応したネットワーク機能、オフロード処理を強化したストレージやネットワーク機能などがあげられる。今回はこのうち、クライアントHyper-V機能についてWindows Virtual PCと比べながら解説する。


 まずHyper-V 3.0の機能強化点の概要を次に示しておく。

機能 内容
クライアントOSでのHyper-Vサポート
ホスト・システムにおける最大サポートコア数 最大160コア
仮想マシンのプロセッサ 1仮想マシンあたり最大32論理コア
仮想マシンのメモリ 1仮想マシンあたり最大512Gbytes
NUMAサポート
最大同時稼働仮想マシン数 最大1024
.VHDX仮想ディスク 最大16Tbytesまで拡張可能/4Kbytesセクタ・サポート/ネイティブVHDXブート
スナップショット
ディスク関連機能 IDE/SCSI/FibreChannel/iSCSI/Hyper-V on SMB/Clustered PCI RAID/ODX(Offload Data Transfer)
ネットワーク関連機能 External Network Switch/Internal Network Switch/Private Network Switch/Legacy NIC/無線LAN/VLAN/ポート・ミラーリング/ネットワーク・リソース・プール/Switch Extensions(ネットワーク拡張機能)/タスク・オフロード/NICチーミング/帯域制御(QoS)/SR-IOV(Single Root I/O Virtualization)サポート/D-VMQ(Dynamic Virtual Machine Queue)/DHCPガード/ルータ広告ガード
DirectX/Direct3D ○/○
仮想マシンの移動/クラスタ ライブ・ストレージ・モーション/ライブ・モーション/CSV(クラスタ共有ボリューム)を使わないクラスタ
150以上のPowerShellコマンドレット・サポート Hyper-Vマネージャで可能な操作のほとんどをPowerShellで操作可能
リモート管理 Hyper-Vマネージャ/PowerShell
サポート・ゲストOS 32bitおよび64bitの以下のOS
・Windows XP SP3
・Windows Vista
・Windows Home Server 2011
・Windows Server 2003 R2 SP2
・Windows 7 SP1
・Windows Server 2003 SP2
・Windows SBS 2011
・Windows Server 2008
・Windows Server 2008 R2
・Windows 8
・Red Hat Enterprise Linux 5.2-5.6, 6.0, 6.1
・SUSE Linux Enterprise Server 10, 11
・CentOS 5.2-5.6, 6.x
Hyper-V 3.0の新機能/機能強化点

クライアントでもサポートされるHyper-V

 従来、Hyper-VはServer OSでのみ提供されていた仮想化環境であるが、Windows 8ではクライアント版OSでもHyper-Vが利用できるようになる。Windows 7では、Windows Virtual PCという仮想環境が用意されていたが、これは廃止され、代わりにHyper-V 3.0が採用されることになる。これにより、サーバかクライアントかに関わらず、同じ操作方法で仮想マシンを管理できるほか、同じ仮想イメージを使うことも可能なので、管理の手間が削減される。

 Windows Virtual PCとHyper-Vは、同じ仮想化実行環境といっても機能は大きく異なっている。今回は分かりやすいように、クライアント環境で利用可能な機能に注目して、両者を比較しておこう。サーバOS用途におけるHyper-V 2.0とHyper-V 3.0の違いについては、次回取り上げる。

仮想環境 Windows Virtual PC Hyper-V 3.0
ホスト環境
仮想化の方式 ホスト型 ハイパーバイザ型
ホストCPU x86/x64 x64が必須。最大160コア
ホストOS 32bitもしくは64bitのWindows 7 64bitのWindows 8。32bit版のWindows 8ではHyper-Vの管理ツールのみ利用可能
ホストCPUのハードウェア仮想化支援機能(Intel-VTやAMD-V) あれば利用されるが、なくても動作する 必須
ホストCPUのSLAT(Second Level Address Translation)機能 あれば利用されるが、なくても動作する 必須。サーバ版では不要だが、クライアント版ではさらにIntel EPTやAMD RVI/NPTなどのSLAT機能(ページングの仮想化を補助する機能)が必要(「Hyper-V 2.0におけるハードウェア選定のポイント参照)
ホスト・システムのメイン・メモリ ホストOSのサポートするメイン・メモリまで ホストOSのサポートするメイン・メモリまで
仮想マシンの実行環境
ゲストOS 32bit OSのみ 32bit OS/64bit OS
仮想CPUコア数 1コアのみ 1〜32コア(ただし実コア数以下に制限される)
仮想マシンのメモリ 最大4Gbytes 静的メモリはホスト・システムの最大空き物理メモリ・サイズまで。動的メモリは最大2Tbytesまで
メモリ割り当て 固定サイズのみ 固定サイズかダイナミック・メモリ
仮想マシンのデバイス・サポート
仮想ディスク数 最大4台(うち1台はCD/DVD) IDEは最大4台、SCSIはインターフェイスごとにそれぞれ最大64台
仮想ディスクのサイズ .VHD(最大128Gbytes) .VHDでは最大2Tbytes、.VHDXでは最大16Tbytes
復元ディスク (スナップショットを使用)
スナップショット(複数の状態の保存) なし あり
バックグラウンドでの実行 ログオフすると仮想マシンは停止/終了 仮想マシンはシステム全体で共有。ユーザーのログオン状態とは無関係に実行される
VMの移動機能 なし。手動で対応 インポート&エクスポートのほか、場所を指定しての直接移動も可能。実行中の仮想マシンの移動(ライブ・ストレージ・マイグレーション)も可能
UEFIブート
IDEインターフェイス 2つ(計4デバイスまで) 2つ(計4デバイスまで)
SCSIインターフェイス 4つまで(1インターフェイスごとに最大64デバイスをサポート)
USBデバイスのパス・スルー・サポート −(サーバ向けHyper-Vで利用できるRemoteFXではサポートされる)
NUMAサポート
ネットワーク・インターフェイス 1つ 8つまで(これ以外に、レガシー・ネットワーク・デバイスを4つまで追加可能)
ネットワークの帯域制御
FDインターフェイス 1つ 1つ
COM:ポート 2つ 2つ
FibreChannelサポート
Windows XP Mode
仮想アプリケーション
メニューの自動公開
仮想マシンのネットワーク
仮想ネットワーク・インターフェイス 最大4インターフェイス 最大12インターフェイス
仮想ネットワークの種類 内部/共有/外部 内部/外部/プライベート/VLAN
仮想マシンの3Dグラフィックス
DirectX DirectX 11 DirectX 11
Direct3D ○(ソフトウェア処理。RemoteFXではサーバ上のGPUを使用)
RemoteFX ○(サーバ版でのみサポート)
最大解像度 2048×1920 1920×1200
管理ツール GUIのみ GUI/PowerShell
リモート管理 Hyper-Vマネージャ/PowerShellを使用
PowerShellサポート
自動起動/終了/保存 △(終了時の自動保存のみ)
Windows Virtual PCとHyper-V 3.0の主要な違い

 仮想化の方式や処理内容などについては関連記事を参照していただきたいが、一般にHyper-Vの方が低オーバーヘッドで、高性能な仮想マシン環境を実現できる。Windows Virtual PCがデバイスのレベルまで細かくエミュレーションしているのに対して、ハイパーバイザ型ではデバイス・ドライバ・レベルでゲストOSの要求を受け取り、それを仮想マシン・モニタ(VMM)経由でホストOS側で処理するからだ。デバイス・ドライバの中のコードは実行しないので、オーバーヘッドは最小になる。

 機能的な面で比較すると、Windows Virtual PCに対してHyper-Vでは、仮想マシンにおける64bit CPU(64bit OS)やマルチコア、ダイナミック・メモリのサポート、複数のスナップショット、柔軟なハードウェア構成(ネットワークやディスク)、PowerShellやHyper-Vマネージャによるリモート管理機能、新仮想ファイル.VHDXサポートなどが大きな利点である。

 ただし要求されるハードウェア仕様も高く、特に64bit CPUと64bit版Windows 8が必要というのが一番大きなハードルかもしれない。32bit版のWindows 8ではHyper-Vのリモート管理機能しか利用できず(32bitのゲストOSやWindows XP Modeを使うことも不可能)、仮想環境は利用できない。必要ならサードパーティ製の仮想化ソフトウェアを導入するしかない。

 また、Hyper-Vはもともとはサーバ向けに作られたシステムであるため、クライアント用途向けとしてはいくつか不足している機能がある。これはHyper-V 3.0でも同様であり、次の機能はサポートされていない。

  • XP Mode――過去との互換性のために、Windows XPを仮想マシン上で実行させる機能。必要なら仮想マシン上に自分でWindows XPをインストールすればよいが、Windows XPのサポート期限は2014年4月までなので、もともといつまでも使えるソリューションではない。
  • 仮想アプリケーションとメニューの自動公開――仮想マシン上にインストールしたアプリケーションを、クライアントのデスクトップ上でシームレスに実行したり、その起動メニューをクライアント側の「スタート」メニューに自動公開する機能。このような使い方に対するマイクロソフトのソリューションとしては、Hyper-Vと仮想化を組み合わせたVDI/MED-V/App-Vなどがある(これらの詳細については連載「Windows Server 2008 R2によるVDI実践入門」参照)。
  • USBデバイスのパス・スルー機能――クライアントPCに接続したUSBデバイスを仮想マシン上で利用する機能。ただしサーバ向けHyper-Vで利用できるRemoteFXではサポートされる(RemoteFXについては「3DグラフィックスをサポートするHyper-VのRemoteFX」参照)。

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