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» 2012年03月12日 00時00分 公開

ヘッドハンターのIT業界・転職動向メモ(3):伸びる新興SIerと旧来型SIer、スタンスに明確な違い

IT・Web業界専門のヘッドハンターは、日々の情報収集を欠かさない。本連載では、ヘッドハンターならではの視点でIT業界の転職動向を眺め、気になったネタを紹介していく。

[篠原光太郎,@IT]

SI業界の2011年、2012年

 システム・インテグレータ(SI)業界は2011年、クラウドコンピューティングやSaaSなどのニーズの高まりによるプラス成長を見込まれていたが、震災の影響を受けて実際はマイナス成長となった(ガートナージャパン調査)。2012年以降について、インターナショナルデーターコーポレイションジャパン(IDC Japan)は、「2012年の国内ITサービス市場は、4年ぶりにプラス成長を回復する見込み」と予測している(参考)。

 とはいえ、一言に「SI企業」と言っても実際は「伸びているSI企業」と「伸び悩むSI企業」が存在する。まずは、SI企業の業態別に、現状を整理しよう。

業態別SI企業の実態

●ユーザー系SI企業

 NTTデータをはじめとするユーザー系SI企業は、親会社をはじめとする安定顧客がいる。親会社の業績が低迷している系列以外は堅調だが、親会社からの発注が減ってきている企業は先行きが不透明だ。発注が減っている理由としては、外販比率の高い一部企業や、品質や単価の問題などがある。

●独立系SI企業

 2011年は、CSKと住商情報システムズによるSCSK、TISとソラン、ユーフィットの合併など、規模の大きい合併が目立った。このように、独立系SI企業では、独自での存続が厳しい企業が増えている。

●新興SI企業

 SI業界の中でも、業績を伸ばし、積極的に人材を採用しているのが新興SI企業だ。フューチャーアーキテクトやシンプレクス・ホールディングス、ウルシステムズなどが相当する。

 新興系SI企業の共通点には、以下のようなものがある。

  1. 平均年齢が若い(年功序列でない)
  2. 高い技術力を持つ
  3. 上流工程のコンサルティングから開発、下流工程の保守・運用までワンストップで行う

 そのほとんどが旧来のSI企業とは、一線を画した動きを見せている。こうした新興系SI企業が現在、そして今後のSI業界の中心となるといっても過言ではない。

伸びるSI企業と伸びないSI企業の分水嶺

 なぜ、同じSI企業でも、伸びる企業とそうでない企業に分かれるのか。その分水嶺はSI業界の構造問題、いわゆる「ゼネコン体質」である。

 日本のSI業界は、不動産業界や自動車業界と同様に、ユーザー系SI企業を中心とした元請け企業が要件定義やプロジェクトマネジメントを行い、2次請け以下となるSI企業が開発を行っている。

 元請け企業には、それぞれの業界に対する業務知見やプロジェクトマネジメントのノウハウは蓄積するが、開発力が高まらない。一方、2次請け以降のSI企業では、開発力は元請け企業よりあるものの、業界知見やPMスキルが蓄積せず、下請けを続けるしかない。

 こうしたゼネコン体質で最も問題なのは、「景気によって著しく必要人数が左右する」点である。景気が良ければ人材を大量に採用するが、景気が悪くなれば人材を削減せざるをえない。こうした雇用の不安定性が、エンジニアに未来への不透明感を与えている。

新興系SI企業で重視されるスキル

 では、伸びている新興系SI企業はエンジニアに何を求めているのか。まず最も求められているのは、「プログラミングスキル」である。

  アプリ・インフラ・サーバ・DBなどそれぞれの分野で高度なスキルがあれば 、何かしらの形でのオファーがくるだろう。そういう意味では前回紹介した「ソーシャルゲーム業界での一芸エンジニア採用」と同じだ。プログラミングスキルの高い人材は、SI業界やソーシャルゲーム業界どちらにおいても、獲得競争が激化 している。

 一方、新興系SI企業はプロジェクトマネージャも求めている。技術力が高い一方、顧客との折衝力が不足しているケースがあるためだ。そのため、各業界のユーザー企業に対する折衝能力を持ったプロジェクトマネージャは重宝される。

 上記のスキルをうまくアピールして転職を成功させたSIエンジニアの事例を2つほど紹介しよう。

SIエンジニアの転職事例×2

●ケース1:A氏の場合

  • 前職:新興系SI企業在籍 プロジェクトマネージャ
  • 現職:ソーシャルゲーム開発企業

 A氏は幼少のころからプログラミングを行っており、自分自身で積極的に技術学習をしていた。前職の新興系のSI企業では、PMとして顧客折衝を行いながらプログラミングもしていた。

 採用ポイント:高度なプログラミングスキルと、PMとして顧客折衝を行っていたビジネスマインドを併せ持つ。また新興系SI企業ということもあり、現役でプログラミングを行っていたことに対して、高い評価を得た。

●ケース2:B氏の場合

  • 前職:大手ユーザー系SI企業在籍 プロジェクトリーダー
  • 現職:EC関連企業 企画系プロジェクトマネージャ

 B氏は新卒で大手SI企業に入社し、研修でプログラミングを行いその後は官公庁向けの大規模プロジェクトにてプロジェクトリーダーとして、開発の一部のプロジェクト外注管理や進ちょく管理を行っていた。

 採用ポイント:開発経験が短く、Webエンジニアとしての採用は難しかったが、大手ユーザー系SI企業での大規模システムにおけるプロジェクトマネジメントスキルを評価。新規webサービスにおける企画・開発の進ちょく管理などを担当するプロジェクトマネージャとして採用された。

これからのSI業界に必要な“変化”を考える

 SI業界へのニーズはなくならない。むしろ、新規ビジネスへの投資などで、一部の分野ではニーズが高まるだろう。しかし、旧来型のやり方ではうまくいかないことも確かである。では、SI業界は今後、どう変化すべきなのか。

●脱ゼネコン体質

 まずSI業界が全体的に取り組まなければいけないのは、「脱“ゼネコン体質”」である。大手企業が一次請けとして受注し、下請け企業に案件を流してく構造は、不動産や自動車などのSI業界以外のケースと同様に、業界全体の力を下げる。

●脱受託体質

 受託開発だけに頼るのではなく、技術や知見などのノウハウを蓄積し、ASPやSaaSといった自社サービスを立ち上げていくことも必要だ。現在、業績を伸ばしている新興系SI企業には、今後のSI業界を担っていく企業となる可能性を感じている。大いに期待したい。

●エンジニア個人のキャリア

 またエンジニア個人としては、企業が求める、高度なプログラミングスキルと折衝力・交渉力を兼ね備え磨いていくことが、自身のキャリアアップの道を切り開くといえる。

著者プロフィール

篠原光太郎(しのはら こうたろう)

IT・通信・インターネット業界のミドルマネジメントから経営層まで数々のスカウト実績を残し、クライアント・キャンディデート双方からの信頼も厚い。

固定概念に囚われないサーチサービスに強み。サーチファーム・ジャパン最年少取締役および最年少グループリーダー。ITサービスグループ主幹。


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