ルーティングプロトコルを相互変換する「再配送」とはCCNP対策講座 ROUTE編(5)(1/2 ページ)

本連載では、シスコシステムズ(以下、シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNP(Cisco Certified Network Professional)のうち、【642-902 ROUTE】を解説します。

» 2012年05月17日 00時00分 公開
[齋藤理恵グローバル ナレッジ ネットワーク]

 今回は、ルーティングプロトコルを相互変換する仕組みである再配送について学習します。例えばRIPで学習したルートをOSPFルートとしてアドバタイズすることが可能な技術です。

再配送の必要性

 ルーティングプロトコルを利用する場合、1つのルーティングプロトコルで統一するのが最も理想的です。複数のルーティングプロトコルが混在しているとアルゴリズムや設定が異なり、さまざまな問題点が出てきます。

 1つのルーティングプロトコルで統一すれば、ルーティングの設定が簡単になります。ですが、状況によっては複数のルーティングプロトコルを利用しなければならないケースもあります。

 例えば、企業の合併などで異なるルーティングプロトコルを利用している場合や、利用している機器によって、サポートしているルーティングプロトコルが異なる場合などが考えられます。このような場合、同じルーティングプロトコルでしかルート情報の交換をしないため、再配送の設定が必要です。再配送できるルーティングプロセスとして、次のものがあります。

  • Connected
  • Static
  • RIP
  • OSPF
  • EIGRP
  • BGP

 なお、再配送の設定は境界ルータを設置し、その境界ルータで設定が必要です。

図1 再配送の必要性 図1 再配送の必要性

 図1では、R1はEIGRP、R3はOSPF、R2はEIGRPとOSPFが動作しています。再配送設定前の状態では、EIGRPドメインのR1はOSPFドメインのルート情報(172.16.1.0/24)を学習できず、OSPFドメインのR3はEIGRPドメインのルート情報(192.168.1.0/24)を学習できません。そのため、EIGRPドメインとOSPFドメインのネットワーク間の相互通信ができません。

 そこで、境界ルータであるR2で再配送の設定をします。再配送によってR2はOSPFで学習した172.16.1.0/24をEIGRPルートとしてアドバタイズし、EIGRPで学習した192.168.1.0/24をOSPFルートとしてアドバタイズできます。この設定により、EIGRPドメインとOSPFドメインのネットワーク間の相互通信が可能です。

確認問題1

  • 問題

 R1はEIGRP、R2はEIGRPとRIPv2、R3はRIPv2が動作しています。再配送の設定が必要なルータを次の選択肢の中から1つ選択しなさい。

a.R1
b.R2
c.R3
d.R1、R2、R3

  • 正解

 b

  • 解説

 正解はbです。再配送の設定は異なるルーティングドメインの境界である境界ルータで設定が必要です。

シードメトリック

 ルーティングプロトコルによってメトリックが異なるので、値をそのまま再配送するのは無理があります。再配送するルーティングプロセス間ではメトリックの互換性がありません。

 例えば、OSPFのコスト100のルートをRIPに再配送すると、RIPの最大ホップ数は15のため到達不可能な経路として見なされてしまいます。そこで、再配送するときにメトリックを与える必要があります。ルート再配送時に与えるメトリックをシードメトリックといいます。シードメトリックのデフォルト値は次の通りです。

再配送先のルーティングプロトコル シードメトリック
RIP 無限大
OSPF ほかのIGPからの再配送20
BGPからの再配送1
EIGRP 無限大
BGP IGPのメトリックをそのまま保持
表 ほかのルーティングプロトコルに再配送したときのデフォルトのシードメトリック(※RIP、EIGRPにConnected、スタティックから再配送するときはシードメトリック1)

 RIP、EIGRPのデフォルトのシードメトリックは無限大です。明示的にシードメトリックの指定をしない限り、無限大の到達不可能なルートして扱われてしまいますので注意が必要です。

 また再配送時には、シードメトリック以外に注意しなければいけない点があります。複数のルーティングプロトコルを動作させていると、ネットワーク構成が複雑になってしまいます。そのため、再配送したルートが最適ではないルートを選択してしまう可能性があります。

 また複数の境界ルータで双方向の再配送すると、ルーティングループが発生する可能性があります。これらを防止するには、アドミニストレーティブディスタンス値の調整や、必要なルートのみを再配送するルートフィルタリングの設定も必要です。

 ルートをフィルタリングするには、「distribute-list」「route-map」「access-list」などの技術を組み合わせて再配送の設定を行う必要があります。複雑な設定が必要になるため、必要な個所のみ再配送の設定をし、再配送の設定が必要ないネットワーク構成にするのが望ましいといえます。

確認問題2

  • 問題

 再配送時に明示的にシードメトリックを設定する必要があるルーティングプロトコルを2つ選択しなさい。

a.RIP
b.OSPF
c.EIGRP
d.BGP

  • 正解

 a・c

  • 解説

 正解はa・cです。RIP、EIGRPのデフォルトのシードメトリックは無限大です。再配送時にシードメトリックの設定をしないと、到達不可能な経路として扱われてしまいます。

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