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» 2012年08月01日 18時00分 公開

10GbE? それとも40Gbps QDR InfiniBand?:いま知っておくべきWebサービスのための高速ネットワーク技術(前編) (2/2)

[松本直人,さくらインターネット研究所 上級研究員]
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1GbEから10GbEサーバへの転換とコスト削減

 前述の比較から検討すると見えてくるのは、「複数の1GbEサーバを単一の10GbEサーバへ集約すると、効率がよさそうだ」ということです(図7)。現在のサーバ性能は大きく向上しており、CPU的に見ても仮想マシンを100台近くまで同時搭載することが可能な状態です。またディスクI/O性能に関しても、SSDの市場拡大により、十分な性能を有するまでになってきました。

図7 高速ネットワーク技術の導入によるサーバ削減効果 図7 高速ネットワーク技術の導入によるサーバ削減効果

 これらの集約効果は初期導入コストもさることながら、24時間稼働するサーバの電気代という意味でも、大きなコスト削減効果が出てきます。また、今後も拡大するであろうWebサービスを考えた場合、中長期にも全体コストの圧縮は極めて重要な要素といえますので、1つ1つ検討していくとよいでしょう。

 最近のデータセンターでは、構内提供回線として10GbEを用意しているところも出てきています。段階的に導入し、最終的にはシステム全体コストを削減する動きになってくると筆者は考えています。

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クラウドを加速させるSSD技術(前編)

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サーバ間の大容量データ転送をInfiniBandで効率化

 次に、高速ネットワーク技術におけるデータ転送性能(Gbps:Gbit/sec)について見ていきましょう。

 この指標値は主に、データセンター内部のサーバ間通信で大きな意味を持つもので、Webサービスを支える根幹的な部分での適用が期待されます。ここでも、1/10/40GbE、FDR10を用いて、イーサネットおよびInfiniBandのIP通信性能を受信サーバ側で評価してみました(図8)。

図8 高速ネットワーク技術におけるデータ転送性能 図8 高速ネットワーク技術におけるデータ転送性能

 ここで注目すべきは、データ転送性能(Gbps)と、それに費やされるパケット処理性能(PPS)です。IP over InfiniBandの場合はMTUサイズが6万5520bytesと、標準的なイーサネットのMTUサイズである1500bytesに比べても大きく、サーバ間での大容量データ転送に適しています(イーサネット・ジャンボ・フレームの最大値は1万6000bytesですが、IPoIB環境に比べるとまだ小さい数字です)。

 Webサービスを考えた場合、フロントエンドサーバとバックエンドサーバの間では絶えずデータのやりとりが発生しています。さまざまなデータが流れるサーバ間接続をInfiniBandに切り替えることで、さらなる効率化を図ることができ、また10GbEに比べても導入コストを低く抑えることが可能となります(図9)。データ転送に費やすパケット処理を軽減することで、応答時間の向上やCPU負荷の軽減も期待できるでしょう。

図9 適材適所で配置する高速ネットワーク技術(例) 図9 適材適所で配置する高速ネットワーク技術(例)

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これから起こる高速ネットワーク技術の新潮流

 ここまで高速ネットワーク技術とその適用について見てきました。現在はサーバ技術の転換点でもあり、さまざまな選択肢が出てきています。その中で今後のWebサービスを支える技術としても大いに期待が持てる、新しいARMサーバについて紹介しておきたいと思います。

 ARM CPUは携帯端末からNASまで幅広く活用されています。低消費電力で動作するARM CPUは発熱量も低く、x86 CPUと比べても多くのメリットがあるためです。コストの面でも低価格化が進み、ARM環境でLinuxサーバを構築するのにも、さほど抵抗がない段階にまできています。

# uname -a
Linux NASC15062 2.6.33.2 #1 Fri Jun 15 04:20:53 CST 2012 armv5tel unknown
# cat /proc/cpuinfo
Processor : Feroceon 88F6282 rev 1 (v5l)
BogoMIPS : 1589.24
Features : swp half thumb fastmult edsp
:

 ARMサーバは単体性能ではx86 CPUに比べようもありません。しかし最近、1つのサーバ筐体に大量のARM CPUを搭載して、群体として低消費電力で高いサーバ性能を叩き出そうという製品群が出てきました。筆者も先日開催されたComputex TAIPEIで併設されたプライベートショーで、これら技術のいくつかに触れてきたばかりです(写真1)。

写真1 Calxeda社のEnergyCore搭載サーバ・コンセプトモデル 写真1 Calxeda社のEnergyCore搭載サーバ・コンセプトモデル

 現時点でARM CPUを大量に搭載したマイクロサーバを入手することはできませんが、入手可能なARMサーバでの単体性能に基づいて、いくつか類推をしてみました(図10)。ここでは、10GbE NICと搭載したサーバの単体性能と1GbE NICを搭載したARMサーバの群体性能を推定し、比較しています。

図10 ARMサーバとx86サーバのネットワーク性能比較(仮説) 図10 ARMサーバとx86サーバのネットワーク性能比較(仮説)

 これらの技術はMicroServerやHyperScalingと呼ばれ、まだIT業界的には定まったマーケットが形成されてはいません。しかし、Webサービスを提供する各企業から熱い視線が注がれています。


 さて、前編では高速ネットワーク技術とWebサービスを取り巻く環境について、性能評価を踏まえて見てきました。後編では、より具体的に性能評価方法や導入課題の洗い出し、最適なシステムアーキテクチャなどについて見ていきます。新しいトレンドとして見えてきているRealtime Webの概念について、先取りしつつ紹介できればと思いますので、ご期待ください。

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