ファイルシステムを意識しようファイルシステムの基礎知識(1)(1/2 ページ)

ハードディスク、あるいはブロックストレージと呼ばれるものにファイルシステムを適用することで、データの保存や整理、利用が可能になる。ではファイルシステムとは何か?本連載では、知っているようで分からないことの多い、このファイルシステムについて基礎から説明する。

» 2012年08月24日 17時50分 公開
[星野隆義シマンテック セールスエンジニアリング本部]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

 コンピュータが持つさまざまな機能のうち、ファイルシステムほど忘れられがちなものはない。コンピュータにデータを格納し使用するために、ファイルシステムは非常に重要な役割を担う。しかし、ほとんどの人にとっては「どんなデータを集めて、どのように処理すべきか」が最重要課題であり、ファイルシステムを意識する余裕などないはずだ。「ビッグデータをいかにうまく使ってビジネスの役に立てるか」という命題に直面したとしても、データの量やデータの中身にばかり目が行って、データを快適に使用する上で必須の機能であるファイルシステムへの配慮が疎かになりがちだ。

 この傾向は、苦労してビジネスに有用なデータを入手し、解析のための高価なアプリケーションを購入しても、迅速な解析ができなかったり、重要なデータの破壊や漏洩が発生してしまったり、という問題をしばしば引き起こす。

 今回の連載では、ファイルシステムに関する知識があまりない方々を対象に、ファイルシステムを理解する上での最低限の基礎知識について、可能なかぎり専門用語を使用せずに解説する。これにより、読者の方々が、必要なデータに高速にアクセスでき、重要なデータを失ったり漏洩したりしないようになれば幸いである。

ファイルとファイルシステム

 ファイルシステムについて説明する前に、「ファイル」とは何か確認してみよう。ファイルとは、テープやDVD、ハードディスク上に配置された情報の集まりである。分かりやすい例を挙げると、「カセットテープに録音された楽曲」や「DVDに焼かれたお気に入りの映画」や「ハードディスクビデオレコーダー」に録画されたテレビ番組」ということになる。

 ファイルシステムとは、これらの「ファイル」を正しく格納し、必要な時に必要な物を使用できるようにする仕組みである。読者の中には、お気に入りの映画が入ったDVDのディスクをジャンルや出演者別にラベル付けし、見やすい棚に格納しておき、観たい映画のDVDをすぐに取り出せるようにしている方もいるだろう。その方は、映画というファイルを格納するファイルシステムを構築しているといっても過言ではない。

 前述の例ではDVDのケースについて説明したが、読者の方々のほとんどは、ハードディスクを内蔵したコンピュータを使用していると思う。したがって、ここからは、ハードディスク上に構築されるファイルシステム、いわゆる「ディスクファイルシステム」について説明していく。今後、ファイルシステムといえば、ディスクファイルシステムを指すとご理解いただきたい。なお、半導体ディスクを内蔵したコンピュータを使用している場合でも、内部に「半導体ディスクを、従来のハードディスクと同じように扱う仕組み」を持っているため、「ディスクファイルシステム」を利用していると考えて差し支えない。

ファイルシステムの役割と機能

 さて、ここからは本連載の主題であるファイルシステムの役割と機能について掘り下げていこう。先の記述の中で「ハードディスクビデオレコーダー」に言及したが、これこそが最も身近にあるファイルシステムの教材といえる。下の図は、筆者の自宅にあるハードディスクビデオレコーダーのメニュー画面だ。

ハードディスクビデオレコーダーにもファイルシステムが構築されている 図1 ハードディスクビデオレコーダーにもファイルシステムが構築されている

 筆者は3人家族であり、各自が好きな番組を録画し、自分専用のフォルダである”ka”と”shio”と”taka”に格納している。また「1人当たり、何時間分の番組を保存できる」というルールも存在する。これはファイルシステムの機能そのものである。

 ハードディスクに録画された番組を単純に格納するだけの機能では、どこにどの番組が何時間分入っているか分からないし、各人がハードディスクをどれだけ使えるかは早い者勝ちで決まる。しかし、ファイルシステムの機能が、上記のようなインターフェイスを提供し、使い勝手を良くするためにユーザー毎にフォルダを割り当てたり、フォルダ毎の使用量を表示したりして、管理方法を工夫している。おかげで、テレビ番組の録画に関しては、筆者宅は家庭円満である。

 筆者の所有するハードディスクビデオレコーダーのディスク容量は500ギガバイト程で、標準的なテレビ番組であれば100〜200程度が格納可能であるが、読者の方々が普段使用しているファイルサーバの場合は少々事情が異なると思う。ディスク容量はあまり変わらないとしても、格納されるファイルの数は数十〜百万個単位、使用するユーザーも数十〜数百人ではないだろうか? こうなると、ファイルシステムに期待される機能は、より複雑で高度になってくる。大切なファイルがどのフォルダに格納されているか失念し、検索機能に救われた経験を持つ方も多いのではないか。しかし、ファイルシステムに期待される役割と機能の根底部分は、ハードディスクビデオレコーダーの場合と同じであることを忘れてはならない。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。