スマホ技術者も知らないと損する「O2O」の基礎知識Androidで使えるO2O技術まとめ解説(1)(1/5 ページ)

O2Oを4つのパターンで整理し、今注目される理由や事例、パーソナル情報との関連性、O2OクライアントとしてAndroidアプリを作成する際に必要な技術などを徹底解説します

» 2012年09月07日 00時00分 公開
[松井暢之, 吉村隆一郎TIS 戦略技術センター/同社 クラウドテレフォニー推進室]

マーケターじゃなくても「O2O」の範囲ぐらい知っておこう

 本連載では、今注目の「O2O」で使われる技術をスマートフォン(特に、Android)のアプリとして実装し、具体的に「O2O」を活用していく方法を解説していきます。

 「O2O」こと「オンラインtoオフライン」は、バズワードとしてすっかりおなじみになった感があります。多くの場合、「O2O」の意味は「オンラインとオフラインが融合し相互に影響を及ぼす購買活動」と説明されますが、これだと範囲が広すぎ、話の論点がぼけてしまいます。

 そこで連載初回としては、まず「O2O」が指す範囲の確認と整理をします。そのうえで、「集客」+「コンバージョン」という観点に絞って、具体的なサービスを見ていきます。

4つのパターンで整理する「O2O」

 「オンラインとオフラインの融合」といってもさまざまなパターンが存在します。図1は、オンラインとオフラインの融合を4パターンの組み合わせとして示したものです。

図1 O2Oの種類

 横軸にはチャネルコンバージョンを置き、縦軸にはオンラインとオフラインを置いています。ここでいう「チャネル」とは、ユーザーとの接触手段です。またコンバージョンとは、チャネルの成果をどういう形でとらえるかを指しています。

 この4種類の「O2O」の特徴を整理してみましょう。

【1】オンラインtoオンライン

 ECサイトで商品を探して購入したり、バナー広告で集客して自分のサイトへ誘導したり、といった行動がこのパターンに当てはまります。

 このパターンの強みは、すべてデジタルな世界で完結するので、最初から最後まで定量的な測定が可能なことです。つまり、どの広告を見て、どこから誘導され、どういうワードで検索して、どの商品を見て、どれだけの金額で決済したかを数字で追うことができます。

 この測定の結果をもって、サイトのデザインを変えたり、広告戦略を変えたり、さらにその効果を測るといったような、定量的な指標を元にPDCAを回すことが可能です。

 一方、このパターンの弱点はオフラインという大きな市場を扱えないことです。経済規模で比較すると、オフラインの世界の方がまだ大きく、オンラインtoオンラインだけではその大きなオフライン市場を相手にできません。

【2】オフラインtoオフライン

 TV広告からの来店やイベントでの購買などが、このパターンに入ります。

 例えば、特売のチラシを見てスーパーに行くといった、昔からある基本的な購買行動ですね。このパターンはオンラインにタッチせずに生活をする層を中心に展開されますが、オフラインチャネルの影響力はまだまだ大きく、無視できません。

 このパターンでは、テレビや雑誌、新聞といった既存のオフラインチャネルを上手に活用することで幅広い世代や層を集客できますが、一方で定量的な効果測定が難しいことが弱点として挙げられます。テレビの視聴率のように「定量的な数字」が出ていても、その中身や母数の質まで追うことは困難です。

【3】オフラインtoオンライン

 「続きはWebで」というテレビ広告のように、オフラインの影響力でオンラインへの流入量を増やすパターンです。

 具体的には、日本のソーシャルゲームがよく使っている手法が当てはまります。芸能人を使ったCMで集客し、そこで集めたユーザーの行動履歴を分析した上で、課金につながる効果的なイベントを行い、高い収益を出しています。さらに、そこでの施策が次のソーシャルゲームの種になり、新たなCMで集客が行われます。

 影響力の強いオフラインチャネルで集客し、オンライン上でエンドユーザーの行動を誘発させ、定量的なデータにできることが、このパターンの強みです。

 一方、チャネルがオフラインであるため、チャネル自体の集客能力を定量的に測るのが難しいことが弱みです。本当に、そのCMを見て流入してきたのか、リーチしたいユーザーの何割に届いていたのかといった、一貫した分析が困難なことです。

 一貫した分析を行うには、次の【4】オンラインtoオフラインと同じく、オンラインとオフラインの間をつなぐ要素が必要です。

【4】オンラインtoオフライン

 効果測定しやすいオンラインでチャネルを構築し、ユーザーとの接点が強いオフラインでコンバージョンを行うパターンです。

 有名な例として、TSUTAYAが会員にケータイ向けクーポンを配り、物理店舗へ集客したケースが挙げられます。

 チャネルをオンラインで構築しチャネルの効果を測定しやすくすることが、このパターンの強みです。しかし、オンラインとオフラインを通した効果を測定するためには、「オンラインとオフラインをつなぐ仕組み」が重要です。

 オンラインで集客できたユーザーのうち何割が実際に来店して購入に至ったのか、この肝となる部分を分析するために、集客と来店をつなぐための仕掛けが必要になります。

なぜ今「O2O」が注目されているのか

 このように「O2O」を大きく4分類してみましたが、「O2O」は今突然出てきた現象ではありません。過去には「クリック&モルタル」というコンセプトもありました。

コラム クリック&モルタルとは

クリック&モルタルは、昔ながらの堅牢な銀行(物理店舗)を意味する「ブリック&モルタル」、オンライン上での活動を意味する「クリック」、この両者を混ぜた造語です。この言葉の起源は、2000年7月出版された「Click and Mortar」の著者デビッド・S・ポトラックです。

同氏が社長兼共同CEOを務める証券会社チャールズ・シュワブは、口座開設や投資相談を物理店舗で行い、取引はインターネット上で行う業態を展開していました。

これにより、インターネット専業の銀行には顧客満足度で勝り、既存の物理店舗主軸の銀行にはオンライントレードでの利便性で優位に立つことで、収益面で大きく差を付けました。ここから、オンライン専業に対する物理店舗の活用戦略としてクリック&モルタルは、大きく注目されました。


 クリック&モルタルは、先に上げた4分類では「【3】オフラインtoオンライン」だと言えるでしょう。では、クリック&モルタルの時代から10年経った現在、なぜO2Oがあらためて注目されるのでしょうか。これにはスマートフォンが大きくかかわっています。

スマートフォンの登場

 スマートフォンが「O2O」の発展に大きく影響を与えているのは、オフラインからオンラインへつながるデバイスとして活用できるためです。どこからでもオンラインにアクセスできるというスマートフォンの特徴により、先ほど上げた【3】や【4】のパターンでの「オフラインとオンラインのつなぎ」の役割を担うことが期待されています。

 スマートフォン以前の「オンライン」は、アクセスできる場所が限定されていました。PDAやノートパソコンは存在したものの、利便性や携帯性、経済性が良かったわけではなく、普及は限定的でオフライン情報を連携できるインフラも整っていませんでした。

 しかしiPhoneやAndroidといったスマートフォンの登場と高速な無線回線の普及で、いつでもどこでも簡単にオンラインへつながるユーザーが爆発的に増加しました。また、位置情報をはじめとするオフラインの情報をオンラインへ連携することも可能となってきました。スマートフォンがマーケティングに与えた影響については、下記記事も参照してください。

スマホはマーケティングを変える
連載:企業のためのスマホ徹底“活用”術(3) 一般消費者に急速に浸透しているスマホ。優れたUIやGPS機能などは収益向上の大きな武器となる。その事例を紹介する
情報マネジメント > 仕事の改善 2011/9/16

 こうした背景があり、急速にオンラインとオフラインの融合が始まり、「O2O」のビジネスが今までより活発的に、かつ効果的に行えるようになっているのです。そして現在、この効果が最も表れているのが「集客」+「コンバージョン」です。次ページで紹介します。

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