DBチューニングのキモはSQLにあらず!?Database Watch(2012年10月版)(2/2 ページ)

» 2012年10月11日 13時35分 公開
[加山恵美@IT]
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Dr.KはNUMAがお好き

 もう1つ「The Microsoft Conference 2012」から、「Dr.K」ことサーバプラットフォームビジネス本部 アプリケーション プラットフォーム製品部 技術顧問 熊澤幸生氏(写真)がSQL Serverの歴史と同氏との接点についてあらためて語ってくれました。

日本マイクロソフト サーバプラットフォームビジネス本部 アプリケーション プラットフォーム製品部 技術顧問 熊澤幸生氏

 SQL Serverの第一世代は1994〜98年にあたり、当初はSybaseからソースコードと技術提供を受けたところから出発したのだそうです。第2世代(1998〜2005年)でSQL Server 7.0や2000が登場し、エンタープライズ領域での実力を付け始めました。さらに第3世代(2005〜2011年)でメモリの上限が飛躍的に上がるなど性能を大幅に強化し、また熊沢氏が着目するNUMAアーキテクチャ(後述)への対応も行われるようになりました。

 ここで熊沢氏は第3世代から第4世代への移り変わりで象徴的な人物を2人紹介してくれました。まずJim Gray(ジム・グレイ)氏。IBMからマイクロソフトへ移り、IT分野のノーベル賞とも言われるチューリング賞を1998年に受賞。SQL Server開発で重要な役割を担っていた人物でした。しかし2007年にヨットで出航して以来、行方不明となってしまいました。とても悲しい事件でした。

 その後、Jim Gray Systems Labを継いだのがDavid J. DeWitt(デビッド・デウィット)氏です。同氏は「カラム・オリエンテッド・データストア」という機能を研究しており、これが後にSQL Server 2012の新機能である「カラムストア・インデックス」として結実したのだそうです。新たな第4世代を担う象徴とも言えるかもしれません。

 一方、熊沢氏自身はどうなのでしょう? 同氏は2005年にSEAS(SQL Server Enterprise Architect Summit)でCATチームから技術を伝授してもらい「チューニング技法が大きく変わった」と話していました。同氏の高い技術力はSEASで得たものが大きいようです。

 その後、証券や為替システムを通じてSQL Serverと関わり、パフォーマンスの推移を見守ってきた同氏。記憶には昨今のヨーロッパにおける金融の混乱による影響と、ソフトウェアのバージョンアップによる改善も交錯しているようでした。

 近年ではSQL ServerがNUMA(non-uniform memory access)対応しているところが気に入っているそうです。NUMAは非均質メモリアクセスともいい、CPUに拡張性をもたらします。「CPUを増やせばその分、きれいに負荷分散するのが好きなところです」と話していました。さらにこう述べています。

 「SQL Serverは18年かけてパフォーマンスをトップレベルの域にまで向上させてきました。(他社製品では)まだNUMAに対応していなくて十分なパワーを出し切れてないものもあるなか、NUMAに関してはSQL Serverがアーキテクチャとして上回っています」(熊沢氏)

 熊沢氏からは次期SQL Serverについて、ほのめかすサービスもありました。次期版を発表するサイクルからすると、そろそろSQL Server 2012の次(例えば「2012 R2」など)となるものが発表されてもいい頃。今年中には海外のイベントで第一報が聞けるかもしれないと予測していました。次にSQL Serverがどのようにどの方向に飛躍するのか楽しみですね。

データベースを「サービス」として利用する

 さて次はクラウド型のデータベースに話題を移しましょう。昨今では自分でサーバを用意しなくても、サービスとしてデータベースを利用できる場が増えてきました。そこでもたらされる変化はどのようなものになるのか、今後何人かに聞いていきたいと思います。まずはブレインハーツ 開発部 シニアマネージャーの海野幸成氏(写真)から。海野氏はセールスフォース関係の開発経験が豊富で、最近ではdatabase.comにも詳しい方です。

ブレインハーツ 開発部 シニアマネージャー 海野幸成氏

 昨年、2011年9月の「Dreamforce '11」にて、セールスフォース・ドットコムはクラウド型のデータベースサービス「Database.com」を発表しました。おおざっぱに言うと、同社のサービスからデータベース機能のみを切り出したサービスです。

 海野氏はサービス発表時の第一印象として「Amazon Web ServiceにAmazon RDS(Relational Database Service)があるように、セールスフォースにdatabase.comというサービスを提供するのはありだな」と歓迎したそうです。ほかにもメリットとして海野氏は次のように話してくれました。

 「フロントはこちら側で作成し、データはdatabase.comに格納するという構成も可能です。システム開発時や小規模なスタートアップ時にもいいですね。Heroku(Rubyアプリケーションを構築できるPaaS)との相性もよさそうです」(海野氏)

 database.comの特徴はあらゆる操作がWebブラウザでできること。コマンドによる操作を全く必要としません。逆にいえばコマンドラインでの操作ができません。

 ここは好みが別れるところですが、海野氏はおおむね歓迎だったそうです。なお実際に背後で稼働しているデータベースが何かは明かされていないとのこと。database.comはあくまでもdatabase.com独自のインターフェイスで扱うようです。

 またセールスフォースのサービス全般にいえることですが、サービスなので利用者側でパフォーマンスを監視し、チューニングする必要はありません。これはメリットです。だからといって、過度に負荷を高めるような利用は制限される仕組みになっています。その指標となるのが「ガバナ制限」。もしこの指標に引っかかってしまうと、“結果が帰ってこない”というトラブルになってしまうため、開発者はガバナ制約に関する利用状況を確認しながら開発する必要があるそうです。

 自社でサーバを運営しているとアプリケーション開発者とサーバ管理者の間で調整できていたことも、サービスで利用するとなるとちょっとお作法といいますか、勝手が変わってくるのですね。

 最後に海野氏は開発者から見たメリットも付け加えてくれました。

 「当初はクラウドに抵抗感があったお客さまもdropboxなどの普及により、心理的な障壁は低くなりつつあるようです。サーバのメンテナンスが不要となると、本来の開発業務に専念できるようになります」(海野氏)

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