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» 2012年10月16日 20時54分 公開

D89クリップ(54):手軽に家電が作れる時代に小さな会社だからできること (3/3)

[岡本紳吾,hatte.Inc]
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おばかアイデアを“カタチ”にするクラウドファンディング

 最後のスピーカーは、Cerevoの岩佐琢磨さんだ。Cerevoは「ネットと家電をもっと豊かに便利にする」をモットーに、Cerevo CAMやLiveShellといった製品をリリースしている会社だ。

 ハードウェアはコピーしようと思えば簡単にコピーできる。iPhoneのそれがたくさんあるように、自分たちの製品もコピーされるかもしれない。が、ハードをコピーしたところで、その裏側にあるものがなければ便利に使えませんよという気持ちで、ものづくりをしているのだそうだ。

Cerevoの岩佐さん。このときはフライトシミュレーターをHUDにつないだ際のジェスチャーをしていた

 LiveShellは、パソコンを使わずに、ビデオカメラの映像をUstreamに送信できるガジェットだ。回線が切れてしまっても再接続時に自動で復帰するなどの機能を有し、プロの現場での要求にも応えられるLiveShell Proもラインアップしている。

 LiveShell Proは5万4999円と、同程度スペックの競合他社製品(15〜20万円程度)よりもかなり安い価格設定となっている。

 今はUstream対応版のみを作っているが、ほかのサービスにもすぐに対応できる。実際、ニコニコ動画にも配信可能なように作られている。

LiveShellは安価にリアルタイム送信環境を構築できる
LiveShell Pro。プロユースの環境をかなりの低予算で実現可能だ

 岩佐さんはCerevoを起業する前、メーカーの社員として勤務していた。自動車は好きだったが、自動車メーカーの意思決定などのスピード感の遅さは嫌で、独立する気合が当時はなかったため、取りあえず電機メーカーに就職したそうだ。

 仕事しているうち、量産することよりも、何かを作り上げることに向いていることに気が付いた。そして、大手の家電メーカーはネット家電には向いていないと感じた。

 岩佐さんは家電業界は近く、服飾業界のように、個人の趣向に合わせた製品が求められるようになっていくだろうと予測する。であれば、誰かのプラットフォームの中でやるより、自分たちが作ったものをお客さんに触ってもらう方が楽しい、と考えた。

 ハードウェアメーカーはExit(売却)した際、金額が非常に大きくなる傾向にある。そして、ソフトウェアやWebサービス系はライバルが多過ぎる。TechCrunchのCrunthBaseでハード対ソフトで会社数を比較したところ、ハード1に対してソフトは19。実にライバルの数は19倍になるのだ。

 この競争率の少なさは、ハードウェアメーカーには有利に働くだろう。

 2000年ごろは、スタートアップにはたくさんの資金が必要で、在庫もたくさん持たなければならず、販路の開拓も厳しかった。それが2008年になると、資金も1〜2億で足りるようになり、在庫も少なくていい。販路は展示会などを活用しやすくなったこという。資金調達も、数千万円程度であれば、過去に比べて非常にやりやすくなっているのだそうだ。

 海外のハードウェアスタートアップのJawboneGoProの例を挙げ、これらの小規模な会社は、大手のシェアを斬ってこられたと強調した。

GoProなどのこれらのメーカーは、小さい会社なのに大手のシェアを奪う力を持っている

 クラウドファンディングは国内にもあるが、Kickstaterに比べると金額はかなり少ない。また、注意すべき点もある。

 クラウドファンディングはメディアとのリレーションが難しく、見積もりに失敗していると、後になって泣きを見ることになる。そして、お金を先に集めているのでプロジェクトを途中でやめることも難しいのだ。

 海外のクラウドファンディングの中には、知識がないのに取りあえず募集だけしているものもよく見掛けるそうだ。これに比べれば、あらかじめきちんと準備をする日本人の方が、向いている。ハードウェアを作るのがいいといっても、何でもいいわけではなく、話題性のあるジャンルは限られており、特に文具系は注目される傾向にあるそうだ。

KickstarterのTOP20のうち、9つがガジェット類

 そして、クラウドファンディングを利用する際は、調達の規模が大きいKickstarterに出せばいいというわけではない。Kickstarterにはヤフオク並みにたくさんのプロジェクトが並んでいるため、そこでいかに目立てるか、そういう要素がないと飛び出すのは難しい。

 日本でものづくりを進めていくと、どうしてもコストが高くなるし、時間がかかる傾向にある。そこで岩佐さんは、アジア圏に目を向けた。安くて早いが品質に問題があることも多いが、そこはしっかり指導し、アジアパワーを活用すれば、コストやスピードの面も何とかできるそうだ。

 筆者はこのイベントに参加して、ふつふつとものづくり熱が再燃し始めた。これまでソフトやWebサービスの開発を行ってきた人たちなら、ハードウェアの知識を手に入れるだけで、製品を開発し、それを生かすサービスとセットで売り出すことも可能になる。

 わたしたちのちょっとしたアイデアと遊び心が、人々の生活を大きく変えることになるかもしれない。

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著者プロフィール

岡本紳吾(おかもとしんご)1975年大阪生まれ。2000年頃よりAdobe Flash(当時はmacromedia)を使ったコンテンツ制作を始め、Flash歴は異様に長い。自他共に認めるFlash大好きっ子。2008年より活動の拠点を東京に移し、2011年に独立。WEBプロデュースと制作と山岳メディア運営の会社、hatte Inc.代表取締役。

Twitter:@hage、Facebook:shingo.okamoto


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