今後はNexusやUCSにNetScalerが載っていく「Citrix Synergy 2012 Barcelona」で聞いた

» 2012年10月19日 06時00分 公開
[大津心,@IT]

 シトリックスは10月17日(現地時間)、スペイン・バルセロナで「Citrix Synergy 2012 Barcelona」を開幕した。ここでは同イベントで機会を得たインタビュー内容について紹介したい。

デスクトップ仮想化でPOSと業務PCを安全に切り分け

ストワードソン氏写真 インタビューに答えるクレイグ・ストワードソン氏

 最初に紹介するのは、XenClientユーザーである「LIFETIME FITNESS」でITデスクトップマネージャを務めるクレイグ・ストワードソン(Kraig Stewardson)氏。LIFETIME FITNESSは、全米105カ所で超大型フィットネスを運営する企業。フィットネス施設の中には10万平方フィートの敷地内にジム施設だけでなく、スパやカフェ、プール、屋内ゴルフ場なども備えている場所もあるという。

 同社では105の施設にそれぞれ平均50台、計5000台のクライアントPCを管理しており、そのうち1800台に「XenClient」を導入済み。今後順次すべてへ展開していく予定だという。

 LIFETIME FITNESSでは、各施設で従業員が通常業務でPCを活用しているが、それらのPCを会費等を精算する際のPOSとしても活用するため、XenClientをクライアントPCに導入し、POS用と通常業務用に分離。それぞれが完全に交わらないように設定している。

 「会費制なので、現場で常に決済が必要なわけではないが、特別な催しを実施した際にクレジットカード決済ができなければならない。クレジットカード情報を扱うので、業務用をそのまま代用する、という選択肢もあり得なかった。そこでそれぞれを完全に分離できるXenClientに注目し、導入した」(ストワードソン氏)

 1800台あるXenClientは、XenClient Managerで管理。従来はほかの管理ソフトなども併用していたが、現在ではほぼXenClient Managerだけで管理できていると言う。XenClientを選んだ理由について、ストワードソン氏は「5000台を超えるクライアントPCには、ラップトップやデスクトップなど多様な端末が存在しているが、それらのドライバなどをハイパーバイザが吸収してくれるため、イメージの種類が大幅に減り、管理が楽な点が大きい。イメージの種類が少ないため、バージョンアップ時などのテスト工数も大幅に減る」と説明した。

今後はNexusやUCSにNetScalerが載る

スミス氏写真 シトリックス クラウド・ネットワーキンググループ 製品担当ディレクター グレッグ・スミス氏

 続いて、NetScalerを含むクラウド・ネットワーキンググループの製品担当ディレクター グレッグ・スミス(Greg Smith)氏に話を聞いた。

 NetScalerは負荷分散機能を中心に、アプリケーションの高速化や外部からの攻撃から守るセキュリティ機能なども備えており、「ADC(アプリケーションデリバリーコントローラ)」と呼ばれる分野における有力製品の1つ。昨今のデータ爆発によって需要が急拡大しており、「ここ数年で10倍の売上規模に拡大している」(スミス氏)。

 また、今回のSynergyで発表されたシスコとの連携強化では、かなり大きな進展があったという。同氏は、「シスコもADCを永年にわたって自社で開発し、販売していた。しかし、昨年の提携以来NetScalerとの関係を強化していたところ、その良さを認め、2週間前に自社での今後の開発を断念したことを発表した。今後、シスコはNetScalerを推薦していく」といった発表背景を説明した。

 さらに詳しく両社の関係を説明すると、今回のパートナーシップ強化はフェイズ1に当たり、シスコのユーザーがADCを必要とした場合、シスコはユーザーにNetScalerを推薦する。しかし、シスコはリセラーにはならず、販売はあくまでもシトリックスが行う。今後予定されているフェイズ2に進むと、シスコのスイッチである「Cisco Nexus」や、サーバの「Cisco UCS」にNetScalerのソフトウェアを組み込んでいく予定。今後もNetScalerの主な開発はシトリックスが行い、営業やマーケティング活動は両社で協力して行っていく。

 スミス氏に今後のNetScalerの方向性を聞いたところ、「今後、ネットワークインフラの統合化がますます進んでいくだろう。例えば、現在は1アプリケーション毎にADCが存在し、サイロ化している。今後は、サイロ化されたADCを統合し、ネットワーク全体にADCを効かせていく方向に進んでいくだろう」と予測した。

急激に成長するCloudstackのオープンソースコミュニティ

マカフェーティ氏写真 シトリックス クラウドプラットフォームグループ製品担当シニアディレクター トーマス・マカフェーティ氏

 最後は、シトリックスでクラウドプラットフォームグループの製品担当シニアディレクターを務めるトーマス・マカフェーティ(Thomas McCafferty)氏の話を紹介する。

 マカフェーティ氏によると、シトリックスがオープンソース化したCloudstackのコミュニティが最近大きく成長したと言う。現在、Cloudstackのオープンソースコミュニティには3万1000人が参加しており、ベンダ数も350社を超えた。また、Cloudstackで作られているクラウドの数が1カ月当たり100クラウドから、現在では5倍の1カ月当たり500クラウドへ激増したという。コミュニティメンバーも、オープンソース化当初はシトリックスの社員が90%を占めていたが、現在では30%にまで割合が低下しており、「オープンソースコミュニティとして健全に成長している」(同氏)状況だという。

 また、CloudStackとシスコ製品の管理方法については、「CloudStackの管理コンソールからUCSをコントロールできるようにしてある。具体的には、UCSのAPIに対応している。クラウドの視点で考えると、ハードウェアを直接管理するのはナンセンス。従って、この方法が最適だと考えている」と説明した。

 また、日本ではエンタープライズ市場でVMwareが非常に人気がある点について、「いま、エンタープライズにおけるクラウド市場は非常にホットだ。ワークロードの視点で考えると、ERPなどの旧来型アプリケーションと、次世代のAmazon型アプリケーションの2種類がある。エンタープライズ市場においては、この両方のワークロードに配慮しなければならない。しかし、両者の要求仕様が大きく異なるので、両者に対応することは非常に難しい。例えば、次世代のモバイルアプリ開発用のインフラを作る際、コストがかかりすぎてはいけない。その点、シトリックス型クラウドの場合、オープンなので非常に選択肢が多い。一方、VMwareは自社のパッケージ以外では自由に使えない点が多い。この点でエンタープライズ市場でも当社の良さが伝わっていくのではないか」と強く主張した。

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