後発の企業向けクラウドサービスはどう差別化できるかエヌシーアイがvCloud Suite採用のIaaSを発表

エヌシーアイは11月5日、企業向けのプライベートクラウドサービスである「ZETA Cloud」を12月12日に提供開始すると発表した。しかし、データセンター事業でも企業向けクラウドサービスでも後発の同社は、どのように差別化していくのだろうか。

» 2012年11月05日 20時14分 公開
[三木 泉,@IT]

 日商エレクトロニクスのグループ会社であるエヌシーアイは11月5日、企業向けのプライベートクラウドサービスである「ZETA Cloud」を12月12日に提供開始すると発表した。まず、IaaSの「ZETA Cloud Private」と、これをベースとした災害復旧サービス「ZETA Cloud Recovery」の2種類を提供する。

 エヌシーアイは、日商エレクトロニクスのデータセンター事業と、運用監視サービスを提供してきたインフォリスクマネージの事業を統合した企業。「国内最後発のデータセンター事業者」(日商エレクトロニクス 取締役常務執行役員 営業部門長 鈴木達氏)だという。企業向けのクラウドサービスへの参入という点でも、先行している事業者は多数存在する。

 では、どのように差別化していくのか。

 まず、ZETA Cloudではヴイエムウェアの「vCloud Suite」を採用している。vCloud Suiteは、ヴイエムウェアが今夏の米国サンフランシスコにおけるVMworldで発表したばかりの製品スイート。仮想化製品VMware vSphereの最新バージョン「VMware vSphere 5.1」をベースに、マルチテナントクラウド運用管理ツールの「vCloud Director」、分散ファイアウォールやネットワーク分割をはじめとしたセキュリティ製品群の「vCloud Networking and Security」、災害復旧ツールの「vCenter Site Recovery Manager(SRM)」などの最新版をパッケージ化したものだ。エヌシーアイのソリューション事業本部 技術ソリューション部 部長である和田倫之氏は、企業向けクラウドサービスを設計するにあたって、ハイパーバイザはVMware ESXiを採用することは決めていたが、運用ツールについてもヴイエムウェア製品を使うことにしたのは、最新版においてユーザー用の運用ポータルやテナント分離機能などの重要な改善が見られたからだという。

 ZETA Cloudは実際に、vCloud Suiteに含まれる機能を大幅にサービスメニューとして組み込んでいる。例えばvMotion、VMware HA、DRSなどは標準料金に含まれている。ZETA Cloud RecoveryはSRMを全面的に採用。それだけでなく、昨年提供開始のSRM 5.0における新機能である「vSphere Replication」を利用している。通常はデータ複製対象拠点において同一のストレージ装置を対向に設置しなければならないが、この機能を使えば、異種のストレージ装置であっても柔軟に複製が実行できる。

 ZETA Cloudでは、この最新のvSphere製品群による統合基盤の上で、複数企業(複数テナント)の仮想マシンおよびデータを運用する。それぞれの物理サーバおよびストレージ装置上で、複数のユーザー組織の仮想マシンやデータが併存することになるが、各ユーザー組織の仮想マシン群は、分散セキュリティ機能によって他のユーザー組織の仮想マシン群と分離される。データに関しても、各ユーザー組織専用のボリュームが割り当てられる。こうした仕組みにより、プライベートクラウドサービスではあっても、パブリッククラウドサービスのようにスモールスタートが可能で、利用開始後のリソースの増減も容易に行えるという。

 興味深いのは、今後提供予定のマルチデータセンター対応。ZETA Cloud Privateは、当初大阪のデータセンターで提供開始されるが、2013年3月までに横浜、北海道・石狩のデータセンターも選択できるようになる。さらに2013年春には、これら3拠点の間でデータをデフォルトで複製する完全冗長化機能を提供するつもりという。

最大の差別化ポイントは統合運用監視

 一方でエヌシーアイによると、ZETA Cloudの最大の差別化ポイントは、統合運用管理にある。これは、運用監視サービスを提供してきたインフォリスクマネージのノウハウを生かした機能。1つのコントロールパネルで、ZETA Cloudの仮想マシンと、ユーザー企業の社内データセンター内のサーバを、ユーザー企業の担当者自身が統合的に監視できる。当初は死活監視とリモートコンソール機能が中心。だが、2013年春には各仮想マシンのCPU/メモリ利用率監視や、ユーザー企業のVMware環境とZETA Cloudとの間でのライブマイグレーション機能を提供の予定。

 エヌシーアイはZETA Cloudで、初年度100社の獲得を目指す。クラウドサービスの提供に加え、上記のコントロールパネルも活用したユーザー企業の社内データセンターを対象とした運用監視代行ビジネスも、積極的に推進していく。同社は11月6〜7日にヴイエムウェアが開催するVMware vForumにも出展する。

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