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» 2013年03月06日 00時00分 公開

これから伸びる業界に乗り遅れるな!(1):「開発者を探せ」――企業向けスマホビジネスが熱い (2/2)

[福村志郎,テクノブレーン]
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ポテンシャル採用を狙うA社、独学のWeb技術を生かしたいB氏

 しかし、A社の採用活動は順調ではありませんでした。

 要因は知名度がまだ低いことと、スタートアップベンチャー企業であることでした。また、A社が求めるスキルは、実務で使っているエンジニアがまだ少ない状況です。即戦力となり得るエンジニアは、現職にとどまっているか、知名度が高く規模も大きいコンシューマ向けサービス企業へ転職するかのどちらかがほとんどだったのです。

 そこでA社は、ポテンシャル採用を狙いました。高い技術力が問われる領域ではありますが、社内に蓄積されたノウハウを活用した入社後の育成を視野に入れ、即戦力にはならなくても素養のあるITエンジニアを探し始めたのです。

 A社の依頼を受けて、私が真っ先に思い出したのは、業務系のシステム開発を中心に担当していたB氏のことでした。

 B氏はプログラミングによるものづくりが好きで、学生時代からJavaScriptを中心としたWeb技術に親しみ、個人でTwitter連携アプリ等を多数制作していました。しかし、業務としてはWeb系ではなく、中堅ソフトハウスでレガシーシステム保守、改修の短期案件に携わっていました。

 彼は仕事においても、今後さらに必要とされるであろうWeb技術を用いてものづくりをし、技術力を高めたいとの思いを持っており、それを追究しにくい現状を打破したいと考えていました。

 B氏は新たなステージを求め、ソーシャルゲームを開発しているようなコンシューマ向けWebサービス企業を目指して転職活動を始めました。しかし、一部は厳選採用に移行しつつあるコンシューマ向けサービス企業への転職には、ある程度の実務経験が要求されることが多く、Web開発担当ではないB氏は苦戦していました。

 私はB氏と膝を突き合わせて現状、今後目指したい方向、現時点の課題を整理しました。そして、やはりA社はB氏の希望をかなえられる環境であり、B氏は業務経験がなくても意欲やポテンシャルの面でA社の求める人材であると考えました。

 そこでB氏にA社のことを伝え、まずは担当者と会ってみることをお勧めしました。B氏は予想外の提案に少し驚きつつも、興味を持ったようでした。

 A社は東京にあり、B氏は大阪在住だったのですが、A社の社長の大阪出張に合わせてB氏との面談をセッティングしました。後日、今度は東京でCTOとB氏が面談しました。その中で双方の考えが合致し、B氏はA社に転職することになりました。

 A社が「B氏を採用したい」と考えたポイントは、B氏の技術的な興味の方向とポテンシャルであり、B氏が「A社に参画したい」と考えたポイントは、A社の技術力の高さと将来性でした。現在、B氏はA社でスキルを磨きつつ、大いに活躍しているようです。

成長する企業向けスマートデバイス活用市場。チャンスはあるか

 私がA社を提案するまで、B氏はA社のことを知らず、また企業向けスマートフォンアプリ開発というビジネス領域についても、転職先として全く考えていなかったそうです。

 A社とB氏の双方が、互いを知るための機会を惜しまなかった結果、成功した事例だと思います。A社が実務経験者の採用にこだわり続け、B氏がコンシューマ向けWebサービス企業以外の可能性に思い至らなければ、この出合いはなかったでしょう。

 本事例についてまとめると以下の通りです。

  • A社:将来性のある市場で高い技術力を発揮し業績が拡大しているにもかかわらず、知名度が高くないこと、スタートアップベンチャー企業であることから採用が進んでいなかった
  • B氏:独学のWeb技術を生かし、ものづくりで技術力を高められる環境を求めていたが、実務経験の不足から転職活動に苦戦していた
  • 結果:双方の考えとニーズが合致し、採用・転職に至った

 A社のケースは一例です。同様の企業向けスマートデバイス活用ビジネスを展開している企業で、ITエンジニアの採用を意図するところが増えています。ある企業では、スマートデバイスで利用する業務用アプリケーションを企画開発し、クラウドを活用した業務利用のスマートデバイス管理ツールも含めて提供しています。同社ではAWSを利用したクラウドサービスを展開しており、アプリケーション開発だけではなくインフラ領域でもITエンジニアを求めています。

 企業向けのスマートデバイス活用市場は、今後さらに注目されると思います。同時に、そこで必要とされるITエンジニアも増えてくるのではないでしょうか。この業界への転職を考えた場合、高い技術力が求められる領域ではありますが、現時点でのハードルは決して高くはない状況です。

 「現在コンシューマ向けのWebサービス開発に携わっているが、今後は企業向けの付加価値も提供したい」という志向の方はもちろん、紹介事例のB氏のように「先端のWeb系技術に興味があり、スキルを高めていきたい。しかし現職ではなかなかかなわず個人で活動するにとどまっている」という方、「今後伸びる業界で新たなチャレンジをしたい」という志向の方にも、これからチャンスがあると思います。

 コンシューマ向けのスマートフォンサービス領域も面白いと思いますが、企業向け領域も、プロジェクトの金額的な規模や将来性を見ると、業務としても市場としても非常に面白いと思います。上記のような志向をお持ちの方は、注目して動向をチェックしてみてはいかがでしょうか。

筆者紹介

テクノブレーン

福村志郎

IT業界および製造業界のエンジニアを主とした人材サーチ会社にて、候補者のリサーチとキャリアコンサルティングに従事。関西地方の製造業向けサーチ、スカウトを担当した後、現在は関東地方、九州地方のWebサービス会社やITコンサルティング会社向けのスカウト、キャリアコンサルティング活動を行っている。



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