連載
» 2013年03月15日 15時04分 公開

UXClip(23):さまざまなデバイスがWebと結び付いていく (2/3)

[仲 裕介,NTTコミュニケーションズ]

2.ウェブ連携で実現するこれからの放送サービス〜Hybridcast開発の取り組みから〜 

松村 欣司(NHK 放送技術研究所 次世代プラットフォーム研究部)

 テレビのスマート化が進み、テレビは放送を見るだけでなく、ネット上のさまざまなサービスを楽しめるデバイスになりました。NHK放送技術研究所松村氏は、NHKが実用化を進めているHybridcastを例に、放送とWebを連携することで実現するさまざまなサービスと、国内で標準化が進んでいるHTML5ベースの放送通信連携テレビの技術仕様を紹介しました。

Hybridcast開発の背景

 松村氏は「デジタル放送への完全移行が昨年完了したが、映像コンテンツに関してテレビを使わずにパソコンやスマートフォンで視聴する機会が増えてきている。テレビ業界としても、放送と通信を連携させてコンテンツ提供を行う新しいプラットフォームが必要になるという考えの下、NHKではHybridcastの開発を進めている」と述べました。

テレビの進化

 次に松村氏はネットと融合するテレビの進化を挙げて、SmartTV、HybridTVという新しいテレビの概要について説明しました。

  • SmartTV
    • テレビメーカーやネット企業主導型
    • テレビ機器とネットの融合
  • HybridTV
    • 放送局主導型
    • 放送とネットの融合

 HybridcastはHybridTVの1つに分類されるとのことです。

Hybridcastの開発コンセプト

 松村氏は、コンテンツ制作者はインターネットと連携した番組作りを意識しているが、テレビの性能が追い付いていないという現状を打開するために、テレビ自体の機能を高機能化させ、ネットとより連携したHybrid型サービスを提供するための、Hybridcastの開発コンセプトを語りました。

 講演で説明された、Hybridcastの開発コンセプトならびに、提供する機能の概要は以下の通りです。

  • 開発コンセプト
    • 従来のテレビの上にネットの情報を載せる
    • テレビ自体の高機能化(HTML5ベースのブラウザを搭載、放送と連携する機能を実装)
    • テレビとスマートフォンやタブレットを連携
    • 放送局以外のサービス事業者も自由なサービス提供が可能
  • 提供する機能
    • Web上のソーシャルなサービスを放送と連携して利用
    • 放送映像にネットのコンテンツを合成する
    • セカンドスクリーン(携帯端末を活用)と連携したサービス

HybridcastでHTML5を採用した理由

 松村氏はHybridcastにHTML5を採用した理由として、国際標準の規格として策定が進んでいる点と、オープンプラットフォームであることからテレビへの搭載コストや、サービス・アプリ制作コストが下げられるという点を挙げました。また、テレビ業界として独自の規格を作ってしまうと、その規格の進化はその時点で止まってしまうが、HTML5の仕様を取り入れることで、進化の早いWebの世界に合わせてテレビの規格も継続して進化できるとも付け加えました。

テレビに関するHTML5の標準化

 松村氏はHTML5をテレビで使うための追加規定について、一般社団法人IPTVフォーラムで2012年1月から議論を開始し、v1.0の仕様を今年度中に公開予定であると述べました。

 また、同氏は、以下の通りテレビというデバイス特有の要件や制約条件を挙げ、HTML5のテレビ向け追加仕様を策定する上では、考慮が必要になると強調しました。

  • テレビというデバイスとしての要件
    • 画面:横長16:9 1920*1080(4K、8K)への対応
    • 操作:リモコン主体の操作
    • 性能:処理速度、描画速度、メモリ(RAM、不揮発)……今のテレビはまだ性能面で厳しい
    • 使い方:複数ユーザー(家族)で同時視聴……個人情報を保持するパソコンのような使い方は向かない
    • 連携:スマートデバイス(タブレット・スマートフォン)との連携
  • 放送というサービスならではの要件
    • デジタル放送信号内データへのアクセス
    • 放送番組との連携、同期
    • チューナー機能へのアクセス
    • 放送映像に放送事業者以外が制作したWebアプリをオーバーレイする際の課題

 次に、同氏は、テレビ上で動作するWebアプリには、番組連動アプリと独立アプリの2種類について、それぞれの特徴を説明しました。

  • 番組連動アプリの特徴
    • 番組に合わせたアプリ実行
    • 番組に合わせた情報提示
    • 番組と同期したアプリ動作(データ放送と同じ仕組み)
    • 外部デバイスとの連携
    • テレビ画面全体がブラウザとなりCSSを使用して自由にカスタマイズ可能

 しかし、放送と連携するアプリについては以下のような課題も挙げられていて、来年度試験的にサービスを開始するHybridcastでは、放送局から認可されたアプリしか当面動作しない仕組みになると説明しました。

  • 番組連動アプリの課題
    • 番組本編が隠れてしまう
    • 番組内容と異なる内容を表示することによるメディアの信頼性低下
    • スポンサー対応
    • 著作権問題
    • 個人情報管理

将来に向けて

 松村氏は、放送とWebの連携で今後取り組みたい課題として次の2点を挙げました。

(1)放送とネットの精密な同期

 同期表示用ストリーミングサーバと時刻情報を連携して、同時に複数のカメラの情報を1つの画面に表示する……など。

(2)アプリを自由に作れる環境とユーザーが好きなアプリを実行できる仕組み

 アプリ制作に関する課題を解決し、アプリ開発提供者が自由にアプリ配信し、ユーザーが自由にそれを実行できるようにする仕組みづくり。

 最後に同氏は、「来年度から試験的にサービスを開始していくので、Webの業界とは今後も積極的に関わっていきたい」と話し、講演を締めくくりました。

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