災害対策、最低限のコストで具体的に考えるならこうしよう

事業継続や災害対策に関するコラムをシリーズで提供している「データ管理のお悩み解決コーナー 〜事業継続/災害対策編〜」。今回は、具体的な対策を練る際やすでに実施している対策を再検討する際に、注意したほうがいいポイントを中心にお届けする。

» 2013年03月19日 10時00分 公開
[ITmedia]
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二重化などの対策は進んでいるのだが……

 前回のコラムで実施した読者調査を見ると、会社で取り組んでいる施策としては、「バックアップデータを離れた場所に保管」が22%、「同一拠点内でシステムを二重化」が22%、「異なる拠点にまたがってシステムを二重化」が16%と、一般的なバックアップを超えた対策を実施している企業は多い。

事業継続/災害対策ですでに取り組んでいる施策

 しかし、「バックアップデータを離れた場所に保管」は、バックアップテープを遠隔地に搬送しているなどの限定的な対策にとどまっているケースも多い。「同一拠点内でシステムを二重化」は基本的に重要だが、災害対策としては効果がない。「異なる拠点にまたがってシステムを二重化」も、非常に限られたシステムが対象であることが多い。

 別の質問としてストレージインフラにおける課題を聞いたところ、「バックアップ処理に時間がかかる」「データ量の増加に対応できていない、または今後対応できない可能性がある」の2つの選択肢が多くの回答を集めた。

 また、自由回答では、リカバリに長時間がかかる、遠隔地へのバックアップが実現できていない、外部データセンター/クラウドサービスを活用したい、といった回答が目立った。そして、災害対策にかかるコストを根本的な問題として指摘する回答者が多かった。「初期導入時に(システムを)二重化しても、運用中の構成変化で、有事の際に機能しないことがある」「むしろ対策を減らして、コスト削減を行おうとしている」といった回答もあった。

対策は1か0かではない

 上記のアンケート結果を踏まえ、コスト効率よく災害対策を具体化する際の留意点を挙げてみたい。

 まず総論として、何にもまして重要なのは、「災害対策は1か0かではない」という認識だ。その意味はいろいろある。だれもが知っていることだが、すべてのデータやシステムを災害から守ることはできないし、その必要はない。従って、データのみを守ればいいもの、データとシステムを双方守らなければならないもの、どちらも守らなくていいものを識別することになる。

 また、これも多くの読者がすでに理解していることだろうが、データやシステムによって、どれだけ早く復旧できなければならないかは異なる。重要なデータであっても、例えば1週間以内に復旧できればいいものがある。これらを分類する作業が必要だ。

 この当たり前の作業をする際に、考慮すべき点がある。1つは、災害対策を一度に行う必要はないということだ。現実的な進め方として、優先順位を決め、少しずつ実行することを考えたい。

 「そうは言っても、いつまでたっても災害対策に予算が出るわけがないのだから、同じことだ」と考える人も多いだろう。そこで、2つ目のポイントを提示したい。それは、「すべての対策を、災害対策としてやる必要はない」ということだ。

 災害対策として予算が下りないのであれば、ほかの予算で行うことが、災害対策につながればいい。恰好の例は、サーバ仮想化だ。サーバ仮想化の導入は急速に拡大している。これが災害対策の予算で行われることはほとんどないが、実際には災害対策を大きく前進させることに直結する。

 システムとデータを仮想マシン、仮想ディスクの形式でバックアップするだけで、大きな可搬性が生まれる。このバックアップデータをどこに持っていったとしても、システムとデータの双方を容易に再現することができる。以前は災害対策というと、同一機種のサーバハードウェアを遠隔地に設置しなければならなかったが、仮想化の世界では、これがまったく不要だ。極端な話、ユーザーPC上に復旧することも、論理的には不可能ではない。

 一方、災害対策に関連した各種の製品やサービスの価格・料金は下がってきている。バックアップ装置には安価なものが出てきたし、クラウドサービスも広がってきた。こうした、コスト低減に直結する技術進化を、積極的に生かしていくべきだ。

保護レベル別に対策を考える

 では、各論として、システムやデータに求められるさまざまな保護レベルに応じ、具体的な対策を考えたい。

「テープが一番安い」は変わりつつある

 まず、テープ搬送によるバックアップは、時代遅れになったわけではない。現在においても選択肢として重要だ。だが、近年は、WAN通信サービスおよびハードディスクドライブの価格低下が著しい。しかも、テープによるバックアップに比べ、ディスクへのバックアップは、バックアップ作業自体を時間短縮できるだけでなく、復旧についても確実で短時間のうちに行えるという、大きな利点がある。

 どうしてもテープがいい、あるいは法的規制などの理由でデータをテープに残さなければならないという場合は、複数の業務システムを統合的にバックアップすることで、コスト効率を上げることを考える。

バックアップソフトを有効に使う

 次の保護レベルは、遠隔拠点に対し、データをリモートバックアップするというもの。バックアップソフトウェアには一般的な製品を使えるため、運用を変える必要はない。

 バックアップソフトには、さまざまな価格帯の製品がある。だが主要製品は、比較的低価格であっても、高度な機能を備えるようになっている。例えば、バックアップデータの重複排除機能である。これを活用することで、遠隔バックアップの際にWAN回線を流れるデータの量が大幅に減る。太い回線を用意しなくてもBCP/DR対策ができる可能性が生まれる。上記の対策でも、バックアップデータ形式を仮想マシンとしておけば、復旧時間を大幅に低減できる。クラウドサービスへのバックアップも、慎重に選択しさえすれば、非常に有効なものとなり得る。

安価なバックアップストレージ装置の活用

 コスト効率を追求すると、本番拠点をデータセンター、あるいはエンタープライズグレードのクラウドサービスに移行したほうがいいという判断も生まれるかもしれない。その場合でも、重複排除機能を備えたバックアップストレージ間の遠隔複製などにより、データの冗長性を確保することができれば安心だ。バックアップストレージ装置も、この2、3年で安価な製品が登場してきている。さらに上記の場合と同様、重複排除によってWAN回線を流れるデータの量を減らせるため、災害対策のために回線コストが大きな負担となることはない。

ストレージ統合を生かした遠隔複製

 より高いレベルの保護が求められる場合には、まずストレージ装置へのデータの統合度を高めたうえで、ストレージ自体の遠隔複製機能を用い、待機データセンターのストレージにデータを定期転送できる。本番拠点がダウンした場合には、待機サーバをすぐに立ち上げ、業務を再開する仕組みを作れる。サーバ仮想化のために本格的なストレージ装置を導入しているのであれば、その機能を最大限に活用することで、コストを抑えた有効な対策が実現できる可能性がある。

データベースやミドルウェアによるリアルタイムデータ保護

 これ以上の保護レベルを実現したいなら、データベースやデータベースミドルウェアのミラーリング機能を用いて、トランザクション単位の同期をとることが考えられる。こうした場合でも、ベストエフォート型の、比較的安価な通信サービスを使える可能性がある。通信サービスは帯域幅、回線品質などによって、料金が大きく異なる。ここは節約のしどころでもある。

 最近では、データベース製品の機能で、ミラーリングを行いながらも、待機側のデータベースをデータ参照やデータマイニング目的で使えるものが出てきた。このように、待機側リソースの有効活用という点でも、選択肢は大きく広がりつつある。

究極のコスト削減策とは

 繰り返しになるが、災害対策コスト最小化のカギは、それ以外の予算で調達できる製品やサービスを最大限に活用することだ。また、サーバ仮想化をはじめとする関連IT技術の進化を見極め、積極的に取り入れることを考えたい。

 特に、バックアップ製品やストレージ製品は、近年非常に大きく進化してきた。特に価格低下と機能の充実は目覚ましい。これらを使いこなすことを考えると、コスト効率のよいデータ保護への道筋が見えやすくなるのではないだろうか。

@IT 富士通ETERNUS 読者アンケート

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年6月18日

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ジーンズカジュアルショップを全国展開するライトオンでは、東日本大震災を契機に基幹業務を担うSAPシステムを富士通の堅牢なデータセンターに移設。合わせて行ったリプレースによる新システムではディスクアレイ内で取得した一次バックアップデータを毎日「ETERNUS CS800 S3 デデュープアプライアンス」に二次バックアップ。事業継続性の向上とともに重複排除によるバックアップ運用の効率化を図っています。

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