連載
» 2013年03月27日 00時00分 公開

ITエンジニアの市場価値を高める「営業力」(7):顧客が本当に欲しかった、「技術力以外」のもの (1/2)

エンジニアが市場価値を上げるには、営業力が必要だ。元SEで営業経験もある著者が、「エンジニアが身に付けておきたい営業力」を語る。

[森川滋之,ITブレークスルー]

心掛けるだけで差別化可能な「三大発信方針」

 前回の記事「『このエンジニアはすごい!』顧客もうなる『質問力』とは」で、顧客に認められるためのマインドについて考え、以下の3つを心掛けるだけでも顧客の反応が大きく違ってくると書きました。

  1. 相手の役に立つことを言う
  2. 相手の知らなかったことを言う
  3. 相手の好奇心を満たすことを言う

 これはコミュニケーションにおける基本方針であり、対顧客だけでなく、あらゆる場面で重要な考え方です。便宜上、「三大発信方針」と名前をつけます。

 「当たり前のことじゃないか」という印象を持った人も多いと思います。

 確かに、当たり前のことのように思えるかもしれません。なのに、なぜ私はこれを強調するのか? 多くの人と接していても、「この人は三大発信方針を心掛けているな」と感じることがほとんどないからです。

 「できている」かどうかではありません。「心掛けている」かどうかです。

 三大発信方針は、当たり前のことのように見えますが、実際にできるようになるのは難しいものです。身に付けるためには、日々心掛けて実践していくしかありません。

 だから身に付いていないのは仕方がない。でも、「身に付けようと心掛けてもいないのでは?」と感じることがとても多いのです。

 従って、「この人は三大発信方針を心掛けているな」と周囲に感じさせるだけでも、大きく差別化ができ、あなたの市場価値は向上するのです。

「この人は心掛けている」と思わせるには?

 では、どうすれば「この人は三大発信方針を心掛けているな」と周囲に思わせることができるでしょうか。

 「話の流れにふさわしい質問」をすればいいのです。

 三大“発信”方針――つまり聞くというより話すための方針なのに、なぜ質問なの? と疑問に思うかもしれません。ここが最も重要なところであり、コミュニケーションの面白いところでもあります。

 「相手の意向を無視して自分の話したいことだけ話す」のは、円滑なコミュニケーションを目指す上では論外ですね。これにはすぐに賛同してもらえると思います。そしてほとんどの人は、「自分は相手の意向を尊重して話をしている」と言うでしょう。

 しかし、本当にそうでしょうか。あなたはどの段階で相手の意向が分かったのでしょうか。逆の立場のとき、先方が自分の意向を分かっていると感じることがどれだけあったでしょうか。相手の意向とは、そんなに簡単に分かってしまうものなのでしょうか。

 相手の意向を、一言でまとめることはできます。「結局あなたの求めていることは、かくかくしかじかのことですよね?」と確認することは、コミュニケーションの基本スキルの一つです。しかし、一言にまとめるまでには相当の数の質疑応答のやりとりが必要なはずです。

 何も話さないうちに、相手の意向をまとめることはできません。「結局」という言葉の裏には、たくさんのことを聞いたという前提があります。

 質問しないと、相手の意向は分からない。意向が分からなければ、相手の役に立つこと、知らないこと、好奇心を満たすことを言うことはできません。だから、質問することが重要なのです。

「心掛けている人」が質問で心掛けている、「三大質問方針」

 質問のテクニックやスキルに関することは、それだけで何冊も本が書けるぐらい幅広く、奥深い領域です。実際にたくさんの本がある中から、2冊だけお薦めしておきましょう。

 この2冊を読むだけでも、コミュニケーション能力がずいぶんと向上するように思います。

 質問の具体的なテクニックやスキルはこういった本から学んでいただくとして、ここではもっと根本的なことをお話ししたい。それは質問で心掛けるべきことです。

 三大発信方針をもう一度見てください。

  1. 相手の役に立つことを言う
  2. 相手の知らなかったことを言う
  3. 相手の好奇心を満たすことを言う

 質問で心掛けるべきことも、この3つから導かれます。

 相手の役に立つことを言おうと思ったら、相手が何に悩んでいるのか、何を欲しいと思っているかを聞き出さなければなりません。「相手の課題は何か?」を知ろうとするのが大事な心掛けです。

 相手の知らなかったことを言おうと思ったら、相手が何をどのレベルで知っているかを聞き出さなければなりません。「相手の知識レベルはどのぐらいか?」を知ろうとするのが大事な心掛けです。

 相手の好奇心を満たすことを言おうと思ったら、相手が何に興味があるかを聞き出さなければなりません。「相手の興味・関心はどこにあるのか?」を知ろうとするのが大事な心掛けです。

 以上3つをまとめて、「三大質問方針」と名づけます。

三大質問方針

  1. 相手の課題は何か?
  2. 相手の知識レベルはどのぐらいか?
  3. 相手の興味・関心はどこにあるのか?

 三大発信方針と三大質問方針の関係を図にまとめました。3つの発信方針と3つの質問方針が、それぞれ1対1の関係になっています(図1)。

図1 三大発信方針から導き出される「三大質問方針」 図1 三大発信方針から導き出される「三大質問方針」

 ここからは、三大質問方針を一つずつ見ていきましょう。

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