JavaScript製とは思えないゲームをenchant.jsで簡単に作るにはenchant.jsでHTML5+JavaScriptゲーム開発入門(4)(1/3 ページ)

大人気のHTML5+JavaScriptベースのゲームエンジン「enchant.js」を使ってゲームアプリを作る方法を解説していく連載。今回は、手軽にアニメーションを作れるtl.enchant.jsの使い方や、スマホ向けアニメーションのチューニングポイント6つを解説する。

» 2013年04月25日 18時00分 公開
[佐藤浩昭, 大関隆介ゆめみ]

これが、JavaScriptのゲーム…… だと……?

 前回の「enchant.jsで重要なスプライトとシーンを使うには」では、ゲームの流れとなる部分を駆け足で解説いたしました。

 今回は、よりゲームをリッチに見せる、複雑なアニメーションの作り方を理解していきましょう。この機能を使うと、こんなもの(サンプル)を簡単に作ることができます。ぜひ「JavaScriptとは思えない!」ようなゲームを目指しましょう。

事前準備

 なお、今回のサンプルはenchant.jsのバージョン0.6.3を利用しています。もしもバージョン0.5.2以前のものを使う場合は、enchant.jsをダウンロードしたフォルダの中にある「plugins」フォルダから「tl.enchant.js」を取り出し、読み込んでおく必要があります。なお、バージョン0.6.0からは本体のライブラリと統合されていますので、特に読み込む必要はありません。

ver 0.5.2以前のバージョンを使う場合

任意の場所
└ index.html……中身は空のテキストファイル
└ フォルダ「js」
 └ main.js ……中身は空のテキストファイル
 └フォルダ「lib」
  └ enchant.js ……ダウンロードしたenchant.js本体
└ tl.enchant.js ……enchant.jsに同梱されているpluginsフォルダの中からコピーしておく
└ フォルダ「img」
 └ 画像など
ディレクトリ構造
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
  <head>
    <meta charset="utf-8">
    <title>カードが踊るサンプル</title>
    <meta name="viewport" content="width=device-width,initial-scale=1.0,maximum-scale=1.0,user-scalable=no">
    <script src="./js/lib/enchant.js"></script>
    <script src="./js/lib/tl.enchant.js"></script>
    <script src="./js/main.js"></script>
……
index.html

お手軽アニメーション機能「tl.enchant.js」を使う

 「tl.enchant.js」とは、かつてアニメーションを表現するためにenchant.jsのプラグインとして開発されていた「animation.enchant.js」が本家に取り込まれたもので、enchant.jsのバージョン0.6.0から標準で使えるようになった機能です。これを使うと、従来の手作業によるアニメーションの記述を大幅に削減できます。

今までのやり方でアニメーションを行う

 例えば、次のような動きを表現しようとします。

くまがジグザグに降りてきて最後に跳ね上がるアニメーション(括弧内の数字はx, y座標)

 今までの方法で書くと、次のようなプログラムになります。

enchant();
window.onload = function() {
    var game_ = new Game(320, 320); // 表示領域の大きさを設定
    game_.fps = 24;                 // ゲームの進行スピードを設定
    game_.preload('./img/chara1.png'); // ゲームに使う素材をあらかじめ読み込み
    game_.onload = function() { // ゲームの準備が整ったらメインの処理を実行します
		var kuma = new Sprite(32, 32);
		kuma.image = game_.assets['./img/chara1.png'];
		kuma.frame = 4; // スケボーに乗ったくまを表示させる
		kuma.x = 144; //くまの初期位置設定
		kuma.y = 0; // くまの初期位置設定
		game_.rootScene.backgroundColor = '#ffffff'; // 背景色
		game_.rootScene.addChild(kuma); // シーンにくまを追加
		var vectol_x = 1; // くまのx進行方向フラグ(1で右、0で左)
		var vectol_y = 1; // くまのy進行方向フラグ(1で下、0で上)
		// 毎フレームイベントを追加
		game_.rootScene.addEventListener(Event.ENTER_FRAME, function(){
			// くまをジグザグ移動させる
			if (vectol_y == 1) { // x進行方向フラグが下なら
				if (vectol_x == 0) { // x進行方向フラグが左なら
					kuma.x --;		// くまを左に移動
					if (kuma.x < 114) { // くまがある程度左に移動したら
						kuma.x = 114;
						vectol_x = 1; // x進行方向を逆転させる
					}
				} else { // x進行方向フラグが右(左以外)なら
					kuma.x ++; // くまを右に移動
					if (kuma.x > 174) { // くまがある程度右に移動したら
						kuma.x = 174;
						vectol_x = 0; // x進行方向を逆転させる
					}
				}
				kuma.y ++; // くまを下方向に移動
				if (kuma.y > 240) { // くまがある程度下に移動したら
					kuma.y = 240;
					vectol_y = 0; // y進行方向を逆転させる
				}
			} else { // y進行方向フラグが上(下以外)なら
				kuma.y -= 10; // くまを上方向に素早く移動させる
				if (kuma.y < 0) { // ある程度くまが上に移動したら
					kuma.y = 0;
					vectol_y = 1; // y進行方向を逆転させる
				}
			}
		});
    }
    game_.start(); // ゲームをスタートさせます
}

 このプログラムでは、毎フレーム処理の中にif文を織り交ぜて、現在のキャラクターの位置を基に進行方向を決定し、キャラクターの座標に加減算をすることによりアニメーションを表現しています。

 このように、少しでも複雑なアニメーションを行おうとすると、プログラムが煩雑になり、一見して分かりづらくなってしまいます。このようなプログラムだと、途中の動きを変えたり、一部分だけスピードを変えるといった微調整を行うのも一苦労です。

 そこで、tl.enchant.jsを使ってみましょう。

tl.enchant.jsを使って書いてみる

 上述のプログラムを新しい方法で書き直してみたのが、以下のコードです。

enchant();
window.onload = function() {
    var game_ = new Game(320, 320); // 表示領域の大きさを設定
    game_.fps = 24;                 // ゲームの進行スピードを設定
    game_.preload('./img/chara1.png'); // ゲームに使う素材をあらかじめ読み込み
    game_.onload = function() { // ゲームの準備が整ったらメインの処理を実行します
        var kuma = new Sprite(32, 32);
        kuma.image = game_.assets['./img/chara1.png'];
        kuma.frame = 4; // スケボーに乗ったくまを表示させる
        kuma.x = 144; //くまの初期位置設定
        kuma.y = 0; // くまの初期位置設定
        game_.rootScene.backgroundColor = '#ffffff'; // 背景色
        game_.rootScene.addChild(kuma); // シーンにくまを追加
        // くまがジグザグに移動するアニメーションを登録する
        kuma.tl.moveTo(174, 30, 30);     // ?x=174, y=30の地点まで30フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(114, 90, 60);     // ?x=114, y=90の地点まで60フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(174, 150, 60);     // ?x=174, y=150の地点まで60フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(114, 210, 60);     // ?x=114, y=210の地点まで60フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(144, 240, 30);     // ?x=144, y=240の地点まで30フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(144, 0, 24);      // ?x=144, y=0の地点まで24フレームかけて移動させる
        kuma.tl.loop();                 // 全て終わったら初めから繰り返す
    }
    game_.start(); // ゲームをスタートさせます
}

 どうでしょうか、非常にすっきりと書けていると思います。このように、tl.enchant.jsを使うと、簡単にアニメーションを作成し、つなげていくことができます

 動かしたいものにアニメーションを登録すると、直ちにアニメーションが開始されます。さらに、アニメーションはいくつでも登録でき、先に登録されたものから順番にアニメーションが行われます。アニメーションの種類は移動、回転、拡大縮小、フェードイン・アウトが用意されており、個別で使う他にも、組み合わせて使えます(後述)。

注意点

 注意点として、tl.enchant.jsを使って動かしたいものにアニメーションを登録すると、動かしたいもの自体に自動的に毎フレーム処理が登録されます。そのため、間違って自前で用意した毎フレーム処理の中にアニメーションを登録してしまうと、1秒の間に何十件もアニメーションが登録され続けることになってしまい、いつまでも終わらなくなってしまいます。

// これは誤り
// 1秒間に何十件もアニメーションが登録され続けてしまいます
game_.rootScene.addEventListener(Event.ENTER_FRAME, function(){
        // くまがジグザグに移動するアニメーションを登録する
        kuma.tl.moveTo(174, 30, 30);     // ?x=174, y=30の地点まで30フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(114, 90, 60);     // ?x=114, y=90の地点まで60フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(174, 150, 60);     // ?x=174, y=150の地点まで60フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(114, 210, 60);     // ?x=114, y=210の地点まで60フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(144, 240, 30);     // ?x=144, y=240の地点まで30フレームかけて移動させる
        kuma.tl.moveTo(144, 0, 24);      // ?x=144, y=0の地点まで24フレームかけて移動させる
        kuma.tl.loop();                 // 全て終わったら初めから繰り返す
});

 tl.enchant.jsを使うときはアニメーションを「登録」していくものだと考え、自前の毎フレーム処理の中に書かないように気を付けましょう。

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