WWDC 2013キーノート(OS X編)ドリキンが斬る!(2)(2/2 ページ)

» 2013年06月13日 12時32分 公開
[ドリキン,サンフランシスコ在住ブロガー]
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核心のアドバンスドテクノロジ

いよいよ真打アドバンスドテクノロジの紹介へ(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 そして、いよいよここからは、僕も今回のキーノートでも一番興奮した発表の1つであるアドバンスドテクノロジと名付けられた新機能の紹介に入ります。

 キーノートでは、よりパフォーマンスを向上させつつ、バッテリ使用時間を向上させるためのコア技術群を総称してアドバンスドテクノロジと呼んでいました。

最大で72%程度CPU負荷を下げる「Timer Coalescing」

 その中でも、まずは一番に注目すべきは、「Timer Coalescing」と呼ばれる新技術です。

アクティビティモニタによるCPU負荷の図(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)
上のモニタ画面を拡大すると実際には1秒間に100回近くCPU状態が変化している(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 パソコンの電力消費の中でも、その大半を占めるのがCPUによる負荷です。アクティビティモニタなどでCPU負荷グラフを確認してみると、一見、CPU負荷が低い状態を維持しているように見えても、実際にCPUの内部では1秒間に100回近くCPUがスリープとアクティブ状態を繰り返しています。

CPU負荷の状態を細かく解析して最適化することでアイドル時間を増やすことに成功(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 この細かいCPUの状態変化が、バッテリに大きな影響を与えるとフェデリギ氏は主張します。そこでMavericksでは、このスリープとアクティブ状態の切り替えをインテリジェントに整理して結合し、CPUのアイドル状態を増やし、そのほかの最適化技術と組み合わせることで、従来のOS Xに比べて最大で72%程度CPU負荷を下げることに成功したそうです。

 この72%という数字はあくまでもCPU負荷の削減率なので、この数字の比率のままバッテリ持続時間が伸びるというわけではないと思いますが、CPU負荷が減れば減るほど、バッテリ持続時間が伸びることは確実なので、かなりバッテリ消費量に影響があることは想像に難くないです。

メモリ内容を圧縮することで空きメモリを増やす「Compressed Memory」

 次に紹介されたのが「Compressed Memory」というテクノロジ。

さらなる仮想メモリの最適化を実現するCompressed Memory(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 OS Xは最初のバージョンから、仮想メモリ技術を積極的に取り入れていましたが、初期のバージョンでは、その最適化が十分に進んでいなかったため、OS XはほかのOSに比べて大量のメモリが必要とか、パフォーマンスが悪いとか言われていました。

 その後、OS Xのバージョンが上がるごとに、仮想メモリ技術の最適化を続け、最近ではSSDという追い風もあって、通常の利用であれば、4GB程度のメモリがあれば十分実用的に動くようになりました。

メモリ内容を圧縮することでスワップすることなく空きメモリを増やす(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 アップルは現状に満足することなく、Mavericksでは更なる仮想メモリの最適化を行い、使用されていないメモリを積極的に圧縮することで、スワッピング頻度を低減しSSDを利用したMacでもMountain Lionに比べてドキュメントを開くスピードが1.4倍。スリープ状態からの復帰も1.5倍速くなったとのことです。

 これらアドバンスドテクノロジの紹介は、まさにWWDCならではの内容で、自分でもアドレナリンが分泌されてることが分かるくらい興奮しました。

 昨今のモバイルデバイス、特にMacBookでは、もう処理能力は十分になってきていて、以前のように常に最新のスペックを追わなくても不満はないので、CPUやGPUスペックだけでは、Macを買い換えるモチベーションにつながりにくいのですが、何が一番改善してほしいかといえば、絶対的にバッテリ使用時間の改善ですよね。

 しかし、こればっかりはハードウェアによる消費電力の削減や、電池の物理的な容量増加を待たなければなかなか改善が難しい世界だよなぁと、半ば劇的な進化は諦めかけていたのですが、このような一見ハードウェアに依存する問題に、ソフトウェアから改善に取り組むという発想からして、アップル流石だなぁと唸らされ、目から鱗で感心させられました。

5年間のMacプラットフォーム成長率は100%、PCは3%(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 これも一重にOS Xというプラットフォームを、NeXTSTEPから数えれば15年以上、OS Xから数えても10年以上の長い時間をかけて継続して最適化を続けてきた努力の賜物で、派手な進化が求められる状況で、このような地道な改善を続ける姿勢を崩さない限り、まだまだアップルの地位は揺るがないなぁという印象を受けました。

 これら技術以外にも、キーノートでは詳しく触れられませんでしたが、OpenGL4の採用、システム全般で「Core Graphics」というGPUを活用したレンダリング技術を活用し、いままで以上に滑らかなアニメーションを実現したことなど、すでにOS XもiOSもほかのプラットフォームと比べても頭1つ突き抜けたパフォーマンスを発揮しているのに、さらに先頭を突っ走るために最適化を進める姿勢に興奮させられました。

 このようなコア技術は、個々の新機能自体は、一般ユーザーから見たら興味がないことかもしれません。しかし、これら技術の1つ1つの恩恵が積み重なって、最終的に、カッコイイ見た目や使い勝手、パフォーマンスを達成しているわけです。

 デベロッパもこれらの恩恵を最大限に利用できるフレームワークに興奮し、アプリの開発が促進されているわけで、このポジティブスパイラルこそが今のアップルの強さであり、アップル人気を不動のものにしていると思います。

まとめ

基調講演開演直後に公開されたビデオから(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 僕なりの観点で、今回のWWDCで気になったことを掘ってみようと思い付いた企画ですが、実際に書き始めてみたら、OS X Mavericksだけでこれだけの長さ、自分でも想像した以上のボリュームになってしまいました。

 手前味噌ながら、キーノートの内容だけで、これだけ細かく書いた記事は少ないと思うので、変わり種レポートとして楽しんでいただけると幸いです。

 ここまでの内容では、約2時間のキーノートの全体の1/4。前半30分くらいの内容をカバーしてます。

次回はSafariの進化について解説します(Apple - Apple Events - WWDC 2013 Keynoteのスクリーンショット)

 引き続きSafari編、ハードウェア編、iOS編と書き綴ってみようと思っていますので、乞うご期待ください!

著者プロフィール ドリキン

サンフランシスコ在住 ガジェット、グルメ系ブロガー。ブログはDrift Diary XVと動画ポッドキャストのdrikin.tv。最近英語の勉強がてらに始めたDrift Diary USAも運営中。本業はソフトウェアエンジニアでdrikin.comにて自作アプリも公開中


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