マサイ族とライオンの関係を変えた13歳の少年のアイデア太田智美のビビビ「TEDTalks」ピックアップ!

「TEDTalks」の中から、編集部の太田が「ビビビ」と感じた動画をピックアップし、不定期に紹介する企画。今回取り上げる動画は、「My invention that made peace with lions」だ。

» 2013年07月11日 20時43分 公開
[太田智美,@IT]

本連載では、TED(「Technology Entertainment Design」の略)が主催するカンファレンスの講演動画「TEDTalks」の中から、編集部の太田が「ビビビ」と感じた動画をピックアップし、紹介していきます。


「My invention that made peace with lions」

 リチャード・トゥレレ(Richard Turere)氏は、マサイ族のコミュニティで暮らす13歳の少年。彼の住むナイロビ国立公園の南部には柵がなく、野生動物が自由に行き来している。そのため、マサイ族の飼っている家畜はしばしば野生のライオンに襲われる。そして、マサイ族の戦士階級「モラン」は、彼らのコミュニティや家畜を守るためにライオンを殺す。

 リチャード氏のコミュニティでは、6〜9歳の少年が家畜の世話を任される。そこで彼は、ライオンを殺すことなく家畜を守るという課題を解決するための3つのアイデアを思い付いた。

 1つは、火を使うこと。しかし、この作戦は失敗に終わった。火でライオンを追い返す計画だったが、逆に牛の居場所を教えることになってしまった。2回目の挑戦では、かかしを立てた。しかし、これもうまくはいかなかった。ライオンは頭が良く、実験2日目には偽物だとばれてしまった。ある夜、懐中電灯を持って歩いていると、ライオンが近づいてこないことが分かった。彼はこのとき、ライオンが「動く光」を怖がることを知った。

 リチャード氏は、小さいころから新品のラジオを分解するなど、電子機器をいじるのが好きだった。彼は、バッテリーと方向指示器、そして光を点滅させるためのスイッチを手に入れた。バッテリーは古い車から、方向指示器(ウインカー)はオートバイから、光を点滅させるためのスイッチは壊れた懐中電灯から分解し、これらを組み立てた。

 以来、家畜がライオンに襲われる被害はない。やがて、彼のアイデアはケニア全土に広がり、ハイエナやヒョウのような他の捕食動物を追い払うことにも使われるようになった。リチャード氏はこう述べる――「ぼくは、ずっとライオンが嫌いでした。しかし、この装置を発明したことで、牛もライオンも守れています。私たちマサイ族は、ライオンと対立することなく暮らせるようになりました」。


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