トップレベルの技術とクラス100クリーンルーム完備であらゆるHDD物理障害に対応復旧率95.1%を支える技術に迫る【後編】

読み出せなくなったHDDからのデータ復旧サービスを手がける日本データテクノロジー。診断の結果、モーターやヘッドなどHDD内部の部品が破損している場合は、開封して検査・修復するという。そのために同社は、無菌手術室と同等であるクラス100のクリーンルームを用意している。後編となる今回は、HDDの物理障害に対処する同社の技術について聞いた。

» 2013年08月19日 10時00分 公開
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日本データテクノロジーのデータ復旧事業部技術開発プロジェクトで責任者を務める西原世栄氏

 故障したハードディスク装置(HDD)のデータ復旧で累計7万5000件以上の実績を持ち、7年連続でトップクラスの復旧実績を上げている日本データテクノロジー。復旧率は95.1%に上り、これは論理障害だけでなく、物理障害が生じたHDDも含めての値だ(関連記事)。

 物理障害の内容や原因についてはすでに前編で説明したが、例えば、nm(ナノメートル)のオーダーで浮上しているヘッドが、衝撃によってプラッタに当たってしまい破損することで生じる。ほかにも、プラッタに傷が付いたり、ファームウェアが壊れて動作不能に陥ったり、基板が焦げてしまうという症状がある。こうした障害が生じたHDDからでも、同社ではデータの復旧が可能であるという。高い復旧率を上げる同社の技術について、データ復旧事業部技術開発プロジェクトで責任者を務める西原世栄氏に聞いた。

物理障害には開封して対処

――物理障害が発生したHDDをどのようにして修復するのでしょうか。

西原氏 物理障害が発生したHDDは、そのままではデータを読み出せませんので、データを読み出せる状態に直す必要があります。当社は累計7万5000件の復旧実績と経験に加え、HDDに関する独自の研究によってこの分野の技術とノウハウを蓄積し、さまざまな障害に対処できるようにしています。

 最も事例の多い、ヘッドが壊れている場合は、ほかのHDDから正常なヘッドを移植します。当社では部品取り用のHDDを累計2万台以上保有しています。さらにこれまでの経験から、HDDのモデルごとに、組み合わせ可能な別のモデルのパターンも熟知しています。

ストックされている部品取り用HDDの一部

 ただしヘッドを移植してしまうと、同じメーカーの同じモデルからであっても、一部のデータが読み出せなくなることがほとんどです。最近のHDDは、個別のHDDごとに調整されているからです。ヘッドを移植したら必ずチューニングが必要です。このチューニング技術こそが、当社の最大の強みと言っても過言ではありません。

 不良セクターの代替処理がうまくできておらず、それが原因でHDDの読み出しに影響が出ている場合は、不良セクターを飛ばして読ませることで対処することがあります。そのセクターのデータ(通常512バイト)を読み出すのは非常に難しいですが、救出対象のファイルがそのセクターを使っていなければ、目的のファイルのデータは取り出せます。

症状によっては実体顕微鏡を用いて検査する

 ほかにも、ヘッドやモーターが正常なのに読めないという場合には、顕微鏡を用いて検査することもあります。当社には、最大500倍の実体顕微鏡を用意してあります。ときには、ヘッドの浮上量を調整することもあります。最近のHDDではヘッドの浮上量はnmオーダーですので、調整量はÅ(オングストローム=0.1nm)オーダーになります。

 このように、物理障害に対応するには、HDDを開封して中のヘッドやプラッタをむき出しにする必要があります。この作業の実施には、クリーンルームが不可欠です。プラッタの表面にほこりが付着するのを防ぐためです。目に見えなくても、プラッタにほこりが載っている状態で動作させてしまうと、ヘッドがほこりを引きずり、プラッタに傷を付けてしまう恐れがあります。プラッタの傷は致命傷となりかねません。

無菌手術室並のクリーンルームを用意

西原氏 当社のクリーンルームは、「クラス100」と呼ぶ、無菌手術室と同等の清浄度を確保しています。これは、1立方フィート(約28.3リットル)当たり、粒径0.5μm(マイクロメートル)以上の塵埃数が100個以下というレベルです。さらに、クリーンルーム内の作業員には、静電気を防止するスーツとシューズに加えて、医療用に使われている特殊なキャップの着用を義務づけています。

 確実に、しかも短時間でHDDを復旧させるには、このようなクリーンルームのほか、特殊な設備や道具が必要です。

HDDが正常稼働しているかどうかを音で聞き分けることも可能

 以上のような複数の方法を試した上で、データを読み出せるようにできたら、論理障害を修復します(論理障害の修復に関する関連記事)。なお、HDDが正常に稼働しているかどうかは、技術者が動作音を聞いたり特殊な解析ツールを用いたりして判断します。当社の技術者はこれまでの経験により、各種HDDモデルごとに異なる、電源投入時の音の特徴を聞き分け、どんな小さな異常でも見逃しません。

――復旧できない症状にはどのようなものがありますか。

西原氏 基本的には全て復旧可能ですが、中には非常に難しいものもあります。その1つが、プラッタに傷が付いた場合です。稼働時の衝撃によって、ヘッドがプラッタに当たることでヘッドが破損する例を先ほど説明しましたが、HDDの機種によってはヘッドが強い(壊れにくい)ものがあります。そのような機種の場合、稼働時に衝撃が加わると、ヘッドが壊れるのではなくプラッタに傷が付いてしまうことがあります。傷が付いた部分を避けてデータを読むことは可能ですが、傷が付いた部分に必要なデータが書かれていた場合は、復旧の難易度が非常に高くなります。

プラッタに傷が付いてしまったHDD

 プラッタの磁性体が剥離している場合や、プラッタがめちゃくちゃに壊れているような物理障害の復旧も非常に難しくなります。

 物理障害がなくても、データが上書きされたものは難しいです。例えば、フォーマット時にゼロで上書きしたような場合です。ただし、基本的にはどのような症状にも対応できますので、まずは当社までお問い合わせください。

 また、RAID構成の場合には、RAIDの再構築が完了してしまったものは復旧が難しいです。もともとRAID5で構築していたのに、再構築時になぜかRAID0にしてしまうという事例がありました。たまたまRAID管理領域が読み出せなくなってしまったときに再構築を実施して、デフォルトのRAID構成と見なされたのかもしれません。

 動作を見ただけでは分かりにくいのですが、アクセスランプが消えること、つまりRAIDの再構築が終わるのを待つより、点滅中でも電源コードを強制的に抜いてしまった方がデータは助かることもあります。実際、急にNAS(Network Attached Storage)のアクセスランプが激しく点滅しだしたので不安になってお問い合わせいただいたお客様の症状を聞いて、電話口で「今すぐ電源コードを抜いてください」とアドバイスしたこともあります。ただし、確実に安全な方法とは言えません。決してご自身の判断では行わないようにし、当社認定であるプロのデータ復旧アドバイザーまでご相談ください。

 最近の傾向の1つに、1ファイルの容量が大きくなってきていることがあります。例えば、仮想化システムの仮想ハードディスクファイル(VHDやVMDKなど)です。この場合、1つのファイルで数GBは小さい方で、TB(テラバイト)オーダーになる場合もあります。そのため、これらのファイルを構成するデータのうち1セクター分でも取り出せなければ、ファイル全体の復旧は非常に難しく、復旧を困難にする原因の1つとなります。

――水没したHDDは復旧できますか。

西原氏 はい、できます。水槽や浴槽に落としてしまった程度ならば、通常は問題ありません。ただし、ぬれたまま当社に持ち込んでいただくのがよいです。乾かしてはいけません。水に溶けていたカルキなどの成分がプラッタ表面に析出して、データの読み出しが困難になるからです。

 一方、水害の場合は難易度が高くなります。水と一緒に泥や砂がHDD内部に侵入して、プラッタに傷を付けてしまうことがあるからです。ただし当社では、2011年に発生した東日本大震災で、津波の被害を受けて読み出せなくなったHDDからデータを復旧した、数多くの実績があります。

症状によっては即日対応も可能

――最近はHDD自身が暗号化機能を備えているモデルがあります。暗号化されたHDDでもデータを回復できますか。

西原氏 はい、これも可能です。一部のソフトウェアによる暗号化には対応できていない例がありますが、一般に暗号化されていても復旧可能です。例えば一部の2.5インチ型HDDにあるような、HDD自身が備えている暗号化は問題ありません。

 ただし、暗号化されている場合は、復旧時間が多少長くなることがあります。例えば500GB×4台のRAID5構成の場合、状況によっては、暗号化されていることで4〜5日かかる場合もあります。暗号化されていなければ、最短で当日対応が可能です。

 しかも当社の場合、お客様が目的としているデータを復旧して、はじめて成功報酬をいただいています。仮にHDD全体の99%のデータが復旧できたとしても、残り1%にお客様の必要とするデータがあった場合には、復旧に失敗したとして料金は発生しません。


 HDDの故障に関する最近の傾向とそれを修復する日本データテクノロジーの技術について、2回にわたって聞いた。HDDに障害が発生すると、パソコンに詳しいユーザーであればあるほど、「自己解決」を試みがちだ。しかし、RAID機器も含めて、実はこれが最も危険であるという。

西原氏 お手元のストレージ機器になんらかの異常が生じた場合、データの保全を考えて、まずは専門家にお問い合わせください。当社では365日年中無休で、専門のデータ復旧アドバイザーがご相談をお待ちしております。



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提供:OGID株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年9月7日

関連リンク

本稿で紹介したデータ復旧サービスについてはこちらで確認できます。

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