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» 2013年11月29日 00時00分 公開

エージェント徹底活用法(2):転職エージェントのビジネスを理解する (2/2)

[リーベル 田中祐介,@IT]
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総合型エージェント/特化型エージェント

 総合型エージェントは、「百貨店型」「ショッピングセンター型」と呼ばれることもあります。

 特徴は、その名の通り多種多様な業界・業種の求人案件を取り扱っていることです。百貨店やショッピングセンターが、お店の種類も品ぞろえも豊富で、そこに行けば大抵の買い物ができるように、総合型エージェントは、取り扱っている企業・求人の種類・数ともに膨大です。幅広い業界や業種の求人を検討したい場合は、総合型エージェントを訪ねるのがよいでしょう。

 一方の特化型エージェントは、「専門店型」「ブティック型」と呼ばれ、業界や業種をある程度特定している転職エージェントです。

 特化の切り口は転職エージェントによってさまざまで、IT業界、コンサル業界、金融業界、製造業界といった業界であったり、経理、人事といった職種であったりします。中にはゲーム業界のエンジニア職というように、業種と業界を掛け合わせるところもあります。

 特徴は、その分野での専門性が高く、業界の動向や企業ごとの実際の働き方などをよく知っていることです。また、どのポジションがどういった人に合っているか、それを希望している人にマッチしているかどうかを見極める目を持っている可能性が高いです。

 総合型も特化型も、いずれも強みと弱みを持っています。普段皆さんが何を買いたいかにより訪れるお店を分けるように、皆さんが転職エージェントに何を求めるかによって訪問先を選ぶとよいでしょう。

大規模型エージェント/中小規模型エージェント

 ここでは大体、社員数200〜300人以上の規模の会社を大規模型、それ以下を中小規模型と呼ぶことにします。

 大規模型の特徴は、社員数の多さや豊富な資金力、知名度の高さなどです。豊富な資金力によって打ち出した広告で知名度を高め、多くの転職希望者からの支援依頼を集めます。それと同時に、広告の効果により、たくさんの企業から採用の支援依頼も集めます。

 そして、双方の大量の支援依頼に対応するために、転職エージェントは社員数を増やします。この「広告→企業・転職希望者の依頼増→社員増強」のサイクルが繰り返されて拡大した企業が、結果的に大規模型となっています。

 大規模型は、莫大な数の企業と転職希望者に対応する必要があることから、効率の良い、洗練された仕組みを保有する傾向にあります。例えば、営業とキャリアコンサルタントの部門を分けて、おのおのの業務に集中させる職能別組織体制、面談を1時間以内に収める効率的な面談プロセス、候補企業や選考状況を共有するためのシステム、日程調整やアンケート依頼などの諸業務を代行するアシスタント制など、数多くの工夫がなされています。転職市場の動向調査や面接対策セミナーなども実施しており、得られる情報の豊富さは群を抜いています。

 一方の中小規模型は、一定の傾向がないことがある意味で特徴といえます。

 大規模型の転職エージェントからスピンアウトして、規模は小さいながら大規模型と似たような仕組みを持つエージェントもありますが、その一方、大規模型出身ではない人が立ち上げたエージェントもたくさんあります。

 例えば、「(一般には公開されていない)独自案件専門」「外資系企業専門」「特定の業界専門」など、おのおのの専門領域に先鋭化した転職エージェントがあります。また、キャリアコンサルタントが企業を訪問したり、社員を業界出身者のみで構成したりするなど、オペレーションや採用を工夫して専門性を高めているエージェントもあります。いずれも、大規模型との差別化を図るために工夫を凝らしており、その多くは効率をある程度犠牲にしてもサポート力を高めることに注力しています。

 大規模型と中小規模型、それぞれの特徴を簡単にお話ししました。一般的には大規模型=総合型、中小規模型=特化型となる傾向にあります。ただ、この関係は必ずしも常に一致しているわけではありません。大規模型は大抵総合型にならざるを得ませんが、中小規模型で複数の専門領域を持っていたり、中には総合型ともいえる幅広さを持っているエージェントもありますので、担当者に会う前に、特徴をつかんでおくとよいでしょう。

自分に合った選び方を

 どういう転職エージェントを何社利用すればよいかについては、人ごとに事情が異なるため、最適解はありません。

 例えば、ご自身の実力や情報収集力、判断力などに自信があり、選択肢があれば十分という方は、案件を豊富に持っている大規模型の転職エージェントを1社だけ利用すればよいでしょう。

 逆に、転職活動の進め方などに不安があり、初期段階から手厚い支援を希望する方は、中小規模の転職エージェントに支援を依頼するのがよいでしょう。

 どちらを訪問すべきか決めかねている場合は、まずは複数社を訪ねてみるとよいでしょう。私が最初に転職活動をしたときは、総合×大規模型を1社、特化×中規模型を1社、特化×小規模型を1社の合計3社を利用しました。

 異なる種類の転職エージェントを複数訪問し、大体3社程度に絞るのが、訪問の負荷の面からもバランスの面からもよいでしょう。

補足:その他の分類 人材業界発エージェント/異業界発エージェント

 前述の切り口とは別に、転職エージェントの特徴が出る分け方があります。人材業界発のエージェントか異業界発のエージェントか、という切り口です。

 転職エージェントの多くは、もともと人材業界でビジネスを手掛けていた会社です。業界最大手のリクルートキャリアをはじめ、創業者がリクルートグループ出身であるインテリジェンスやキャリアデザインセンター、独立系のパソナキャリア、外資系のアデコなどが代表的な例です。

 人材業界発エージェントは、各社に特色がありながら、ある程度、共通する点も持っています。例えば、多くが総合×大規模型であったり、部門をきちんと分けて効率化していたり、人材紹介業と同時に派遣業を行っていたりと、事業展開の仕方が似ており、転職支援プロセスも共通点が多いと思います。

 一方、人材業界ではない業界、例えばメーカーや商社、銀行、SIer(システムインテグレータ)、コンサルティングファームなど、人材業界以外の方が立ち上げた転職エージェントも数多く存在します。これらは、事業展開の仕方もポリシーも転職支援プロセスも全く異なってきます。

 例えば、メーカーやSIerなど製品を開発する業界の出身者が立ち上げた転職エージェントは、QCD(Quality=品質、Cost=コスト、Delivery=納期)に対する意識が強く、手堅い支援プロセスを実施する傾向にあります。

 また、商社やコンサルティングファームの出身者が立ち上げた転職エージェントは、業務遂行のスピードが速く、企業に対する交渉力も高い傾向にあります。人材業界発のエージェントは、派遣業に似た業務プロセスになる傾向にありますが、他業界出身発のエージェントは、おのおのの業界で行ってきた業務プロセスがベースになる傾向にあるようです。

転職エージェント利用時の注意点

 転職エージェントを利用する際に、注意していただきたいことが1点あります。それは、エージェントも有料職業紹介というビジネスである以上、高収益の方向にインセンティブが働くということです。

 キャリアコンサルティングの本来のミッションは、相談者にとって最も良いキャリアを考え、それを実現するための方法を提案し実現を支援することです。

 それは「丸い釘は丸い穴に」というスローガンで1900年代初頭に始まった、フランク・パーソンズによる職業指導運動以来、変わらぬ使命です。人は環境が合えば、パフォーマンスを十二分に発揮して、企業および社会に大いに貢献できます。つまりは、1人の人を、その人に合った企業に引き合わせることにより、個人、企業、ひいては社会を豊かにすることがキャリアコンサルタントの社会的使命なのです。

 しかし残念ながら、そういった社会的使命を忘れ、自社の短期的な利益を優先する転職エージェントも少なくありません。報酬が多い企業に入るように誘導したり、「早く応募しないとクローズしますよ」と言って急かしたり、中には「(この人に合ってないけれど)この企業に入社させろ」という指示が上から出るところや、たくさんの面接を受けさせて「(疲れたから)どこでもいいので早く決めたい」と思わせたりするエージェントもあるそうです。

 前述の通り、人材業界は競争の激しい業界です。転職エージェントも、他社を出し抜こうといろいろな手を尽くしています。そういったエージェントの争いに巻き込まれないよう、皆さんはエージェントの言うことをうのみにせず、「本来どうあるべきか」「自分はどう進めたいか」を考えて判断し、行動してください。

 エージェント徹底活用法、次回は「転職エージェントの上手な活用方法」を解説します。

筆者プロフィール 田中祐介

田中祐介

東京大学大学院を修了後、中堅SIerを経てアビームコンサルティングに入社し、IT企画や構想策定から開発、保守・運用まで、IT領域全般に携わる。現職のリーベルには「一人一人のパートナー」になりたいという想いを実現するために転職。リーダーや採用担当として培った"長所を発見する力"と、SIer・コンサルティングファームの両方の現場感覚を知る強みを生かし、個人と企業がWin-Winとなるマッチングを目指す。



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