Oculus Rift、Unity、Openframeworks...感覚器官フル稼働の仮想空間を実現するUXレポート  IVRC 2013(1/3 ページ)

学生のアイデアを具現化するツールの進化・普及と、感覚器官をフルに使う人工現実感。表現とインターフェースについての学生の挑戦から「思い付き」を実現する環境のいまを知ろう。

» 2013年12月09日 17時36分 公開
[高須正和/ウルトラテクノロジスト集団 チームラボ,@IT ]

学生の「思い付き」アイデアを最新技術で実現する

 国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(International collegiate Virtual Reality Contest、以下IVRC)の決勝大会が、お台場/科学未来館で開催された。バーチャルリアリティ(人工現実感:VR)をテーマにした作品を発表しあうコンテストは21回目を迎える。

 毎回、アイデアと技術を凝らした「腕に鳥が止まった感覚を機構とサーボモーターで再現」「画像認識とKinectを用いて、あらゆるものを麺棒でつぶすシステムを構築、サーボモーターで麺棒のフィードバックを再現」などの作品が発表され、世界を驚かせている。

 視覚をだます、触覚をだます、聴覚をだます、それぞれディスプレイやスピーカー、モーターなどをマイコンで制御して作品を作る必要がある。

2011年の優勝作品「ペタンコ麺棒」。Kinectと画像認識を用いて、ものをつぶす動作をシュミレート

 20年前から「学生の馬鹿馬鹿しい思い付きを最新の技術で実現する」といわれているIVRC。しかし、ある意味では、この場こそがVRに関する技術の進化の歴史であるともいえる。実際には、単なる思い付きの実現ではなく、IVRCには次の通り、厳格な審査プロセスがある。

  • 企画書、プレゼンで審査(5月、6月。ここで勝ち残るのは半数以下)
  • 予選期日までに体感できるものを制作(9月。さらなる振り落としが行われる)
  • 完成させたものをさらにブラッシュアップする決勝(10月)

 実際の仕事のような制作経験を学生がチームで体験する、教育価値も高いイベントだ。プレゼン審査からは、わずか2カ月ほどで動作する作品をゼロから作らねばならない。今まで使ったことがないツールにチャレンジする学生も多い。

 今回は3Dゲーム開発用エンジンである「Unity」(リンク)、ヘッドトラッキング機能付きヘッドマウントディスプレイのOculus Rift(視野角110度すべてを覆い尽くす映像が特徴、リンク)など、ここ数年で使われるようになった技術が目立った決勝となった。

Unity+Oculus Riftで没入体験・リアリティを表現した優勝作品「バーチャルロープスライダー」

 見事、総合優勝と観客によって選ばれる未来観客賞、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン賞、そしてLavalVirtual賞の四冠に輝いたのは、「バーチャルロープスライダー」(慶應義塾大学理工学部情報工学科 杉本研究室:リンクと斎藤(英)研究室:リンクの合同チーム)だ。

 Oculus Riftで視覚を、ヘッドフォンで聴覚を、さらにロープとウィンチ、サーキュレーターで体感を再現する。全体の3Dの環境はUnityで制御している。1年前ではあり得なかった、まさに「いまどきの」ツール集合体だ。

屋台ぐらいの大きさがあるブース。中央にロープが架かっている

 実際に体験してみた。まず、Oculus Riftをかぶり、ヘッドフォンを身につける。屋台ぐらいの大きさがあるブースに、ターザンのロープがかかっている。ロープに付いている椅子に圧力センサーが付いていて、座ると体験開始だ。

体験中はこのような見栄えに

 「バーチャルロープスライダー」には、「ターザンゲーム」「ファンタジー」「Edo」など、7つのステージが用意されている。ステージを選んだ後、椅子に座ることで椅子のセンサーが反応し、体験がスタートする。

 目の前全てが映像になる。ヘッドトラッキングの機能を使うことで、頭を動かしても映像が付いてくるので、かなりの没入感がある。ロープスライダーの「ゴー」という音がヘッドフォンから流れ、全身が風を感じることで、猛スピードで前に進んでいる感覚がある。ゴールに付くと「ガックン」と、乗っているスライダーが揺れ、体験終了だ。

 次ページでは、この表現がなぜリアルなのかを見ていく。

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