OpenFlow=コモディティスイッチではない、NoviFlowが歩む第3の道「OpenFlowはデータセンターエッジから普及」

OpenFlowというと、ネットワーク機器のコモディティ化(=低価格化)のことばかり話す人が多い。しかし2012年にカナダで設立されたばかりのスタートアップ企業、NoviFlowの社長兼CEOであるドミニク・ジョドイン氏の考え方はまったく異なる。

» 2013年12月12日 13時57分 公開
[三木 泉,@IT]

 OpenFlowというと、ネットワーク機器のコモディティ化(=低価格化)のことばかり話す人が多い。しかし2012年にカナダで設立されたばかりのスタートアップ企業、NoviFlowの社長兼CEOであるドミニク・ジョドイン(Dominique Jodoin)氏の考え方はまったく異なる。

 ジョドイン氏は、商用データセンター内のトップオブラック・スイッチがOpenFlow製品に入れ替わるのはOpenFlow普及の後期だと予言する。だからこそ同社は、現時点では200Gbpsのスループット/100万のフローエントリに対応し、さらにソフトウェア機能を強化した、ゲートウェイ/エンドオブロー/アグリゲーション用のスイッチに特化しているのだと話す。

「データセンターはいま、キャパシティを広げることに忙しすぎる。また、シスコやジュニパーのコントロールが強く、短期的な変化は見込みにくい。しかしネットワークのエッジは話が違う。顧客は小さな戦略的投資で大きなインパクトを手にすることができる。だからこそNTTは(OpenFlow関連で)ネットワークのエッジに投資している。他の通信事業者も後を追うはずだ。さらに6〜12カ月後には大規模データセンターも、同様なメリットを追求するようになる」。

NoviFlowの社長兼CEOであるドミニク・ジョドイン氏(左)とセールス担当倍スプレジデントのジェスパー・エリクソン氏(右)

 ジョドイン氏は、OpenFlow対応のエッジ/ゲートウェイ・スイッチが、3、4年後には2〜3億ドルの市場になるとしている。新世代のエッジ/ゲートウェイ・スイッチは、単なるコスト削減ではなく、新しいサービス、新しい収益を生み出すために使われていくだろうという。同氏は、こうしたスイッチの用途を3つ挙げた。

 1つ目はデータセンター間のトラフィックのリダイレクション。例えばNTTコミュニケーションズのような通信事業者は、世界中で多数データセンターを運用する大規模企業顧客が、データセンター間のトラフィックフローを自身で制御できるようにしたい。そのためにはおびただしい数のフローから特定のフローを抽出し、これに対してポリシーを自動的に適用できるような仕組みを提供しなければならない。

 2つ目はメディアアプリケーション。例えばさまざまローミングパートナーとの間のVoice over LTE(VoLTE)トラフィックを、ビデオのトラフィックなどと分離して適切に処理するような機能を、通信事業者に販売すべく開発している企業があるという。

 3つ目は負荷分散装置やファイアウォールなどの利用効率を高める機能。トラフィックのペイロードを見て、これに基づき必要なトラフィックのみを、高度なセキュリティ装置に送り込むような仕組みだ。

OpenFlowはWAN/データセンターエッジから使われるようになり、NoviFlowの製品はこうした場面で他にない機能を提供するという

 NoviFlowでは、上記のようにネットワークエッジ/ゲートウェイにおけるOpenFlow利用が広がることで、同社の高付加価値スイッチも伸びるとみている。

「200Gbpsスループット、100万フローエントリ」の意味

 NoviFlowは、OpenFlowでスタンフォード大学と連携してきたモントリオール大学のソフトウェア技術に基づくスイッチを提供する企業。設立は2012年だが、同年12月には最初の製品(OpenFlow 1.1で100Gbpsスループット)を提供開始し、2013年4月には「世界最初のハイパフォーマンスなOpenFlow 1.3対応スイッチ」(ジョドイン氏)を発表した。

 ジョドイン氏は、NoviFlowのスイッチについて、ネットワークプロセッサを使った実装が、ASICや仮想スイッチを使った製品に対する差別化の重要な要素になっていると強調する。

 ASICではOpenFlowの新バージョンへの対応が遅れるし、パイプライン処理ができないなどの制限が生じる。仮想スイッチでは汎用プロセッサにいったんリダイレクトする処理が非効率的で、4、5Gbps/コア程度のスループットしか得られないとする。

 NoviFlowの製品は、現時点ではEZchipのネットワークプロセッサを使用。1Uサイズで200Gbpsのスループット、100万のフローエントリを実現するのに加え、毎秒1000のフローテーブル変更が可能で、上記のエッジにおける利用には特に適しているという。ソフトウェアのアップデートによる機能追加やバグフィックスも容易で、2014年にはソフトウェアアップグレードでパフォーマンスを2倍に上げるという。

 現時点でOpenFlow 1.3のスペックには部分的でなくフルに対応。例えばVLAN/MPLS/PBB(Provider Backbone Bridging)タグ、VXLAN/NVGREゲートウェイ機能を搭載している。また、レイヤ7までのパケット識別機能を備えている点が、大きな特色となっている。NoviFlowはスイッチに特化し、コントローラやアプリケーションをやるつもりはない。コントローラについては、接続性を幅広く確保していくつもりという。

 NoviFlowは2013年10月、ネットワークバリューコンポネンツと国内独占代理店契約を締結、日本市場に参入した。設立後1年あまりで日本市場に参入するのは、かなり早いようにも感じられるが、ジョドイン氏は、「SDNの導入で日本は米国を追い抜き、リーダーになった。米国は一時のブーム以降、ペースダウンしている」と話す。

インターネットエクスチェンジにおいて、BGPに伴う問題を解決できるという。ニュージーランドのCityLinkはNoviFlowスイッチの採用を発表した

「SDNはデータセンターのエッジから中心に向かって次第に普及する。WANトラフィックリダイレクション、メディアアプリケーション、その次にDPI(Deep Packet Inspection)による(データセンター内の)高価な機器へのトラフィックリダイレクションが普及し、これに続いて4、5年後にNFV(Network Function Virtualization)が使われ出す。コアデータセンター機器をOpenFlowにする動きが広まるのはその後だ」。

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