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» 2013年12月12日 00時00分 公開

プログラマ社長のコラム「エンジニア、起業のススメ」(6):日本のシリコンバレーは何処だろう (2/2)

[Engine Yard Tim Romero(ティム・ロメロ),@IT]
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福岡では、今

 再び福岡の話に戻る。

 スタートアップコミュニティのファウンダー(創設者)たちと話をすると、福岡の起業家のエコシステムに、大学がより深く関わっていることが分かる。

 地元の新興会社の多くは、創設者が大学在学中に始めたプロジェクトを基盤としたもので、その幾つかにはアドバイザーや株主、取締役といった実践的立場で大学教授が関わっている。さらに私が話をした学生たちは、地域の主要なスタートアップ会社について知っており、そこで働く人たちとの人脈を持っていた。

 面白いことに、創設者と教授の両方が、そのつながりは主に若い起業家のためになると考えている。しかし、長期的に最も多くの恩恵を受けられるのは、教授と将来の学生たちなのだ。

 大学とスタートアップ会社との、直接的で実践的な相互関係は重要だ。大学と起業家のパートナーシップは「種」で、そこからYahoo!やGoogleなどの幾百もの会社が大学のプロジェクトとして「芽吹き」、実社会のパワーハウスへと「育って」いった。

 「起業家にとって良い大学」としてスタンフォード大学やハーバード大学を挙げる評論家たちが、その根底にある理由について言及することはめったにない。それはカリキュラムや特別な教授陣の存在というよりも、学生たちが、理論的基礎に加え、実世界の問題や実用的な解決策に焦点を合わせた教訓から確実に学べるよう、教授陣が実社会のベンチャーで関わり続けていることだ。

 私が交わした一握りの福岡の起業家や大学のアドバイザーらとの会話が逸話的だということは認める。この教授と創設者とのパートナーシップがどの程度拡大しているかや、その結果、学生が教わる方法に意義ある変化が生じたかを示すデータを私は持ち合わせていない。数少ない有望な事例だけでは、新たなトレンドの存在を証明することにはならない。

 しかしその一方で、最良の解決法を見極めるには、多くの場合、たとえそれが小規模であっても問題解決がなされている実世界の例に目を向けることが最善だ。ひいては、こういった類いの問題が、今日の日本でどのように対処されているかに目を向ける方が、シリコンバレーで過去にどのように対処されたかを見るよりも、はるかに有益というものだ。

史実が示すもの

 日本とサンフランシスコの起業家精神の状況を比べて、克服できない文化的な違いについて弱気になるのは簡単だ。しかし、日本で日々起きている幾多の小さな成功に目を向ければ、はるかに楽観的な絵が描ける。

 日本はシリコンバレーではない。シリコンバレーの誕生は後にも先にも一度きりの出来事で、素晴らしい大学、急速なテクノロジーの変化、資本への容易なアクセス、大量の公共事業が相まった結果だ。米国で再びシリコンバレーが創生されることはなく、ましてや日本ではあり得ない。日本は最終的に、日本独自の起業家精神の成長を促す方法を見いだすだろうし、その道に沿って踏み出される前向きなステップには、注目する価値がある。

 私は福岡で目の当たりにしたものによって、かなり勇気付けられた。東京の起業家やベンチャーキャピタルたちは、極めて重要な史実に注目すべきだ。シリコンバレーは財政とビジネスの拠点、あるいはニューヨークやシカゴ、ワシントンDCの政治的中心地のような場所に形成されたのではない。世界で最も大きな成長と発明のエンジンは、当初米国の10大都市にも入らなかった比較的小規模な米国の都市――サンフランシスコで成長したのだ。

 発明と創造は恐らく、政治や金融の中枢から一歩離れた方が生まれやすいのだろう。ひょっとすると、日本では福岡が先導していくのかもしれない。

筆者プロフィール

Tim Romero(ティム・ロメロ)

Tim Romero(ティム・ロメロ)

プログラマでありながら、もはやプログラミングをする立場ではなくなってしまったプログラマ社長。米国ワシントンDC出身、1990年代初めに来日。20年間に日本で4社を立ち上げ、サンフランシスコを拠点とする数社の新興企業にも関わってきた。現在はPaaSベンダであるEngine Yardの社長として、日本の革新的なベンチャー多数の成功をサポートしている。


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