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» 2013年12月20日 18時00分 公開

転機をチャンスに変えた瞬間(6)〜宇宙飛行士 野口聡一:何もしないことは何も変わらないこと

一流企業社員から宇宙飛行士に“転職”した野口聡一さん。先行きが見えないリスクを冒してでもチャレンジしたいと思った、その理由とは

[聞き手 クライス&カンパニー 丸山貴宏,@IT]
転機をチャンスに変えた瞬間〜宇宙飛行士 野口聡一の場合

 テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」で宇宙への憧れを強め、スペースシャトルの打ち上げで「宇宙飛行士」が将来の夢になった野口聡一さん。「ぼくの経験はどんな人にも起こり得ること」というが、壮大な夢を長い間抱き続け、倍率572倍を突破して宇宙開発事業団の宇宙飛行士候補者に選抜されるのは、相応の努力や才能があってのこと。「偉大なる転職」を成功させ、夢を現実にした宇宙飛行士の、転機をチャンスに変えた瞬間とは──。

野口聡一(のぐち そういち) 宇宙飛行士

野口聡一

1965年、神奈川県横浜市生まれ。
東京大学大学院修士課程修了後、石川島播磨重工業に入社。航空宇宙事業本部に所属。 1996年、ASDA(現JAXA)入社、第16期宇宙飛行士養成コースに参加。NASAよりミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者)として認定され、基礎訓練コースに参加後、スペースシャトルの搭乗員に任命される。
2005年7月26日〜8月9日、スペースシャトル「ディスカバリー号」のミッションに参加。


やりたいことをやろう、そう本気で思えるかどうか

丸山 野口さんは、幼いころからずっと「宇宙飛行士になる」という1つの夢に向かって走り続けてきたのでしょうか。それとも、夢は夢として抱きつつも、目の前のことをコツコツこなしてきたら夢にたどり着いたのでしょうか。

野口 後者の方が近いと思います。中学生のころに見たテレビアニメで、宇宙への憧れを強めたことは事実です。また高校へ入学してすぐ、スペースシャトルの打ち上げを見て、夢が目標に結び付いたということもありました。高校3年生の進路相談時には、その目標を口にしたことを覚えていますから。

 以来「宇宙飛行士いいな」という思いは、ずっと変わりませんでした。でも、だからといって宇宙飛行士を目指してまっしぐらに突っ走ってきたかといえば、そうでもないんです。例えば会社に入って1年目に宇宙飛行士候補の公募があったのですが、そのときは応募しませんでした。それよりも、今はまだ会社で新しいことをいろいろ覚えたいなと。その場その場でできることを一所懸命にやってきて、回り道しながらキャリアアップをしてここまでたどり着いた、そんな感じです。

丸山 宇宙へ行くという仕事は、大きなやりがいがあると同時に、大きなリスクもあったと思います。倍率572倍という難関をくぐり抜けて宇宙飛行士候補に選ばれても、実際に宇宙へ行けるかどうかは分からなかったわけですから、会社を退職して新たな一歩を踏み出すまでには相当の覚悟も必要だったのでは。

野口 応募書類を出すときから自分で覚悟を決めて、決断しました。やりたいからやるんだという若さもあったと思います。新たなステージに挑むことに魅力を感じていたんです。

 転職しようと思ったとき、多くの人は「転職するリスク」を考えてためらってしまうかもしれません。しかし「転職しないリスク」というのもあるわけじゃないですか。だから、岐路に立って選択するときには、どちらのリスクも考慮した上で、そのリスクを冒してでも得るものは何なのか、それを冷静に見極めなければなりません。「やりたいことをやろう」そう本気で思えるかどうかですよね。

 夢を見る以前に、夢を見てもかなわないだろうと最初から諦めてしまう。面白そうだけど、大変そうだから何もしない……。そういう人もいるかもしれません。でも「何もしない」ということは、「何も変えようとしない」ということでもありますから。

構成/平山譲


聞き手 丸山貴宏

丸山貴宏

クライス&カンパニー 代表取締役社長

リクルートで人事採用担当を約7年経験後、現社を設立。転職希望者面談数は1万人を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。「人の根っこのエネルギーを発掘する作業が、われわれの使命」がモットー。著書「キャリアコンサルティング」(翔泳社)



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※この連載はWebサイト「転機をチャンスに変えた瞬間」を、サイト運営会社の許可の下、一部修正して転載するものです。データなどは取材時のものです。

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