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» 2014年02月07日 18時35分 公開

プライベートクラウドをめぐる誤解(1):「プライベートクラウド」という言葉は要らないのか (2/2)

[三木泉,@IT]
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 筆者は、いわゆるクラウドサービスを否定する意図はまったく持っていない。今後企業におけるクラウドサービスの利用が広がるのは明らかだ。何らかの社外アプリケーションサービス(SaaS)企業で利用するのは、既に当たり前といってもいい。2014年以降は企業が社内のITインフラ運用のために、社外のインフラサービス(IaaS)を活用するケースも、目立つようになるだろう。だが一方で、社内や企業グループのためのITインフラを、情報システム部や情報システム子会社が統合的に運用・管理する動きもさらに進むと筆者は考えている。

 この2つは矛盾する動きなのだろうか? そうではない。企業IT運用の選択肢が増えてきたということだ。企業は、社内の既存業務アプリケーションおよびデータの現状や、新規アプリケーションおよびデータのニーズ、クラウドサービス利用に伴うリスク、そしてどのように自社のITをコントロールしたいかといった点をそれぞれ考慮して、ITインフラをどのように運用していくかを考えていくことになる。

 こうした考慮の結果として、100%社外のクラウドサービスを利用するケースも増えるだろう。社内での運用を基本に据えるケースも出てくるだろう。その中間で、社内と社外の双方を、さまざまな比率や組み合わせで利用するケースも増えてくるはずだ。こうした、社内IT運用の重要な選択肢の1つがプライベートクラウドだと考える。

誤解2:「仮想化=プライベートクラウド」である

 ITの効率化のために、仮想化技術を使ったサーバー統合を進める企業が増えている。これ自体が、IT運用に関して非常に大きな変化とチャンスをもたらしている。個々のサーバー機という存在から離れ、環境を標準化することで、複数のサーバー機やアプリケーションに対する統合的なサービスを展開できる可能性が生まれるからだ。

 そもそも、アプリケーションとインフラ製品の購入サイクルを切り離すことができる。また、キャパシティプランニングが楽になる。障害対策も容易になる。バックアップや災害対策など、類型化を進めながらもきめ細かく対応できる。また、社内で新しいアプリケーションを次々に展開しなければならない環境では、IT環境を使って実際に開発などを行うユーザーに対し、迅速にITを提供できるようになる。

 仮想化技術は、それ自体が上記をはじめとするメリットを実現できる基盤だ。この上で、ITをサービスとして提供するための環境が徐々に整ってきた。それを活用して、企業であれば社内ユーザーのニーズに直接結びついたサービスを、社内で提供することを目指すのが、「プライベートクラウド」という言葉の象徴する意味だ。つまり、仮想化だけでは、社内のユーザーに対するメリットを必ずしも明確化できない。これを越え、サービスとしてのIT機能の提供を図っていくのが、プライベートクラウドの本質だ。

誤解3:プライベートクラウドは、特定のベンダーや製品の宣伝文句

 企業で仮想化環境をプライベートクラウド化しようとする場合に、どのような機能を実現すべきかは、各企業のIT利用形態や事業環境によるので、一概にはいえない。しかし、サービスとしてのインフラ提供(IaaS)については、利用量に基づく社内課金を可能にする仕組み、およびセルフサービスでユーザー自身がITリソースを準備する仕組みが実現できることが望ましい。それ以前の点としては、バックアッププロセスをサービスとして提供することが考えられる。

 こうした機能を実現するのに、特定のベンダー、特定の製品を利用する必要はない。現在では、仮想化基盤からクラウド運用ツールまで、多数の製品が登場しており、選択肢が広がっている。商用製品がいやなら、OpenStackなどのオープンソースソフトウェアを活用する手があり、実際にOpenStackでプライベートクラウドを構築している組織もある。

誤解4:クラウドの運用など、自社にはできない

 重要なことは2つある。仮想化環境を構築した時点で既に問題化しているが、ハードウェアの管理ばかりを気にする人がいる。しかし、仮想化はそもそも、ハードウェアから分離したIT運用を実現できることが最大のポイントだ。プライベートクラウドでは、さらにユーザーにとって使いやすい機能をサービスとして提供することが求められる。物理サーバーと仮想マシンとの対応関係をスプレッドシートで管理しているようなメンタリティでは、サービスとしてのIT運用といった発想には至らないだろうし、そうした組織が、プライベートクラウドに近づく取り組みをすることはないだろう。

 また、プライベートクラウドの運用が複雑なものになってはならないということも指摘できる。幅広い選択肢の中から、使いやすいツールを選択し、積極的にこれを使って運用していくことが重要だ。使いやすい管理ツールを導入することは、決して運用担当者だけが楽をすることではない。より直接にユーザーニーズに応えられるようにすることが目的だ。基本的にはさまざまな局面での運用の自動化を、積極的に推進しない限り、迅速で確実なサービスを求めるユーザーニーズに対応できない。


 今回は第1回として、「プライベートクラウド」という言葉をめぐる誤解を取り上げた。次回は、プライベートクラウドという言葉で表現されるような、よりよいIT運用のためのデータ管理に焦点を当てた記事をお届けする。


関連特集:プライベートクラウドをめぐる誤解

企業などの組織内で、サーバー仮想化基盤を構築・運用することが「プライベートクラウド」だと考える人は多いようだ。しかし、クラウドサービスが単なる仮想サーバーホスティングサービスでないのと同様、プライベートクラウドも単なるサーバーの仮想化統合ではない。では、プライベートクラウドを構築すべき理由とは何なのか。また、その具体的な要件とはどういったものなのだろうか。特集では将来性を加味したプライベートクラウド構築のあるべき姿を探る。




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