ウォーターフォールとのハイブリッド――手法にとらわれない“ニフティのDevOps”特集:DevOpsで変わる情シスの未来(6)(1/3 ページ)

市場ニーズに迅速に応える上で、アジャイル開発を核とするDevOpsの実践が鍵となることは間違いない。だが各開発手法は「ビジネスゴール」という目標達成のための手段にすぎない。

» 2014年02月25日 18時00分 公開
[唐沢正和@IT]

目的に応じてウォーターフォールとDevOpsを使い分け

 インターネットサービス「@nifty」を中核に、さまざまなWebサービスを展開しているニフティ。2010年からはクラウドサービス「ニフティクラウド」をスタートし、競争が激しいIaaS市場の中で多数のユーザー企業の支持を獲得している。同社はこうしたサービス開発・運用においてDevOpsを取り入れているという。

 ただ、同社の場合も「DevOpsに取り組もう」といった明示的な形ではなく、「DevOpsという言葉が注目される以前から、開発部門と運用部門が連携する体制が自然と醸成されていた」という点は、これまでに紹介したWebサービス系企業と同様だ。しかし同社の場合、「DevOpsを全サービス開発に一律に適用するのではなく、目的に応じてウォーターフォール開発と使い分けている」という点に特徴がある。この背景には、どのような考え方があるのだろうか?

 クラウド本部 クラウド事業部 クラウドプラットフォーム部 課長の高野祥幸氏、クラウド事業部 クラウドプラットフォーム部の竹内豪氏、そしてコンシューマ本部 WEBサービス事業部 WEBサービス開発部 江草正庸氏の3名に話を聞いた。

運用主導のDevOpsで、共にサービスゴールを見据え、品質を担保する

 「弊社の場合、収益・ロイヤルティの向上など、“サービスのビジネスゴール”を開発部門と運用部門が共に見据えてプロジェクトを進める文化が、自然な形で根付いていると思います。DevOpsという言葉が出てくる以前から、こうした連携を当たり前のように行ってきました」

ALT クラウド本部 クラウド事業部 クラウドプラットフォーム部 課長の高野祥幸氏

 こう話すのは、クラウド事業を担当する高野氏だ。一方、パソコンやスマートフォンなどに向けたコンテンツを提供しているB to CのWebサービス事業を担当する江草氏も、「弊社ではさまざまWebサービスを提供していますが、顧客満足度を担保する上で、開発部門と運用部門の連携は欠かせません」と語る。

 ただ、「当たり前のように行ってきた」とはいっても、DevOpsの体制が醸成されたことには明確な理由があるのだという。

ALT コンシューマ本部 WEBサービス事業部 WEBサービス開発部 江草正庸氏

 「リリースサイクルが速いWebサービスでは、リリース後の安定運用を意識した開発を行わないと、サービスが破綻してしまうリスクがあります。市場にリリースしたサービスの品質担保・安定運用は、B to Bのクラウド事業、B to CのWebサービス事業に共通する課題です。そこで、より効率的で、高い品質を担保できる開発の在り方を目指した結果、必然的に運用と開発が連携するDevOpsの形になっていった経緯があります」(江草氏)

 具体的には、開発作業に入る前のミーティングの段階で、開発するサービス内容に応じて、ログの出力先やバックアップ方式、データ構造、セキュリティ要件、SQLの書き方など、運用側から細かい要件を提示し、それに合わせて開発を進めているのだという。

 「例えば、各モジュールのパラメーターが1つ違うだけでも運用には大きな影響が出てしまいます。そこで安定的に運用するための開発要件をあらかじめ明確化して、開発部門と共有しています。こうした運用部門主導のDevOpsによって、開発側も『どんなサービスが求められているのか』を明確に理解することができます。まさしく開発部門、運用部門が同じゴールを見据えてプロジェクトに取り組むDevOpsの形になるわけです」(江草氏)

ALT クラウド事業部 クラウドプラットフォーム部の竹内豪氏

 クラウド事業部の竹内氏も、「ニフティクラウドの開発においても、運用側がある程度の主導権を持っています」と語る。例えば「重要なバッチ処理を適用する場合、その影響を適用前にチェックできる機能(ドライラン機能)」「全ユーザーに影響のあるバッチ処理を適用する場合、1ユーザーだけを指定してその影響をチェックできる機能」など、運用の効率化・確実化に必要な機能も併せて開発を依頼する。「つまり、リリース後の安定運用を見据えて、開発するアプリケーションの設計を決めてもらっている」というわけだ。

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