開業に必要な資金と自分で準備できる資金の差額を把握し、対策を立てる開業【パーフェクト】マニュアル(2)(3/3 ページ)

» 2014年03月13日 18時00分 公開
[税理士・社会保険労務士 望月重樹,@IT]
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イ 必要資金が多過ぎる

 これは、そもそもの開業準備資金が初期段階として多過ぎるということです。何の実績もない独立開業時から多額の必要資金が掛かるのであれば、よっぽどの採算見通しや担保価値などが無いと厳しいと考えて間違いありません。

 とはいえ「多額の必要資金」が幾らなのかは、業種、立地、採算性などによってまったく異なります。経験から言えば、5000万円を超える融資は、誰であろうとも審査が通りにくいレベルです。開業当初の個人事業主であれば、1000万円の融資でも多過ぎるという認識でいた方がよいでしょう。

 店舗の内装外装の工事が必要になる場合でも、できることなら融資の申請額を500〜700万円には抑えたいところです。

 「設備投資は1000万円単位でお金が掛かるのが当たり前」というイメージがあるかもしれませんが、何十年と営業活動を続けてきた法人が設備投資に何千万円も掛けるのと、個人事業主が初めて経営を行うときの話を同じレベルで考えてはいけません。

 金融機関などの第三者の目はシビアです。かつて大企業のトップセールスマンだった人でも、独立開業すれば若葉マークを付けた新米経営者の1人でしかありません。非現実的な計画では、融資を受けにくいでしょう。

ロ 自己資金が少な過ぎる

 必要資金と自己資金の関係は、下記の式が大まかな目安です。要するに必要資金の30%は自己資金で賄いましょう、ということです。

必要資金×30%≦自己資金


 これは、30%以上の自己資金があれば必ず融資を受けられるという話ではありません。30%以上用意できて初めて、審査の土俵に上れるということです。

 この金額の資金をそろえられない場合は、計画段階までさかのぼって調達方法を見直しましょう。「設備投資の場合には誰でも融資を受けられるはず」という軽い気持ちで開業準備の資金を見積もって、金融機関に申請を出したものの、金融機関から却下されて初めて設備投資の資金が多過ぎることに気付くのはよくあることです。いったん原点に戻って、「本当に必要な設備投資なのかどうか」再度考え直してみるべきでしょう。

ハ 事業そのものの採算が見込めず、リスクが高い

 金融機関から融資を断わられる場合には、それなりの理由があります。事業そのものの採算が見込めないケースも多々あります。まだ事業を始めたわけではないのですから、いくらでも引き返せます。ビジネスモデルを再度考え直して、チャンスを待つのも1つの方法です。

 なお、金融機関には都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合など、幾つかの種類があります。都市銀行は大企業を主な取引先としているので、通常個人事業の融資は難しいでしょう。一方の地方銀行、信用金庫、信用組合は中小企業を主な取引先としています。ただし独立開業の融資に、積極的に取り組んでいるところとそうでないところ、まったく取り扱っていないところといろいろあります。まずは各金融機関の窓口で問い合わせてください。

 これらの金融機関以外に、新規開業を取り扱ってくれるのが、政府系の金融機関である日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫は、創業や起業を行う人向けの融資を行っている金融機関で、「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」「再挑戦支援資金」「食品貸付」「生活衛生貸付」「新創業融資制度」といった融資の種類があります。

 これらの融資を申し込むには、日本政策金融公庫の最寄りの支店に行き、「借入申込書」と一緒に「創業計画書」と呼ばれる経営計画書を提出します。

 次回から、日本政策金融公庫に提出する経営計画書を例に取って、経営計画書の作り方を解説します。

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望月重樹

税理士法人羅針盤代表社員。2002年税理士試験合格。税理士でありながら社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、MAS監査プランナーの資格を持ち、個人事業主の経営・労務管理や起業家のスタートアップをトータルでサポートしている。著書に「わかりやすい減価償却の実務処理と節税ポイント」「わかりやすい役員給与の実務処理と節税ポイント」(ともに日本実業出版社)がある。


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