脱「1億総縛り」を目指すスマホメーカーものになるモノ、ならないモノ(54)(2/2 ページ)

» 2014年03月17日 18時00分 公開
[山崎潤一郎,@IT]
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4.5インチ画面のLTE対応スマホを1万5000円を切る価格で実現

 さて、freetelの1万2800円は安価で素晴らしいのだが、LTEのサポートなど、より性能がアップした端末を期待する自分がいるのも確かなのだ。しかも価格はできる限り安価にお願いしたいと、わがままも言っておく。特にfreetelはテザリングが可能なので、回線縛りのない安価なモバイルWi-Fiルーター代わりに使うことができれば、モバイルライフがこの上なく充実すること間違いない。

製品写真もオフィスの一角に設えた簡易スタジオセットを利用して自分たちで撮影する。企画中のタブレット端末や、デザインの試行錯誤を繰り返したであろう、スマートフォンのモックアップがたくさん並んでいた

 朗報がある。プラスワン・マーケティングでは、2014年末をめどに4.5インチ画面のLTEスマートフォンの発売を予定しているそうだ。「価格は1万5000円以内に抑えたい」(増田氏)というから頼もしい限り。ただ、商品の企画から完成まで45日を実現しているのに、LTE版の登場が2014年末とは悠長な話に聞こえる。

 現時点では、LTEチップの供給に絡む問題があり、LTEへの対応を見送っているそうだ。LTEチップの生産は、現状、クアルコムがほぼ独占している状態だという。そのため価格は「約80ドル」(業界関係者)と高止まりした状態が続いている。

 そんなLTEチップのビジネスに、台湾のチップメーカー、MediaTekが参入するというニュースが流れた。となると、現時点で公表されているわけではないが、スプレッドトラムのような中国企業もLTEチップに対し沈黙したままでいるとは考えにくい。

 そこで期待できるのがLTEチップの価格下落だ。業界関係者の中には、台湾や中国の企業が参入することで「価格は4分の1まで下がる」と占う者もいる。なるほど、LTE版freetelは、それを待ってからという話のようだ。また、タブレット端末への参入も予定しているそうだ。「7インチ画面でクアッドコアを搭載し、セルラーモデルで1万9800円を実現したい」(増田氏)というから、こちらも期待が膨らむ。

ぜんぶスマホのせいだ!

 今回、freetelを取材して感じたのは、コモディティ化が極限まで進んだ今、デジタルデバイスにおける「メーカー」って何? という疑問だ。

 突き詰めてしまうと「端末ブランドの構築とサポート業務」がメーカーの仕事となっているわけで、「Designed by Apple in California Assembled in China」と製品に刻印しているAppleなどは、その大規模な例といえるのだろう。「デザインコンシャスな端末」というブランドを構築したAppleに対し、徹底した安売りブランドのfreetelといった構図といえるだろうか。

 なるほど、こんな時代だからこそ、工場然とした巨大な施設と千人を超える従業員を抱えるPMCのような企業が生き残っていくのは、難しいということを再確認させられる取材でもあった。

 実際、PMCにもリストラの嵐が吹き荒れ、日本国内でのスマートフォンの製造を休止すると発表している。iモードの全盛期、ガラケーが破竹の勢いを保ち、日本メーカーがわが世の春を謳歌していた時代がつい先日のように感じられ、筆者は、書斎の窓を開けて叫びたくなった。「ぜんぶスマホのせいだ!」

著者プロフィール

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社とのコラボ作品で街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。OneTopi「ヴィンテージ鍵盤楽器」担当。近著に、『コストをかけずにお客さまがドンドン集まる! LINE@でお店をPRする方法』(中経出版)がある。TwitterID: yamasaki9999


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