北大「アカデミッククラウド」を支えるCloudStackServer & Storageイベントリポート CloudStack Day Japan 2014(1/2 ページ)

クラウドサービス事業者らが多数参画するIaaS構築環境であるCloudStack。国内初の大規模イベントから、プロジェクトの進捗や機能、参画企業のサービス展開などをリポートする。

» 2014年04月02日 19時37分 公開

 2014年3月6日、CloudStackに関する国内初の大きなイベント「CloudStack Day Japan 2014」が開催された。CloudStackを扱うエンジニアも多数参加していたが、ユーザー企業の担当者の参加も多く、プライベートクラウドやクラウドサービスの導入を考えた場合の選択肢として、注目を集めていることが伺えた。

 本稿では、本イベントのセッション担当実行委員の立場から見たセッションの様子をリポートする。

CloudStack 4.4は実運用のニーズをくんだ機能が盛り込まれる

米シトリックス Sheng Liang氏

 イベントの基調講演には、CloudStackの生みの親である米シトリックスのSheng Liang氏が登壇、「Apache CloudStack: Present and Future」をテーマに講演を行った。

 2008年9月に開発が始まったCloudStackは、2012年4月のApache Software Foundationへの寄贈を経て、間もなくバージョン4.3がリリースされる見込みだ。

 Liang氏は、世界では既に108カ国に及ぶ企業/組織で採用されているといい、世界標準のクラウド管理ツールになっていることを示した。ちなみに、日本でのCloudStack採用実績数は、米国、オランダ、英国に次ぐ4番目だという。

 また、今後のCloudStackの開発について、「最新のCloudStack 4.3ではCloudStackを採用している事業者からのリクエストであるローリングアップデート機能やVirtual Routerの監視機能、HA機能など、運用における可用性の向上を意識した機能が実装される。また、CloudStack 4.4ではオーバーレイネットワーク機能や「Distributed routing」機能を実装する。VirtualRouterが複数のZoneの存在する仮想マシンのネットワーク機能を有することができるようになり、ZoneをまたいだVirtualRouterの冗長構成も可能になる見通しだという。

「ビッグデータ処理パッケージ」も提供する北海道大学アカデミッククラウド

 北海道大学情報基盤センター 副センター長で教授の棟朝雅晴氏は、「北海道大学アカデミッククラウド」の取り組みについて講演を行った。北海道大学アカデミッククラウドは、CloudStackを基盤として構築したスパコン並みの性能を提供するシステムとして、2011年11月から稼働している。

講演中の北海道大学情報基盤センター 副センター長 教授 棟朝雅晴氏

 同氏はアカデミッククラウドについて、「Hadoopなどのライブラリを持つ“ビッグデータ処理パッケージ”を提供するなど、研究の国際競争力強化のためにはこれら高性能なサーバーの調達を短期に実現できるようにならなければならない」と解説。ちなみに、「学術研究用途のクラウドには一般のパブリッククラウドとは異なる要件が求められる。40コアの仮想マシンはすぐに売り切れた」という。

 CloudStackを利用した感想として、「北海道大学アカデミッククラウドは、世界的にも先進的な取り組みだ。九州大学や北陸先端大学など全国の大学からも相談を受けた。アカデミッククラウドにはCloudStackを採用する学校が少なくない。学生でも簡単に構築でき、OpenStackと比較してコードを書かなくても利用できる点で、比較的小規模の研究室用途にも向く」とし、今後の課題については「一般のパブリッククラウド同様、パブリック/プライベート/コミュニティのそれぞれにおけるクラウド連携が問われてくる」と述べた。

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