北大「アカデミッククラウド」を支えるCloudStackServer & Storageイベントリポート CloudStack Day Japan 2014(2/2 ページ)

» 2014年04月02日 19時37分 公開
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CloudStackの発展に寄与してきたクラウド事業者

 基調講演の後は、クラウド事業者を中心としたセッションとシステム構築を中心としたセッションに分かれ、各企業がCloudStackについての取り組み、実績などを紹介した。ここでは、各社の活動のダイジェストを紹介しよう。

IDCフロンティアは、2010年10月から検証を開始。「機能拡張や不具合の解消に向け、Cloud.com(現Citrix)と共同で課題を解決しながら、現在のパフォーマンスが良く安定したパブリッククラウドサービスの提供を実現した」と、日本で最初にCloudStackを採用してパブリッククラウ ドサービス提供を始めた同社らしい発表を行った。

 NTTコミュニケーションズは「CloudStackのアドバンスドモードで問題となるVLANの枯渇対策として、XVLAN機能の実装方式の提案および開発を行い、CloudStack4.3RC版にXVLAN機能が実装された」と、直近の開発貢献に付いて発表した。また、XVLAN機能以外にも、CloudStack APIをプログラミング知識なしで利用できるCloudn CLIツールをオープンソースソフトウェアとして公開している。

 KDDIは、VMwareとKVMを使ったマルチハイパーバイザー環境でCloudStackを運用している。マルチハイパーバイザー環境下での仮想マシン障害の監視方法のノウハウを蓄積しているという。

 TOKAIコミュニケーションズでは、各地域の19のデータセンター事業者が協力して提供するクラウドサービス「JMTクラウド」でCloudStackを採用している。海外の大規模事業者に対抗するため、データセンタークロスアライアンスを結び、各地域のデータセンターを接続、DR環境やバックアップ環境を広域で構築できるようしている。日本国内6カ所にゾーンを構え、それぞれ各地域の事業者により運用されているが、それらを1つのポータルから利用できる仕掛けをCloudStackで実装している。

 インテックは「システム構築しやすいクラウド」をコンセプトとしたクラウドサービス「EINS/SPS SelfPortal」を展開しており、CloudStackだけでなく、OSSの運用監視ツール「Zabbix」向けコントロールAPIも提供している。今後もSaaSやPaaSとの連携機能などを提供していく予定だという。

 日立製作所は「独自機能としてユーザーの手間を低減する接続ブローカレス機能や、独自の仮想デスクトップ配置最適化機能を実現することで質の高いDaaS環境を提供している。今後はHyperVisorノードのストレージで提供する分散共有ファイルシステムを展開していく」という。

 富士通は、日本で唯一CloudStackのトレーニングサービスを提供しており、「CloudStack導入の“難しい部分”に関するノウハウを提供することで、導入時の障壁を低減できる」と自社の技術力をアピールした。

 デルは、CloudStack環境のみならず、アクセンチュアや、マイクロソフト製品のSIを多く手掛けるアバナードと提携し、Windows Azure、OpenStackのクラウドを含め国内外複数のクラウドを取り扱い、一括提供する体制を披露した。

ストレージ環境やハードウェア環境の対応状況

 クラウディアンとネットワールドはストレージ環境との連携について発表した。まず、オブジェクトストレージおよびオブジェクトストレージ管理ツールを提供するCloudianは、CloudStackにプラグインとして追加でき、CloudStackの管理者画面からCloudianの操作を行える。CloudianはAmazon S3への自動階層化も実装されており、外部に預けることが許可されるデータのみをパブリックストレージであるAAmazon S3に保存することで、ストレージ容量の問題を軽減できるという。

 一方のネットワールドは、CloudStackで課題となっていたバックアップ時間、ストレージの性能劣化について、同社統合管理製品である「NetApp VSC」との連携で解消する方法を解説した。この連携機能により精度の高いバックアップサービスや柔軟性の高いボリュームサービスが提供可能になるという。

 ユニアデックスは、仮想化リソースを統合する「Cisco UCS」と連携させることで可能となる、データベースサーバーなどに向けたベアメタルプロビジョニング機能を紹介した。

 同社は企業向けプライベートクラウドにおいて、CloudStack環境構築の実績を多数持つだけに「クラウド環境構築は落とし穴が多く、信頼できる構築・保守体制を持つSIerを選定することが重要」とのメッセージを強調した。

 クリエーションラインは自社で開発したスケールアウトNASの「Amage」を紹介するとともに、「クラウド構築・運用に関するさまざまなインフラの課題は専門家に発注し、それぞれの主幹業務に専念してほしい」とメッセージを送った。

 日商エレクトロニクスは導入後も安心して運用可能な、サーバー、ストレージ、ネットワーク、ハイパーバイザーを最適な構成で組み上げた「Nissho-Blocks」を紹介している。

ハイブリッドクラウド環境でのChefの使い道、SDNによる一括管理の流れ

Chefの開発者であるMichael Ducy氏

 同イベントの特別講演では、構成管理ツールとして人気の高い「Chef」を開発するMichael Ducy氏が登壇した。プライベートクラウドからパブリッククラウドへの仮想マシン移行について、既存の管理ツールが現実的なハイブリット環境の運用ツールとしての解とはなっていないことを指摘し、「ハイブリットクラウド環境で仮想マシンを管理するには、設定情報のみをChefなどを使ってクラウド間を移行させるのが現実的である」と述べた。

 Schuberg PhilisのHugo Trippaers氏は「世の中のSwitchデバイスはコントロールプレーンとデータプレーンが一緒に入っていることは今までの歴史で決まり切ったことになっている。SDNとはコントロールプレーンでデータプレーンを一括管理することがSDNである」と解説した。その上で、「CloudStackを実装する際もVLANなどで分けて構成されているが、今後は対応製品も増えているのでSDN製品を使って一括管理を行うようになると予想している。今後SDNは次のステップとしてL4-L7の機能も対応していくだろう」と述べた。

終わりに

 全ての講演企業が既にビジネスフェーズにあり、CloudStackを用いたソリューションを独自に展開していることが特徴的であったといえる。先の記事でも言及した通り、クラウドサービス事業者の貢献度が大きなCloudStackらしさがここでも垣間見えた。

 各社がCloudStackの新機能に対して積極的に調査・検証しており、市場に早く投入しようという意気込みが感じられる。また、HyperVisorノードのストレージを利用した分散共有ファイルシステムについては数社が提案しており、今後のトレンドの1つとなるのではと感じられた。

 クラウド事業者によるサービス提供やプライベートクラウド構築のスピードを考えた場合、CloudStackは現実解として優れたソリューションとなったといえるだろう。

イベント終了後、イベント運営メンバーと講演者らの記念撮影も

筆者紹介

本稿は下記執筆陣による共同執筆です。

CloudStack Day Japan 2014 実行委員

  • 佐藤 博之(株式会社IDCフロンティア)
  • 照川 陽太郎(株式会社ネットワールド)
  • 平田 千浩(日商エレクトロニクス株式会社)
  • 渡邉奈月(株式会社IDCフロンティア)

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