IBMが提唱する「Software Defined Storage」はデータ経済性を変革する

データ量が増え続けても、将来どうなるかが分からないデータたちの保有方法を計画できるか? 経済性を損なわないために必要なのはSoftware Definedな仕掛けだという。

» 2014年05月26日 10時00分 公開
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 ビッグデータ時代を迎え、企業のデータに対する考え方も大きく変化し始めている。IBMではこの変化を、“Systems of Record”と“Systems of Engagement”という考え方で整理している。

 Systems of Recordは従来型の業務アプリケーションに代表されるシステムで、主な狙いは社員が社内のデータをいかに効率よく利用するかという点にあった。扱うデータは「過去の実績」であり、多くが構造化されたデータだ。これらのデータは、企業活動という「現実」に関する、ごく一部の情報を扱うものにすぎなかった。こうしたシステムではデータの増加ペースもほぼ正確に予測でき、半年後、1年後に必要となるストレージをあらかじめ準備しておくことが可能で、いわば静的なシステムでもある。

 一方、最近になって注目され始めているのが“Systems of Engagement”という考え方だ。これは、前述の静的かつ定型的なデータに加えて、より市場や顧客に近いところから、あるいは人以外のセンサーや各種機器から得られるデータを収集/分析して、顧客や周辺環境の情報と接続し、より広い現実の情報の中から「将来を予知」する知見を見つけて企業利益に結び付けていくシステムと言える。

 この、多様な大量のデータを扱う時代に対して、IBMはストレージ・システムに対してどのような答えを用意しているのだろうか。日本IBM システム製品事業本部 ストレージセールス事業部 事業部長 波多野敦氏に取材した。

「データ経済性」というメッセージの革新性

 波多野氏によると、IBMではこうしたデータの種類、質、ライフサイクル、さらにはその価値を予測することが難しくなっている状況でデータの最適配置・管理を行うために“データ経済性”という方法論を提唱しているという。

 そこにはデータからどのような知見が得られ、それが企業利益にどう寄与するかというデータ自体が内包する“価値”と、データを保存し、扱っていく際に発生する「コスト」の両面が含まれる。

 「企業活動の一環としてデータを扱う以上、経済性は無視できない重要なポイントであり、得られる利益と投じるコストのバランスを取っていく必要がある。こうした大前提を踏まえた上で、ストレージシステムについても見直しを図るべき、というのがIBMの考えです」(波多野氏)

 単純に、大きな利益が期待できるデータに対しては相応のコストを掛けてもよいだろうが、現時点で、今後どれだけの価値が引き出せるか判然としないデータに対してはできる限り低コストで保存したい、という要望がある。

 こうしたニーズに対しては、以前から階層化ストレージという考え方がある。性能とコストのバランスが異なるさまざまなストレージシステムが開発されている。

 IBMではあらゆるニーズを網羅する広範なストレージ製品をラインアップしており、GB単価は高額だがアクセス速度が極めて高速なフラッシュストレージや高速/中速/低速のHDD、さらにGB単価は極めて低く、長期保存にも適するテープデバイスまで、全てがそろっている。こうしたストレージデバイスを適材適所で配置し、データの価値に見合った格納場所に置くことで、静的な意味でのデータ経済性を実現することはできる。しかし、現在ではこうした静的な対応だけでは十分とは言えない状況になりつつある。

変わるデータの価値に追随するダイナミックさとSDS「Elastic Storage」

 ビッグデータに代表されるデータでは、大量のデータを迅速に分析して知見を獲得、それをビジネスに生かしていくスピードが何より重要となるため、大量のデータに迅速にアクセスできるストレージシステムが必要となる。一方、金融取引のセッション情報などのように、絶対に失われてはならないデータの場合、堅牢性や可用性が最優先となる。さらに、新規ビジネスの立ち上げなどでは、成功すれば爆発的なユーザー数の増加が見込まれるため、最初は小さく始めたとしても、ビジネスの成長に見合った速度で容量拡大が可能な柔軟な拡張性が必要だろう。

 このように、データの価値によってコストを掛けるべき要件が異なってくるが、さらに問題を複雑にしているのは、こうしたデータの価値自体がダイナミックに変化することだ。

 つまり、これまでは特に価値はないと思われていたデータがある時点で宝の山に変わる、といったことが起こるのだ。データ経済性の観点でストレージデバイスを適材適所で配置し、要件に応じてデータの配置を考えたとしても、データ自体の価値が変わってしまえば配置を変更せざるを得ない。しかし、こうした配置変更を人力でやっていては、ストレージシステムの経済性は満たせたとしても、人的コストが跳ね上がってしまい、トータルでの経済性は損なわれてしまう。

地球規模で、何億ファイルもの数ペタバイト級のデータに瞬時にアクセスできる「Elastic Storage」

 こうした問題に対するIBMの回答が、Software Defined Storage(SDS)への取り組みだ。先ごろ発表された同社のSDSポートフォリオの1つである「Elastic Storage」は、さまざまなストレージデバイスやクラウドストレージを仮想的に統合してシングルイメージの仮想ストレージとして見せ、さらにポリシーに従ってデータをダイナミックに再配置する。

 そのスケール感は、「地球規模で、何億ファイルもの数ペタバイト級のデータに瞬時にアクセスできる」(波多野氏)というものだ。

 IBM自身が提供するSoftLayerや、他社クラウドにも対応予定となっており、オンプレミスでもハイブリッド・クラウドでも、ストレージのベンダーやデバイスを気にすることなく透過的なアクセスを実現する。

Elastic Storageが実現する「データ経済性」とは

 ストレージデバイスの筐体内にフラッシュやHDDを混載し、自動再配置を行う階層ストレージの機能は、IBMでは「IBM Easy Tier」として以前から提供されていたが、Elastic Storageではこの機能を、筐体を越えてグローバルに拡大した形になる。データが実際にどこに保存されているかを意識せずに、シングル・ネーム・スペースでアクセスできる点は運用上の煩雑さの解消につながり、利用上の利便性も大幅に向上する。クラウドを含めた任意の保存場所間でインテリジェントにデータ移動を行うElastic Storageの機能があれば、IBMが提唱するデータ経済性の考え方は単なる理想論ではなく現実的なソリューションとして活用可能になると言えるだろう。

 さらに、GB単価を引き下げたいという用途に関しては、テープドライブであるLTOとLTFSを組み合わせることでテープに保存したデータをあたかもHDDのファイルシステム上にあるかのようにアクセスすることが可能になる。

 「これにElastic Storageを組み合わせればデータがテープ上に保管されていることを意識する必要すらなく、必要な時にアクセスでき、かつデータ保存のためのGB単価は圧倒的に低コストになるのです」(波多野氏)

筐体を超えて自動階層化を実現する技術、配下のストレージをすべて倍容量にする技術

 Elastic Storageが製品化される一方、ストレージデバイス側の技術革新も進んでいる。

 波多野氏は「インテリジェントにデータ移動を行うElastic Storageの機能をビジネスメリットに直結させるべく、実際にデータの保存場所となるストレージデバイスの進化も継続しています」と、ハードウェア側の機能優位性、Elastic Storageとの親和性を示してくれた。

 例えば、ミッドレンジストレージ装置である「IBM Storwize V7000」では“IBM Real-time Compression”が実装されている。

 これは、以前からある重複排除や後処理によるデータ圧縮とは異なり、データの書き込み時にストレージ側でリアルタイムにデータ圧縮を行うという、IBMが特許を保有する技術を使った機能だ。2014年5月に強化されたV7000は、この圧縮処理をハードウェア・アクセレレーションによって10倍高速化し、本番データにも適用可能な、レイテンシを感じさせないデータ圧縮処理を実現している。

 圧縮率はデータの内容によって異なるが、圧縮効果が出やすいCAD/CAMデータやデータベースの場合では最大で5分の1に圧縮できる例もあるという。同社の検証によると、平均的な圧縮率は55%と、おおよそ実容量の2倍の実効容量を確保できる計算になる。なお、Real-time CompressionはV7000の配下に仮想統合された他社製ストレージへの書き込みの際にも有効だ。

 つまり、同製品を介して書き込むことで、既存のストレージの総容量が一挙に2倍になるという大きな効果をもたらす。この機能には、これまでのストレージへの投資効率を改善し、データ保存のコスト計算の大前提を根底から覆すインパクトがあると言えよう。

 また、クラウドストレージの魅力としてよく挙げられる「手放しでの運用」に関しては、XIVが対応する。XIVが運用管理性の向上に注力したストレージで、従来のストレージに見られるような専任のストレージ管理者による運用管理設定などは必要なく、ストレージ自体が自動的に最適化を行なう。いわば、オンプレミスやクラウドサービス向けに設置するクラウドストレージとして活用可能な製品だ。

いますぐ実現する、将来のデータ経済性の改善に向けた取り組み

 このように、それぞれの特長をさらに磨き上げたストレージデバイスがそろい、かつそれら全てを仮想統合できるSDSソフトウェアとしてElastic Storageが製品化されたことで、IBMの「データ経済性」コンセプトは、いますぐ企業ユーザーが導入できる現実的な解となった。

 取材中、波多野氏は興味深いエピソードを紹介してくれた。

 「実は、Elastic Storageのベースになっているデータアクセス技術は、人工知能エンジン『IBM Watson』でも使われているものです。この他にも、研究開発分野やハイエンドHPC分野で10数年にわたる長い実運用実績があり、いよいよ商用分野にも活用できる環境になりました」(波多野氏)

 もちろん、ストレージ仮想化への取り組みも10年以上にわたり、既に多くの顧客で活用されている実績を持つものだ。

 いまや「Software Defined」がある種のブームのようになっているが、IBMがこのタイミングでSDS製品を発表するのは、一朝一夕のものではなく、同社が持つ膨大な技術資産があればこそ、と言える。突如出現した新製品というわけではない点もユーザーにとっては安心材料となるだろう。

 ビッグデータへの取り組みは、ともするとブーム的なとらえ方もされ、とにかくまずは始めてみよう、といった性急な取り組みも見られる。しかし、企業が取り組む以上、その経済性に対しては真剣に考慮する必要がある。対象のデータがどのような価値を持つかが明確でなければなおさらである。IBMはこの問題に対して、全てソフトウェア定義によって後付けで階層化し続けられる環境を示すことで、確定不可能なデータたちを合理的な方法で自動格納するための環境を示した。つまり、将来のデータに対しても経済性の改善に向けた取り組みが今すぐはじめられるのである。

 IBMのストレージ製品は、用途に応じてさまざまな特長を備えた個々のストレージデバイスと、それら全てを包括するSDSというコンセプトに基づいたソフトウェア製品も加わり、どのようなユーザー企業のニーズにも的確に応えられる幅の広さと奥の深さを備えるに至ったといって良いだろう。

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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年6月29日

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関連リンク

本稿で取材した日本アイ・ビー・エムのWebサイト。「データエコノミクス」に関するメッセージや技術情報、セミナーなどの情報も。

本稿で波多野氏が言及しているストレージ製品の詳細の他、ストレージコスト削減の可能性を測定するツールもあります。

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